30話 前世ぶり
「ふたりとも〜!おきなさいーーい!」
「おはようクロエ!」
「あと5分...」
「もう全く...」
うーんと伸びをしてパジャマからいつもおなじみの平民の服に着替える。平民の服といっても前世の日本で普通にみんなが来ているような服だから全く躊躇とかはしない。むしろ懐かしいとも思う。家出するまでずっと貴族のドレスでうんざりしてたからなー。首元にはガイアからもらったペンダントが光っている。大切にしようっと
「ちょっとちょっと〜なんでガイアのペンダントはつけるのに私からのプレゼントの服を来てくれないんですかー?」
「ああごめんね。今日は1つ街を超える予定だし、あんな豪華な服目立っちゃうよ」
「ぶー明日は着てくださいよ?」
「うん明日は街を探索しようか」
宿をチェックアウトして街に出る。最初の方はうるさいと思っていた街だけど、だいぶ慣れてきたな...
よし、ようやく街の境にたどり着いた〜。帝国、軍事力も広さも半端ない...
「わかりました。どうぞお通りください。」
今回は何も聞かれることなく検問を通った。帝国内でいちいち他の国の貴族の名前や特徴なんて覚えているわけ無いか。
「ああそうだ。ここの街は治安が悪くなっているらしいね。お嬢ちゃん一人で大丈夫かい?ほらきれいなペンダントとかも狙われやすいんだよ?」
お...お嬢ちゃん...この世界での成人年齢は超えたのに...15歳が成人年齢のこの世界で、ようやくこの前成人したのにー...
仕方ないか...あの家族のせいで十分に食べ物食べれなかったもんね...身長も同年齢の人たちで並んだらきっとちびに分類されるんだろう。まあこれから身長もまだまだ伸びるよね!気にしない気にしない!
「お気遣いありがとうございます。ですが大丈夫ですので。」
「そうかい?ならいいんだけど...」
「お仕事がんばってくださいねー」
よし。治安悪いって言われているくらいだし。気をつけていこう!
「嘘でしょ...」
思わず声が出てしまった。まあそれほど衝撃的な景色が待ち受けていた。明らかに暗い雰囲気。不清潔なホームレスたちがたくさん道端で寝ている。衛兵が言っていた通りの風景、もしくはそれよりもひどいとも言える。
こんなところ早く通り過ぎて次の街に行ってしまおう
「早く行こう」
速歩きで街を通り過ぎる。ここにいると気分まで悪くなりそう。
「おい嬢ちゃん!」
急に後ろから声をかけられる。2、3人の男性に囲まれた。嬢ちゃんと言われたことに腹が立ちながらも、冷静に返す
「なんですか?わたしは急いでいるので」
「連れないな〜そのペンダントここにおいてどっか行け。」
「つーかこの嬢ちゃんも奴隷商人に売ればいいじゃねえか。きっと高く付くぞ!」
「いいなそれ!」
作戦丸聞こえですけど?素直に売り飛ばされようとしてついていくわけないのに何なのこいつら!馬鹿なの?
「嬢ちゃん、ついてきてもらうぜ!」
「やだ」
「「「...」」」
速攻で返事した私にフリーズしている。当たり前じゃん何行ってんの?それとも聞かれてないと思った?お菓子あげるからついてこい的な?
「じゃあこれで!」
「あ!おい!まてよ!」
誰が待つかー!売り飛ばされるなんてゴメンだわ!
『どうする?リディア?やっちゃう?』
私にだけ聞こえるようにエフが聞いてくる
「いやそれはやばいでしょ!」
「何いってんだ?いいから止まれ!」
「絶対やだ!」
「こいつ下手にでてりゃ偉そうに...!」
やばっ。こいつらナイフ取り出してる!
そうだ。エフとクロエにもらった加護を使えばいいんだ!
「えいっ」
思いっきり周囲を光らせる。失明する可能性があるかも...?まあ売り飛ばされそうになってるから許してね!!
「そこからの...」
エフにもらった加護で周囲に霧を出す。これで逃げれるはず...
「くっそー目が!もうゆるさん!」
「え...」
やばっ。ナイフを振り回し始めた。油断していた私は腕を切られてしまった。
「痛った!」
「そこかー!」
声を出してしまって気づかれてしまう。もう逃げるしかない!
「はあっはあっ!うっ」
足がもつれて小石に躓いて転んでしまう。足にも擦り傷ができてしまった。
「とにかく協会を探さないと...くっそー私に回復の才能が使えたらいいのに!」
「とにかく教会に行って来てください。ついでに回復の才能も使えるようになればいいですから。」
まあクロエの言うとおりだ。素直に従っとこう。クロエは怒ると一番怖い。無言の笑顔がその怖さに拍車をかけている。
「そだねー」
そのまま歩くこと数十分...
「ようやく着いたーってかこんなとこにも教会なんてあるんだね」
「では私達はバレないように外で待機しておきますね。」
「りょーかい」
教会のドアをノックしようとすると、先にドアが開いた。
「ん...誰なの?眠たいのにってえ?...」
綺麗な女の子がドアを開けたようだ。何に驚いているんだろ?
「ソル!早くきて!早く!」
「どうしたの?ルナ、まったく...ってえ?」
この人たちは双子かな?顔立ちも似ているし、私を見たときの反応がおんなじだ...
「ねえやっぱり人違いじゃ...」
「でもやっぱり...」
「あ...あの...どうしたんですか?」
「やっぱり!」
「この反応って!」
あの...私にわかるように話してほしいのですが...
「「...久しぶり!花澄お姉ちゃん!」」
その言葉で私はようやく思い出した。前世で1番仲良かった双子を。
「もしかして陽翔!?月華!?」




