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9話 家出(カイン視点)
「はぁいったいアイツはどこにいったんだ」
サンジェリル公爵領を治める者として普段から仕事が多いのに自分の娘にさらにその仕事を増やされた。本当ならリディアのことなんか考えたくもないがアイツが家出したと知れば世間は黙っていないだろう…
「旦那様」
控えめなノックと共に入ってきた執事マーク。
「申し訳ありませんがリディア様はこの家にはもう…」
「はぁ…」
「領地の町まで捜索範囲を広げますか?」
「ああそうしてくれ。世間がこのことを知ったら黙っていない。バレても『いなくなった才能なしの娘を必死に探している公爵』として世間にはいい印象を与えるだろう。」
この時私はこの後利益しか考えていない自分を、もっと考えるべきだったと後悔することを知らなかった。