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クレールラビリンス  作者: 橘可憐
訳あり冒険者連合?
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ささやかな約束


「瑠紺さんに前にいただいたポーションってどこで手に入れた物なんですか?」


徇は帰って早々に瑠紺に尋ねていた。


「徇と同様向こうへ行って貰っていた者から買い取った物だよ」


「でも、MP回復ポーションは向こうの世界に無いって聞きました」


「それは知られていないだけじゃないのかな。彼は自分で作ったと言っていたよ」


「自分で作ったんですか?」


「そうだね。でも何だか面倒だから買い取ってくれと言って大量に私に提供して引退してしまった」


徇はその説明だけで異世界で何があったのか想像がついた。

多分貴族とか錬金術師などと面倒な事態になってそれで嫌になって引退したんだろう。

自分の知識さえ渡すのが嫌になるほどの何か大変な出来事がきっとあったに決まってる。


「じゃぁあの納戸にある装備品なんかも瑠紺さんが買い取った物ですか?」


「そうだよ。ついでだから色々能力を付与して弄ってあるんだ。実は私はそういうのが案外好きでね」


「それで神話級ですか」


「結構重宝しているだろう? 徇も何か持ってくれば私が良い感じに弄ってあげるよ」


いずれ自分で気に入った武器や防具を作る事があったらそれもいいかも知れないと思った。


「それでそのポーションを大量に売り払って引退した人って多分異世界で錬金術をしていたんですよね? だとしたら今私も錬金術師を目指しているので参考までに色々聞いてみたいのですが会えませんか?」


「それは無理だね」


「どうしてですか?」


「彼に会う事は可能だが既に私が記憶を弄ってしまっているからね。彼は異世界関連の事は何も覚えていないよ」


そう言えばそんな話を始めに聞かされていたのを思い出した。


「異世界で日本人に会いました」


「ほぉ。それで元気でやっているのかな?」


「はい、忙しく飛び回ってました。それから何か行方不明になっている人の話も聞きました」


「向こうの世界に居ついてしまった者は少なくはないからね。探せば色々と話もあるのだろう」


「それで開発途中になっているものを引き受ける事にしました」


徇は魔法院の話をし、そこの維持と鑑定道具開発や普及、その他の研究の為にお金を使う事にしたと報告する。


「約束だからね、向こうで使った分のお金はこちらで換金した事にするからいくら使ったか言いなさい」


徇は瑠紺に出された課題が合格だったのかは分からないが、少なくとも反対されなかった事に安心した。


「でも金貨換算にしてくれなくて良いです。同額で考えて貰った方が私も分かりやすいので」


向こうで自分の為に使うお金なのにそれを金貨で持ち帰った様に換算して貰うのはやはり気が引ける。

瑠紺の提案とは言え後ろめたさを抱えるよりはその方が徇自身も納得して自由にできると考えた。


「そうかい? 徇の納得できるようにすると良い。私は徇の望むようにするよ。それでも気が変わったらいつでも遠慮なく言いなさい」


「はい、そうします」


「それじゃあ徇はしばらく向こうで忙しくするのかな?」


「その予定です」


「では雪永にもしっかりとその話はしておきなさい。彼は今随分と張り切っているみたいだからね」


「張り切っている?」


「徇の為に何ができるか色々と考えているようだよ」


そう言えば王都へと旅立つ準備を手伝ってもらって以来、雪永とあまりゆっくり話もしていない。

毎日の連絡だけは欠かさずにしてはいるが、ただそれだけだ。


でも考えてみたら毎日出社するOLのタイムカードじゃないけれど、雪永のお陰で現実世界と異世界というだけでなく、ちゃんと仕事なんだと気持ちの切り替えができて、無理をせずに帰ろうという思いが起こるのだろう。


雪永の「行ってらっしゃいませ」や「お帰りなさいませ」とか「お疲れ様です」の言葉に支えられているのだと今さらながら気が付いた。


今日は瑠紺とゆっくり話がしたかった事もあり、会いに来ると言った雪永を断ってしまった。

王都に着いたら休みを取ろうと考えていたのに、すっかり異世界にのめり込んでしまうところだった。


「明日はゆっくり時間を取って雪永とも話してみます」


「そうすると良い。まぁ、偶には私とも出かけてくれると嬉しいのだがね」


「次のお誘いを楽しみにしています」


徇は瑠紺との話を終えると雪永へと電話する。


「はい」


「明日なんだけど良かったらゆっくり話がしたいの。報告したい事もいっぱいあるし」


「ではどこかのんびりできる所へ出かけますか?」


「連れてってくれるの? じゃあ温泉に入りたい!」


「承知いたしました。では明朝お迎えに上がります」


「じゃぁ」


徇は電話を切ると明日は温泉だと飛び上がって喜んだのだった。



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