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第七話・悪霊地縛霊軍団……幼女エルフが喰太郎に迫る

 パン屋のバイトが終わって帰ってきたエルフ宇宙人は、ドラ焼きの上部みたいな形をした宇宙船山の、山際にあるウッドデッキがある小屋に入った。


 木造の小屋はエルフ宇宙人の住居で、裏側が宇宙船の中へと繋がっている。

 宇宙船に繋がるドアを開けると、そこには金属的な通路が広がり、幻獣的な生物や宇宙人がうろついていた。


 通路内を飛び回る、スカイフィッシュやジャージャー・デビルを横目に、エルフ宇宙人が進むと……ある部屋の前で壁に背もたれて立っている、フォンリル星人がいた。

「今日はバイト早く終わったんですね?」

「用事があるからと、断って早めにバイト上がった……ほら、これ店の残り物のパン」

 紙袋を受け取ろうと手を伸ばした、フォンリル星人からパンが入った紙袋を遠ざけてエルフ宇宙人が言った。


「その前に服を着ろ……フルチンだぞ、今のおまえ」

「おっと、これはしまった……メスのオオカミたちと、森の中を走り回るのが楽しすぎて服を斬るのを忘れていました……開放感が心地よくて」


 フォンリル星人が、胸の金属の一部を触ると、液体金属の服に包まれた。

 エルフ星人とフォンリル星人が、部屋に入ると中央に異様な物体が浮かんでいた。

 無数の顔がある、茶色の物体──半実体化させた、悪霊や地縛霊の集合体だった。

 集合体は光線の檻のようなモノに閉じ込めてられている。

 フォンリル星人が言った。

「これが、捕獲器に入って捕まえた新しい霊体です……この近所だと、これ以上は居ないですね、捕獲範囲を広げないと」

「わかった……これをどうするか? 融合させる方法もあるが、その前にちょっと試してみたいコトがある」

 そう言うとエルフ星人──個体名ミルキーは、円形カニバサミ型のマジックハンドのようなモノを操作して霊体の中から、地縛霊を一体引っ張り出した。

 引っ張り出した地縛霊を、今度は手袋型をした二本のマジックバンドで、こねくり回す。

「こねこねこね……霊体こねこね」

 やがて、地縛霊はエルフ姿の少女霊に変わった。

 アホ毛を生やした霊体エルフは、自分の体を見て驚く。

「あたし……地縛霊になる前の姿に戻った?」


 エルフ宇宙人のミルキーが、冷ややかな口調で言った。

「アホ毛、おまえ死んでいるコトに変わりはないからな……おまえの所有権は半実体化させてウチにある……さてと、もう一工夫するか

 そう言うと、ミルキーは手袋型のマジックハンドで、アホ毛地縛霊エルフ少女をギュッッと握って圧縮した。


「ぎゃあああぁぁぁ!」

 おにぎりのように握られたアホ毛少女はさらに、実体化して幼女サイズになった。

 幼女エルフになった地縛霊に、ミルキーが言った。

「おまえ、城に行って古米 喰太郎とか言うヤツに取り入って、スパイになれ……自由に霊体なれる能力は残したから」

「あのぅ、あたし山でクマに襲われて死んだ地縛霊で……山歩きをしている人を惑わせるのが仕事なんですけど……山に帰してください」

「アホ毛の要望は却下……さっさと行かないとクマの悪霊を連れてくるぞ」

「ひぃぃぃ」

 幼女エルフは悲鳴を上げて、部屋から飛び出していった。


  ◇◇◇◇◇◇


 エルマと喰太郎が居るエルフ城に、ニュー・エルフニア国内から、ぜひとも仲間に加えて欲しいと一人のエルフがやって来た。

 その魔女帽子をかぶったエルフを見たエルマの心臓が高鳴る。

「熟女エルフ……実年齢ババアエルフ……これを待っていた!」

 二十歳代に見える魔女エルフが、顔を赤らめる。

「そんなにジロジロ見ないでください……ババアは恥ずかしいです」

「なにを言っているんだ……熟女最高、ババア最高! 仲間に入るためにはテストを受けてもらう」


 熟女魔女エルフが、魔法の杖を構える。

「魔法のテストですか? チート級な魔法なら一応使えます、五大元素の魔法とか重力系の魔法なら得意です……自分の時間を止めるチート魔法とかも少しくらいなら」

「そんなテストじゃない……近くに来て」

「はい」

 魔女エルフが、胸専のエルマに不用心に近づく。

「これはテストだからね……決していやらしい気持ちで、触るんじゃないからね」

 エルマは魔女エルフの胸を堂々と触った。

 過去に夫にしか胸を触らせたコトが無かった魔女エルフが、小さい悲鳴を発して体を強張らせる

「ひっ⁉」

 熟女の胸を触ったエルマが言った。

「なかなかの熟女胸……合格!」


 乳牛エルフのホルスタインと、海洋エルフのツナが小声で。

「最低」と呟くのが聞こえた。



  ◇◇◇◇◇◇


 その時──天井を這って移動して、忍者エルフのサトウが現れた。

「変なエルフが、喰太郎どのに会わせろと、城の門に来たでござる」


 異種エルフたちの尻を触っていた喰太郎が、尻から手を離して忍者に訊ねる。

「変なエルフ? どんな?」

「アホ毛の幼女でござる……城主に献上するとかで、番犬代わりのチュパカブラを連れて来たでござるが」


 幼女と聞いて喰太郎の目の色が変わる。

「すぐに連れてきて!」

 喰太郎の前に、首に鎖を繋いだチュパカブラを連れた、アホ毛の幼女エルフがあらわれた。

 鎖で繋がれたチュパカブラに、城内で放し飼いにされている尻尾がヘビのニワトリ──コッカトリスが近づいて体を擦り寄せる。

 どうやら、顔見知りらしい。


 喰太郎が幼女エルフを手招きする。

「おいで、おいで」

 忍者エルフにチュパカブラを渡した幼女エルフが、喰太郎に近づき喰太郎は自分の膝の上に対面座位の姿勢で座るように言った。

 野生エルフのアニ香が嫉妬して唸る。


 膝の上に座った幼女エルフの、お尻を喰太郎は撫ではじめる。

 喰太郎が新たに加わった、幼女エルフに命名する。

「君の名前は……そうだ、プチ菜……プチ菜にしよう」

 勝手に命名されてしまった、プチ菜は黙ってうなづく。

 そんなプチ菜を、熟女の魔女エルフは訝しそうに眺めた。

 アニ香。

 メカ美。

 クト子。

 そして、プチ菜。

 四つの尻を手に入れた喰太郎は、ご機嫌だった。

 にやけている、喰太郎を目がけて窓から飛び込んできたシオが、怒りの形相で喰太郎を城の外に連れ去る。

「この、変態! 尻マニア! 人の誕生日を忘れて尻を触りに来た最低男!」

 シオは空中で喰太郎の体を放り投げて、キャッチするという行為を繰り返した。

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