第六話・やってきた来た!オカズ シオ……敵の存在も薄っすらと
マーズピープル・三代目フィッシャーマン・エルフマニア第三王子の実の父親──自称悪霊王が封印されている洞窟に異変が起きていた。
封印牢を守っている二人のエルフ兵士が倒れ、岩壁の護符が数枚剥がされていた。
悪霊王が、霊体の体をほぐしながら、目前に立つ人物に向かって言った。
「ずいぶんと時間がかかったな……この場所に封印されているコトがわかっていたなら、もっと早く迎えに来ても、おかげでバカ息子に剣で……」
悪霊王がそう言った瞬間──紡錘形で、トゲトゲの武具、『狼牙棒』が、悪霊王の顔を横殴りに強打する。
「おごらぁぁ! いきなり、何を?」
歪みすぐに元に戻る悪霊王の顔面。
悪霊の顔を狼牙棒で、ぶん殴った人物は狼牙棒を隣に立つ。
直立したオオカミのような人物に渡す。
体の随所に金属のような部分が見えている、オオカミ宇宙人……フォンリル星人が、渡された愛用の狼牙棒を肩に担いだ。
フォンリル星人から、狼牙棒を借りたエルフ耳の小柄な少女が、不機嫌そうに言った。
「あんた、自分の立ち位置わかっている? 半実体化の力を与えているのが、誰なのか言ってみ」
体に幾何学的な線が走る、エルフ耳の宇宙人少女が、腰に手を当てて上から目線で悪霊王を見る。
悪霊王が土下座をして言った。
「あなたさまです……魂が消えようとしていた、オレを救ってこの世に留まらせてくれた、エルフ宇宙人さまです」
「わかっていれば、よろしい……お互いにメリットがあったから、おっさん幽霊に協力してやっているんだからね……おっさんは、ボコられて死んだ恨みから〝悪霊軍団〟を作ってエルフに復讐したい……あたしは、エルフの国の地下にある柱鉱石〝エルフの涙〟を根こそぎいただきたい」
「わかっている……で、悪霊とか地縛霊は、集まったのか?」
「それなりの数はな……でも、おっさんが望んでいる数にはまだ足らない……もう少し、ここに封印されていろ」
「まだ、外に出れないのか?」
「幽霊だから腹も空かないし、外をウロウロする必要もないだろう……時が来るまで待て」
エルフ宇宙人は剥がした護符を元通りにすると、気を失っているエルフ兵士たちの防具を剥いだ胸を交互に揉んだ。
「ええなぁ、本物のエルフの胸は……ウチみたいな紛い物のエルフ宇宙人とは大違いだ」
エルフ宇宙人が、胸を揉んでいるとエルフ兵士が意識を取り戻して。
惚けた表情でエルフ宇宙人を見た、エルフ宇宙人はパラボラアンテナ型の銃の光線を、二人のエルフ兵士の額に照射して言った。
「洞窟には、ウチとオオカミの宇宙人は来なかった……悪霊のおっさんは、封印されたままだった……ウチらの姿が見えなくなって二十数えたら、ウチらのコトは忘れろ……何も起こらなかった、何も見なかっん」
そう言い残してエルフ宇宙人は、オオカミ宇宙人と一緒に去っていった。
◇◇◇◇◇◇
洞窟を出たエルフ宇宙人は、普通に道を歩いて特殊な形の山へと向かう。
歩きながら、狼牙棒をコンパクトな玩具サイズに縮小させてベルトのケースに入れて吊るした、フォンリル星人がエルフ宇宙人に訊ねる。
「今日もバイトに行くんですか?」
「ウチはあのパン屋の看板娘だからな……たまたま、エルフと間違われているのが幸いだ、宇宙人と言えども働かないと食べていけない」
「面倒な種族ですね……大気からエネルギー摂取できない種族は」
「おまえだって、裸になって森で四つ這いになれば、メスのオオカミが寄ってくるだろう……生肉をメスがくれる」
「嫌なんですよ……そういうの、宇宙人のプライドが……」
エルフ宇宙人は、分岐した道の片側を見た……樹木が生い茂った、ドラ焼きの上部型の山が見えた。
その昔、この地に墜落した宇宙船だった。
エルフ宇宙人が、ぼやく。
「ったく、なんでウチの代になってから……祖先が残した預言を成就させなきゃならないの……先代まで、何もしないでエルフたちに紛れて生活していたじゃない」
墜落した宇宙船には、さまざまな幻獣型宇宙人が乗り込んでいて、彼らの存在がエルフ国での伝説となった。
「宇宙船を離陸させるための、エネルギー源……エルフの支柱石〝エルフの涙〟そのどの柱が失われても、エルフの国は陥没する」
エルフ宇宙人は、別に今さら宇宙船を動かして宇宙へ出ていかなくても、エルフの国で平和に暮らしていればいいと思っていた。
「だるっ、祖先が残した預言には悪霊軍団の記述もあった……預言通りにコトが進んでいる……フォンリル、バイト終わって宇宙船に戻ったら、どれだけの悪霊や地縛霊を捕獲できたのか確認するからね」
その時──エルフ宇宙人は、空をマントで飛んでいく人影と、その後方から布をムササビのように広げて、飛行していく人影を見つけて呟く。
「なに、あれ? フライングヒューマン?」
◇◇◇◇◇◇
エルマと喰太郎がいるエルフ城では、まったりとしたした時間が流れていた。
喰太郎が抱きついている、野生エルフの尻を撫でる。
「よしよしよし、極楽だ……アニ香、いい尻いい尻」
アニ香というのは、喰太郎が野生エルフに勝手に名づけた名前だ、アニマル+香でアニ香。
尻を撫でられた野生エルフのアニ香は、嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らす。
イスに座った喰太郎の両側には、戦車エルフと異形エルフが喰太郎を挟み込むように立って。
自慢の尻を向けている。
「メカ美、の尻も個性的な美尻で揉み心地いいなぁ……尻はシリコンみたいに柔らかいんだ」
喰太郎に尻を撫で回されている機械エルフの、メカ美は顔を赤らめて微笑む。
「光栄だ、喰太郎に尻を触ってもらえて」
反対側に立つ、異形エルフのクト子……も、喰太郎が望む尻の形とサイズに変形させて、触らせている。
「クト子の尻は、少し弾力がある変わり尻だけど……嫌いじゃない」
「ほほほっ、嬉しいです……喰太郎さまの望む形とサイズにいつでも変形させますわ」
三人のエルフ尻を触っている喰太郎を羨ましく見ていた、エルマが言った。
「いいなぁ、オレにも胸を触らせてくれよぅ」
喰太郎から離れたか、メカ美とクト子がエルマに近づく。
「どうぞ、ご自由に触って、乳パワーを溜めてください」
クト子の胸がプクッと膨らんで、あらかじめ聞いていたエルマが希望するサイズと大きさに変化する。
メカ美の方も、柔らかいシリコン製の胸が、三段階変形で大きくなる。
機械と異形のエルフ胸に手を伸ばすエルマ。
触りながらエルマが叫ぶ。
「天国だ! エルフの胸天国だぁ!」
喰太郎とエルマが、少し離れた場所で傍観している、乳牛エルフのホルスタインと、海洋エルフのツナに向かって同時に言った。
「おまえたちの……尻を」
「胸を」
「「触らせろぉぉぉ!」」
返す言葉で拒絶するホルスタインとツナ。
「絶対に、イヤです!」
その言葉を聞いたエルマと喰太郎の、頭にハマっているモノがギリギリと頭蓋骨を締めつける。
「おごあぁぁ! わかったオレが悪かった! だから許して! 頭が、頭が!」
慌てて近くにある尻と胸を触って頭の痛みを消した喰太郎とエルマは、自由に尻と胸を触らせてくれる異種エルフの尻と胸で、とりあえず満足した。
アニ香の、お尻を撫でながら喰太郎が言った。
「そう言えば、オレが居た世界のシオの尻は最高だったな」
「シオって、喰太郎を突き飛ばして次元の穴を開けた。オカズ シオってクラスメイトか?」
「ああ、家が近所でよく尻を触らせてもらっていた……シオは胸も見た目いいぞ、あの胸を生触りしたら、寿命が百年伸びるってクラスの噂だ」
「本当かそれは胸専としては、放っておけないな」
喰太郎とエルマの会話を呆然と聞いている、ホルスタインとツナは心の中で。
(ぶっちゃけ、どうでもいいわ)と、思った。
その時──城の窓から、マントを羽織って青い超人スーツを着たエルフが飛び込んできて、野生エルフの尻を撫でている喰太郎を見て、蔑んだ口調で言った。
「ここでも、女の子の尻を触っている、最低……変態!」
超人エルフの顔は、喰太郎を突き飛ばしたオカズ シオだった。
驚く喰太郎。
「シオ、どうしてここに?」
「どうもこうもないわよ、喰太郎を突き飛ばしたらエルフ耳になって、空を飛べて特殊能力が使える超人になっちゃったのよ……責任とってよ喰太郎」
「そんなコト言われても……尻触らせてくれる?」
「バカ!」
喰太郎の頭がギリギリと緊箍児で締めつけられる。
「うおぉぉぉ! 尻、尻!」
喰太郎は、アニ香の尻を撫で回す。
「うにゃぁぁ……喰太郎ぅ」
頭の痛みが治まると、今度は窓から布をムササビの皮膜のように広げた忍者エルフが飛び込んできた。
「シオどの、空を飛ぶのが早いでござる」
ステレオタイプの忍者エルフだった。
忍者エルフが、膝まづいて自己紹介をする。
「拙者、忍びのエルフ里の忍者……サトウと申す以後お見知り置きを」
サトウは、喰太郎とエルマに胸と尻をアピールする。
「シオどのの代わりに、拙者の胸と尻を提供するでござる……ご存分に触って、来たるべき戦いに備えて英気を養うでござる……さあさあ」
こうして、超人エルフと忍者エルフが仲間に加わった。
★忍者エルフのネーミングの『サトウ』は、何も思いつかなかったので適当です