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昭和の学校4

いよいよ入学式の日になった。式典は学校の体育館であった。この中学校は、校区内の公立中学校なので、式典に出席している生徒を見ても、小学校時代の友達も多く見受けられ、特に緊張などすることもなく式は終了した。式が終わると各クラス毎に、教室に移りこの学校の中学生としてのオリエンテーリングがあり、学校の生徒手帳なる物を事務の先生から全ての生徒に渡された。その中を少し覗いて見ると、そこには学校外での日常生活や学校内での規則が書かれていた。その後しばらくして、僕達、中学一年七組の担任の先生が、教室に入って来た。「起立、礼、着席」どこからとも無くその号令がかかった。僕はその時不思議に思った。このクラスに居る生徒は、まだ今日みんなこの中学校に入学したばかりで顔合わせもしていない段階で、号令当番も決めていないのに、スムーズに号令の音が響き渡る。面白い事だ。いったい今この中の誰が声をかけたのだろうか?確か僕の左後ろから女性の声が聞こえていたようなのに、わからない、

 当時の中学校は、一クラス四十五人弱おり、一学年三百人程は居たのだ。やはりこんなに多いとわかりにくいのである。よし今度は、授業終了時にまた号令がかかるはずだ次確かめてやるぞと、その時僕は思った。僕達のクラスの担任の先生が教壇に立ち、名前を言いながらまだおろし立ての白いチョークを持ち、黒板に赤坂 登と名前を書く。その字体も何処となく優しく感じられ、笑顔もありこんな感じの先生なら、適当に勉強もやり授業も適当にやっていればうまくやっていけると僕はそんな先生を見て思っていた。しかしその後この優しく温厚に見えた先生が、まさかこの後、勉強熱心な熱血先生に変貌するとは考えても見なかった。先生の紹介が終わった後、次はクラスにいる生徒ひとりひとりが、自己紹介することになった。男女生徒が、次から次へと教壇の前に立ち挨拶をしている。いよいよ僕の番になった。教壇に立った途端、教室のみんなは、僕のスキンヘッドに驚いて声も出なない様子になった。そして、僕が自己紹介の為、名前を述べ軽く頭を下げた瞬間、後頭部に貼ってあったガーゼが外れ、大爆笑になった。 

そんな事がキッカケとなり、変な意味でみんなの人気物になったが、それ以降みんなから「つる」と言うあだ名を命名されることになった。みんなの自己紹介が終わると、今度生徒手帳なる物が配られ、この学校の校則の説明が先生からあった。もちろん、服装などのチェックもされた。それは、女生徒の髪型からスカートの丈など、また男性も髪型服装のチェックがあった。男性は特に頭髪のチェックが厳しく丸刈りがきちんとされているかのチェックに入る。その中には、丸刈りであっても五分刈りであった物もいて後日先生に髪を整え見せるように言われる物もいた。いよいよ僕の身なり検査となった。先生は僕の服装を見るなり、

「靴よし、服装よし」と言った。僕は当然合格だと思っていたが、先生はこう言った。

「頭が悪いよ坂田」その時僕は思った。頭は小学校の時も確かに良くはなかったが、まだ入学して初日であり授業も受けていない段階からそんな事をみんなの前でいうのは、先生としてもどういうものかと思い、先生にこう言い返した。

「先生、なんでまだ入学したばかりで授業も受けていないのに、僕を頭が悪いと言うのですか、もしかしたら小学校の担任の先生から聞いたんですか?」すると先生はこう言った。

「その頭じゃなくて、髪、髪、頭髪よ、刈り過ぎ、学校の規則では、一分刈りですよ、この頭じゃ切り直す訳にもいかんし、今回は注意だけにしておこう、以後気を付けるように」そしてまた先生は僕の頭に触れながらこう言い続けた。

「こんなふうに刈ると、冬は寒いし、夏は日光が反射し日射病になるからだめだぞ、みんなも切り過ぎにはくれぐれも注意するように」僕はその時思った。そんなに危険な髪型ならば、最初から小学生の時のような頭髪で良いのにと・・・

いよいよ男性最後の生徒がチェックを受ける。何とこの生徒の頭は、丸刈りどころか、

女生徒のショットカットのような頭である。僕はこの場におよんでもまだ髪を切っていない男子がいることに驚いた。すると先生がその生徒を見てこう言った。その生徒の名は、山田紀夫通称ぽかちゃんである。体つきはがっしりとした体格の男性であるが、話し方は女性言葉でみんなが

その行動や姿を見て、ぼかーんとした顔になってしまう事からそんなあだ名が付いた。

「髪が長すぎ、切って来るように」するとその生徒は先生に反発し

「いやだもうー先生、私これ以上は切れませんもうこれが限界です・・・」そして、その場でその男子生徒は泣き出してしまった。それを見て、小学校からの女友達の妙子が席を立ち先生の前に来た。この妙子は学年でもトップクラスの頭の良さで美人でもあり僕の初恋の人であったが、なかなか僕とは釣り合わない存在だった。

「先生、ぽかちゃんは、これでも精一杯の髪型なんです。小学校の時はロングヘアーでしたからこれで勘弁して下さい」

「うーんそれならばもう少し時間を与えよう」そう言って先生はその場でぽかちゃんに髪の切り直しを言わなかった。そしてその時間の授業が終わり、挨拶をする。その声は良く聞くと、ぽかちゃんの声だった。ぽかちゃんが予め先生から号令をかけるように言われたようだ。僕はその声をてっきり女生徒の声と勘違いしていた。とんだことで僕の中学校生活初日は終わった。




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