第10話『のんびりスライム討伐クエスト』
俺たちはギルド内部で、クエストが貼り出されている掲示板を見に行った。そこにはスライム討伐クエストや採取クエストがかなり残ってある。
みんな最低限の金にしかならないし、今年の新人は俺とミーナだけみたいだからな。
俺はクエスト掲示板の前でミーナと相談した。
「ミーナ。どのクエストがやりたい?」
ミーナは掲示板を眺めたあと、スライム十匹討伐の貼り紙を取った。
「これにしましょう。やっぱり冒険者をするなら安全が第一ですし」
俺も全く同意見なので頷いた。
「そうだな。身の丈に合わないクエストをして全滅するなんて愚か者のすることだ。それでいいと思う」
「うん。そうだよね。じゃあクエスト受注しに行こうか。パーティー申請もしないとね」
「そうだな。パーティーリーダーはミーナがやってくれ。俺は器じゃない」
「ええ!? そんなことないと思うけど、クレイがそう望むならわたしがリーダーやるね?」
そうだ。リーダーなんてやると目立って仕方がない。俺は日陰者としてゆったりミーナと雑魚敵を倒してスローライフできたらそれでいいのだ。
ミーナと俺は再び受付窓口へと向かい、クエストの貼り紙を受付のお姉さんに提出した。
「あの。このクエストを受けたいのですが? あとわたしとクレイでパーティー申請もお願いします」
受付のお姉さんはうんうんと納得していた。
「そうですね。おふたりの実力を鑑みると、そのくらいのクエストがちょうどいいですね。パーティー申請とクエストの受注を完了しました。期限は三日後。無理せず自分のペースで頑張ってください」
受付さんの励ましにミーナは笑顔で対応した。
「はい! 無理のない範囲で頑張ってクエスト達成してみせます!」
どうやらミーナもやる気みたいだ。俺たちは冒険者カードにクエスト受注の刻印を刻まれた。
そこには残りモンスターの討伐数や締め切り期限までのタイムリミットがデジタル方式で表示されていた。
おそらく魔科学で作られたものだろう。魔科学はマナを使用した科学技術だ。これくらいのカードを作るくらい造作もない。水道の蛇口や風呂やキッチンなども魔科学で作られている。今では貴族だけでなく平民にも広く普及している。
俺はカードの刻印に【残り討伐数0/10】と書かれているのを確認してミーナと共にギルドを後にした。
近場の裏山に向かうとスライムがうようよしていた。流石は序盤の村だ。まるで宝の宝庫と呼べるだろう。
俺は高揚感に包まれながら、ミーナに語りかけた。
「それじゃあ狩るぞ? 俺が前衛でミーナは後ろから光魔法でサポートしてくれ」
「わ、わかったよ」
俺は軽く【身体強化】を行うと、手加減してスライムを一匹軽々と倒した。その直後に二匹目のスライムが襲ってきたが、ミーナの詠唱が間に合い光の弾丸によりスライムは撃ち抜かれた。俺は思わずガッツポーズした。
「よし。いいペースだぞ。このまま、あと八匹頑張ろう!」
「うん。そうだね」
そして、三匹目、四匹目、五匹目のスライムが現れた。俺は【初級剣術スキル】の奥義である【スラッシュ】を使うことにした。スライムとの絶妙な間合い。その静けさの漂う間を味方につけて、即座に銅の剣に微量魔力を纏わせた。
そして、そのまま微量の魔力を纏った剣撃波を解き放った。
「行くぞ。スラッシュ!」
だが、思った以上に力を込め過ぎたらしく【スラッシュ】一発で三匹を同時に屠ってしまった。ミーナは驚いて俺に近付いた。
「クレイ! 今のとっても凄かったよ! 流石【初級剣術】スキルランクSだね!」
推しに褒められてめちゃくちゃ嬉しくて、また心臓が止まりそうなのだが、俺はまたクールを装って答えた。
「別にたいしたことはしていない。さあ。残り五匹頑張るぞ!」
「うん! そうだね。油断せずに頑張ろう!」
俺たちはさらに裏山の奥へと進んだ。鬱蒼と木々が立ち並んでおり、そこにわずかなこぼれ日が差し込み、神秘的な雰囲気を醸し出している。
俺はその自然を浴びながら(ああ。スローライフしているな)と小さな幸せを噛みしめた。
ちょっと歩いたところで六匹目と七匹目が見つかった。俺はミーナに指示を出した。
「さっきと同じ連携で対応するぞ?」
「うん。わかった!」
俺は身体を軽めに強化して、六匹目を軽くひと薙ぎで屠った。七匹目はミーナの光の弾丸に貫かれてすぐに消え去った。
俺はミーナに近寄りハイタッチした。
「これで残り三匹だな!」
「うん。終わりが見えてきたね!」
俺たちは気を取り直して、再び裏山の自然へと溶け込んでいった。奥まで進むと三匹のスライムがまたしても現れた。
俺はここはミーナと協力しながら切り抜けることにした。
「それじゃミーナ。光魔法で一匹仕留めてくれ。残り二匹は奥義で殲滅する!」
「りょーかいしたよ!」
俺は身体をわずかに身体を強化して【初級剣術】スキル【ダブルスライス】を使うことにした。
スライムとの間合いを取りながら、魔力を即座に銅の剣に纏わせて、向こうが仕掛けてきた隙を狙い、一気に奥義を解き放った。
まず一撃目が一匹目を屠り、二撃目がもう一匹のコアを斬り裂いた。
残る一匹はミーナが放った光の弾丸により片が付いた。
ようやく討伐クエストが終わり、俺はミーナとハイタッチした。
「やったな。ミーナ!」
「うん。クエスト達成だね!」
思った以上に楽な仕事だ。ここまで苦戦することなく流れ作業で仕事して、残りは自由な時間を満喫できる。
そうだ。これこそが俺の求めていたスローライフなのだ。
安心安全に、雑魚敵やら素材採取をして、最低限の日銭を稼いで満足する。労働時間わずか一時間。それで銅貨八枚。日本円に換算すると八千円だ。実際は二人で半分なので、時給八千円である。こんな美味い仕事他にない。これぞ俺の求めていたスローライフである。
俺は冒険者カードに『クエスト完了』の文字が刻まれているのを確認してにやつきながら、すぐにミーナと街へ戻ることにした。




