34話 第一皇子
うーんよく寝た。結構熟睡しちゃった。
コンコンコンガチャ
「誰かいるのか?」
やべっ男性の声がする。まだ2人は眠ってる。てか才能はまだ開発途中だから解除されてる!えーっとどうしよう!!
絶賛パニック中の私の目の前に男性が現れる。さーっと顔から血の気が引いたのが分かった。だって6歳の頃に、見たことがあった人だから。
なんでここに!?普通この国の王都の城で生活してる方だよ!?
なんでっ、なんでここにタリカ帝国第一皇子ティロン・デオ・タリカが!?頭パンクしていいよね?気絶して現実逃避しようかな...
タリカ帝国第一皇子ティロン・デオ・タリカ
彼はとにかく美形で小さい頃からよくモテた。正直私にとってはどうでもいいと思う。帝国の王族の血を濃く受け継いだのがわかる。私が6歳の頃にパーティで出会った人だ。その時はシュリしか友達がいなくて一人ぼっちで寂しかった時、話しかけてくれた人。
今は皇太子にもなってるんだっけ?
他の皇族と同じ、あのパーティの時と変わらない金髪碧眼、結構イケメンで当時の私は自分の顔面偏差値の低さに心が折れそうになった。確か今は同じ年齢だったはずだ。新しい才能を持って生まれたとか言う噂がある人だ。
「おい」
「はっはひ!?」
「お前確か9年前のパーティのときにいた...」
何故に覚えている?まあ私も覚えているんだし仕方ないか。
「お久しぶりです。私の名前はリディア・サンジェルリと申します。覚えていてくださり、光栄です。ですが、なぜ第一皇子ともあろうお方がここに?」
敬語あってる!?超久しぶりに公爵令嬢スキルと表情筋を総動員して使ったわ!笑顔を作るけど引きつってそうで怖い!
「ほう、ではサンジェリル公爵令嬢、あなたこそなぜここに?あなたはクラファ王国の貴族だろう。そしてなぜ平民の服を?」
質問攻めにされてる!誰かたすけて...
「...私は、才能なしでした。ですので公爵家からは追放されました。今は平民です。」
千里眼をこっそり使うけど今二人共起きてきちゃった!指名手配されている2人が見つかったらめんどくさいことこの上ない。
『おーい二人共聞こえる?ちょっと静かにして!今第一皇子が来てるから!』
『『はあ?なんで!?』』
『知らないよ!むしろこっちが聞きたいわ!?とにかく静かにして!!』
「なるほど。では私もお前の質問に答えよう。」
申し訳ないけどちょっとイラッとした。こんなに腹立つやつだったっけ?時は人を変えるんだな〜
「私はとある人物を探していてな」
「といいますと?」
「リュフトの双子だ。しかも5つも才能を持っている。だが、逃げられてしまってな。こちらに目撃情報があったから来てみたのだが。何か知らないか?」
「残念ながら。お力になれず申し訳ございません。ですが、双子らしきものはこの大通りを走っていたと思います。霧が出ていたし、リュフトかどうかわかりませんが。」
「...................」
「...................」
気まずい何この空気!どうするのが正解!?
「ふむ、この私に嘘を付くとは。なかなかいい度胸をしているのだな」
はっ?
「双子は、この教会の中にいるだろう。そしてお前は才能を持っている。おそらく【天使】を」
「.......な、何を仰っているのですか。私は才能無しで...」
「ではなぜお前は【千里眼】も【念話】を使っている?」
「な、なんでそれを...あっ!!」
「ようやく認めたか。」
無理だ。この人にはどんな嘘をついてもバレてしまう。多分、この人の才能によって
ってヤバっ
この人、ツカツカと月華たちのいる部屋に向かっている。
「お、お待ち下さい!」
って止まってくれないし!ガン無視しないで!
バンっ!!!
ドアが開けられる。そこにいたのは顔を引きつらせた月華と陽翔だった。
「やっぱりな。では王城に戻ってきてもらう。ああそうだ、お前もついてこいリディア。拒否権はなしだ。」
名前呼びされたくない。この見た目だけは天使の悪魔に。膝からガクッと崩れ落ちる。
「なんでこうなったの〜」
「じゃあ連れて行け」
「はっ」
はっじゃないし!何が「はっ」だよふざけんな!
てかいつの間にか従者の人いるし
「ああ〜!放して!!」
「いって!そこ掴むな〜ちょっリディア!追い返してよ!」
「無理ゲーだし...うわ!痛い痛い!」
3人の従者たちは、電気を操る才能持ちの人だった。電撃のせいで体がしびれて動けないんだけど
3人で仲良く首根っこ掴まれて馬車の中に放り込まれた。何故か手枷をつけられて。しかも才能が使えなくなる術が施されてるし!第一皇子も乗ってくるし!!
空間転移して逃げようと思ったのにできないじゃん!
「さてと。話を聞かせてもらおうか?リディア、ルナ、そしてソル」
「名前呼びされたくない」
「僕も」
「同意」
月華のつぶやきに陽翔と私は同意するのであった。第一皇子が不機嫌そうな顔をする。
「なにか?」
「「「いえ何も...」」」
そして、王城行きの馬車が出発したのであった。




