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昭和の学校5

中学校に入って算数が数学となって登場した。小学校の頃から僕は算数が大の苦手科目だった。数を数えるのでさえ、自分の両手の指を使いそれでもたりなければ、今度は自分の足の指を使う。そんな調子だから授業が始まっても最初からさっぱり解らずつまづき、もう一か月も経つと、訳がわからんようになっていた。しかし、この授業を受け持つ先生も、勉強熱心なので、どんなに昨夜テレビの見過ぎで眠たくなっても、居眠りすらできないのである。しかしこんな時は、眠たくならないように先生の目を見続けば良いとどこかテレビで言っていたようにそれを実践し、とにかく眠らないように努めていた。しかしこれもあんまり行き過ぎると、先生からこんなふうに言われることもある。

「おい、坂田、俺の顔に何かついているのかと、それじゃ今まで説明した事を前に出て発表してくれ」ここまで言われるともうお手上げである。その時は、正直に別のことを考えてましたと言うのである。すると先生は、

「別の事ってどうゆうことだ。この授業よりたいせつなことがあるのか?」と聞いて来る。するとまた正直に僕は、夜帰ってからのテレビ番組の事を考えていたと言うのである。すると先生は、親切に僕だけに明日提出の宿題を与えるのである。これならなるべく目立たないように後の席が良いのだが、生まれつき背丈が小さい僕なので、授業で黒板が良く見えるように前列に席が用意されているのである。先生もそんなに気遣ってくれなくても僕は後ろ席で満足しているのにと思う。あのぽかちゃんも、時々先生の目をじっと見つめているが、僕に言ったように先生がぽかちゃんに言っても、

「先生かっこいい、大好き、大好き、私ファンなんです。お嫁さんにして下さい」と先生に言うものだから、先生自身も返す言葉に困り、あまりぽかちゃんには関わりを持ちたくないらしく、僕のようには強く言わない。これは、単にキャラクターの違いなのである。それに先生も人間だということである。社会の先生もこれまた特徴がある先生である。先生の性格は内向的で歳は四十ぐらい、たぶん独身だろう。なぜなら身なりもズボンも綻びてるし、上着のカッターだってよれよれである。僕の母ちゃんに言って、ズボンもカッターも綺麗にしてもらおうかと思うくらいだ。一見おっとりとして優しそうに見えるが、見かけとは違い独り言をぶつぶつと言うのである。僕の席は、教壇のすぐ前の席なので、先生の講義の時は、特に唾が飛ぶのである。もう少し教壇から離れ黒板に向い授業をすれば良いのだが、彼は痩せ形で体力が無いせいか、いつも座って教科書を見ながら講義をする。そして少しでも、授業時間が伸び休憩時間のチャイムが鳴っても、先生が気づかない時は、生徒達が一斉にこう言うのである。「先生、時間、時間、休憩、休憩、」すると先生は、小心者だから生徒達には直接言い返すことも無く、小声で「こいつら、俺の授業が本当に嫌なんだな、覚悟しておけ、明日は抜き打ちテストだ」とぶつぶつ言っているのである。その声は、確かに耳の良い僕がいる最前列の席からだけは解るのである。こんなことからも、やはり家でも独り暮らしで独身であることが推測される。そしてそんなことがあった次の日、先生が抜きうちテストを行っても、みんなは、驚きもしないので、それを不思議に思いこんな事をいうのである。

「今日テストって俺いってたっけ」などと、逆に先生が驚いているのである。実に面白い先生だ。

 次に体育の先生もなかなかの変わり物である。名前は川田三吉という江戸時代の名前のような先生で、規律に厳しく体育の授業が体育館である時は、先生が入口に竹刀を持って立っており、先生に挨拶をして入る形が毎回とられていた。何でも先生は、もと軍隊出身だったそうで、少しでも僕の声が小さいと、「声が小さい、やり直し」と竹刀で頭をこずかれた。特に痛くは無いのだが、ここで目を付けられると緊張して次の行動で萎縮してしまう僕なのである。次は、点呼である。男子生徒が横並びに縦二列に並び、列始めから順番に番号を言い、背が小さい最後の十列の僕が、後ろに誰もいなければ欠と言い、後ろに一人入れば満と言うのであるが、不器用な僕は決まって欠なのに満と言って先生に怒られみんなの前で「すいませんでした今度は失敗しません」とそう言って、点呼は最初からやり直しその後今度は欠と言い、これで点呼終了と思いきや、

「ほらほら坂田何を股間に触っているんだ、風呂入ってるのか?」と先生からまたお叱りの言葉があり、前に出てみんなに謝るのである。またやり直し今度こそ、僕も完璧にでき点呼終わったと思いきや、今度は、番号の読み間違い、四列目の生徒が、「よん」

と言い、「よんじゃないだろう、いち、にい、さん、し、だろ」やり直し。こんなことが続くもんだから、なかなか授業に入れない。しかし、厳しくはあるが、話方やユーモアがあって面白い先生でみんなからも慕われていた。


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