36話 謁見
敬語がおかしくなっているかもしれませんが、許してください。
「面をあげよ」
「初めまして、クラファ王国サンジェリル公爵家が娘、リディア・サンジェリルと申します。平民落ちしているのにも関わらず、帝国の英雄と呼ばれるとお方にお会いでき、光栄に存じます。」
現タリカ帝国皇帝、ニコラス・オデス・タリカ、たった1代で弱小国を帝国と呼ばれるまでに国を育て上げた英雄(私からしたら化け物)だ。その手腕は見事で誰も逆らえないほど冷徹、との噂がある。
「別にそうかしこまらんでも良い。こっちにおいで、お菓子をあげる。」
冷徹?どこが?めちゃくちゃ優しい甘々なおじいちゃんじゃん!
…いや、違う。この目は私を見極めようとしている。本当に公爵家出身なのか、本当に【天使】を持っているのかを。一応公爵令嬢だったから、腹のさぐりあいには慣れてる。
【鑑定】!
差し出してくれたクッキーを鑑定という才能で確認する。
うん。やっぱり、自白剤入りだ。ちょっと怖い。冷徹という噂は事実のようだ。
「お気遣い痛み入ります。ですが、ご遠慮させていただきます。」
「ほう...」
どうなんだろう、これは合ってるのかな?
「そう言わずにこちらのクッキーでもいいぞ?」
【鑑定】!
今度は麻酔入りだ。どんだけ薬使ってるのよ...
「はっはっはっ面白い!王城で暮らすと良い。わしのことは気軽に、ニコラスとでも読んでくれ。」
やべっ顔に出てた?
「恐れ多いです。あとできれば王城から出していただきたいのですが...」
「だめじゃ」
「そこをなんとか」
「だめじゃ」
ちっだめか。なら王城を半壊させて逃げ出すか。
「部屋に通してやれ。ああ、久しいのう。ルナもソルも」
「「ちっバレたか」」
「バシルにあってやってくれないか?あいつがちと壊れてしもうて」
「「ご遠慮させていただきます。」」
「言っておくが、拒否権はなしじゃ」
めっちゃ悪魔皇太子とそっくりなことをいっている。やっぱ遺伝なんだな〜
「じゃあ連れて行け。」
「やだ~」
「助けて...リディア...」
あ、引きずられて行っちゃった。
「ふう。さて」
背後から殺気!?
慌てて左に体をひねる。第一皇子が剣をこっちに突き刺していた。しかも毒塗りだ。致死量もある、恐ろしい毒。こんな物を使うなんて何を考えているんだ?【気配探知】の才能をずっと使ってて助かった…
「君が本当に【天使】か確かめさせてもらう。すまんのう。ちょっと息子に付き合ってくれ」
「何言って...うわ!?」
あのバカ王太子が剣を抜いて私に向かって振り下ろしてきた。でも、私だってただただボーっとして旅してるだけじゃなかったもん!
【身体強化】とクロエにもらった加護を応用して、光の剣を作る。初めてだけど上出来!【聖武】(せいぶ)とでも呼ぼう。武術の基本は、ガイアに教えてもらった。女の子一人旅だからって言ってたけど、まさかここで役に立つなんて。
「面白い。」
あの、悪魔フェイスをなんとかしてほしい。せっかくの皇太子という身分が台無しだ。
「ふっ!」
皇太子が剣を振り下ろしてきた。早っ!
「フッ。まだまだぁ!」
ガギン!ガギン!と剣の応酬が続く。予想はしてたけどいちいち攻撃が重たいなあ!もう!
相手はまだ余裕そうなのに、こっちは腕がきつい。女子に向かってなんてことしてるんだ、こいつは!
「あっ!危なっ!うわあ!?」
「遅い!」
ちょっ!剣のスピード、まだまだ速くなるんだけど!?ふざけんな!一撃も重くなってきてるのに...
「はあっ......ふざけんな…」
「なんだ?もう終わりか」
煽られてる!すごい腹立つ。せめて一撃入れたい。
『リディアは体が柔らかいからそれを利用できればいいんだけど...』
ガイアの言葉を思い出す。柔らかさ。柔軟。剣。そうだ!なら...
わざと隙を見せる...振りをする。
「フッ」
やっぱり乗っかってきた!ここで!
3...2...1...!




