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第二話・エルフ好きな同士出会う……でも好みは異なる【胸派と尻派の激しくぶつかる自己主張】

 エルフ異世界の海原を、人面エルフ樹が突き刺し立てられたイカダで進む喰太郎。

「♪エルフ大好き~お尻大好き♪ エルフのお尻は最高だぁ♪」


 喰太郎の歌を聴いていた海洋エルフのツナが、露骨(ろこつ)にイヤな顔をする。

「その下品な歌、やめてもらいます……テンション下がるんですけれど」

 乳牛エルフのホルスタインが、イカダの下を覗いて言った。

「人面エルフの樹……海水に根を張っているべな……たくましい植物だべ」

 ホルスタインが、イカダの上で髮をとかしているツナに言った。

「もうそろそろ、漁村離れたから、お国訛り喋ってもいいべな……誰も笑う者はいないべな」

「大丈夫か? 喋っても? 呪われない?」

「隠しておくほうがおかしいべな……変なしきたりだべ……海洋エルフの訛りが災いを呼ぶなんて迷信だべ」


「そうか、それならもう我慢しないで口にする……ずっと苦しかった〝ぜら〟」

 ツナは語尾に〝ぜら〟を付けて心ら解放されたように話しはじめた。

 潮の流れ読んだツナが言った。

「やっぱり、遊び好きの海のエルフが深海から浮上して、ちょっかい出してくるぜら……木にしがみつくぜら」


 エルフたちがイカダの樹にしがみつくと、海が盛り上がり海中から頭にチョウチンアンコウの触角を垂らした、巨大な海エルフが浮上してきた。

 片手に持った、生のクジラを丸かじりしながら。

 

 海坊主サイズの巨大海エルフが、イカダの上にいるエルフたちを見下ろして言った。

「あたしと、遊ぼう……あたしが、驚いて逃げ出すコトをしてくれないと……イカダ、沈めちゃうよ」


 股間の高さまで海上に出た、海エルフを見上げてツナが呟く。

「今回は驚くコトときたか……前回は笑わすコトだったから、なんとかなったぜら」


 エルフたちが、どうやって海エルフを驚かそうと考えていると、喰太郎が巨大エルフに向かって言った。

「おい、おまえ……後ろを向いてくれ」

 喰太郎に言われて思わず背中を見せる、巨大海エルフ。

「こう?」


 海エルフの尻を見て喰太郎が叫ぶ。

「尻、触らせろぉぉぉ!」

 その、言葉に赤面して、ビックリした海エルフは大声で。

「変態!」

 そう叫んで海中に姿を消した。


  ◆◆◆◆◆◆


 エルフの城がある浜に到着したイカダは、喰太郎が捕らわれた人面エルフ樹をイカダから引き抜くと、そのまま台車に乗せて丘の上の城へと運んだ。

 城内に入ると、喰太郎は謁見の広間へと通され。

 城主と対面させられた。

「ほう、それが別の世界から空突き破って現れて男か」

 若い城主が、人面エルフ樹に喰太郎から離れるように促すと、人面エルフの樹は素直に(つる)を緩めて喰太郎を解放すると。

 根の足を動かして、どこかに行ってしまった。


 城主の喰太郎とさほど年齢が違わない、エルフ耳の男が喰太郎に質問する。

「何者だ? このエルフの国に何をしに来た? この国のエルフは、庶民出身第三王子のオレが守る」


 喰太郎が堂々と胸を張っている言った。

「オレの名前は、古米 喰太郎……エルフを誰よりも愛する男だ! エルフへの愛なら誰にも負けない! オレが名乗ったんだから……そっちも名乗れ!」


「これは失礼した……オレの名前は〝マーズピープル・三代目フィッシャーマン・エルフマニア第三王子〟長いから略して【エルマ】でいいぞ……オレは国の誰にもエルフへの愛情は負けていない男だ」


「エルマか……ふざけるな、エルフへの愛はおまえよりも深く高い……エルフ最高! エルフ大好き!」

「喰太郎と言ったな……おまえもエルフ好きのようだが、オレの方がエルフ愛は強い! エルフ万歳! 朝から晩までエルフ三昧だ」


 喰太郎がエルマに負けじと言い返す。

「いや、オレの方がエルフ大好きだ!」

「いやいや、オレだ!」

 互いに一歩も譲らないエルフ愛の主張は、マニアックな個人エルフ嗜好へと移っていく。

 喰太郎が、女性の臀部を撫で回すような手の動きをしながら、熱く語る。

「エルフの本体は尻だ! 尻こそすべてだオレがいた世界では、尻を触らせてくれるクラスメイトの女がいた」

「違うな……エルフは胸だ! 乳揉ませろとオレが迫るとなぜか拒絶されるコトも多いが……エルフの本体は胸だ」

「尻だ!」

「胸だ!」


 二人の自己主張の言い争いを聞いていた、ホルスタインとツナは。

 ぶっちゃけ、どうでもいいわ……と、思った。


 喰太郎とエルマのエルフ愛主張は、さらにマニアックな領域へと入り込んでいく。

 喰太郎が言った。

「オレのエルフ年齢受容領域は、幼女エルフは許容範囲だ……ババアとか熟女のエルフはムリだ」


「何を言っている、幼女エルフこそムリだろう……ババアとか熟女のエルフを喰太郎は実際に見たコトが無いだろうろ……百歳を越えても容姿は若作りをしていて、若々しいままだぞ」

「それでも、オレには実年齢を聞いたら、熟女エルフとババアエルフは精神的にムリ」


 二人の会話を聞いていたホルスタインとツナは……それも、どうでもいいわ……と、思った。


 やがて二人は、エルフの嗜好は違えども互いのエルフ愛は本物だと認め──固い握手と抱擁を交わして深い絆の友となった。

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