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クレールラビリンス  作者: 橘可憐
王都を目指す
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老後計画?


「ところで錬金釜とはどういったものなのかお伺いしても?」


「錬金術に欠かせない道具ですよ」


瑠紺が錬金術師の利益を守るためにとかなんとか言っていた事が頭をかすめたが、徇は瑠紺から仕入れた知識を隠す気は無かった。

他の人に話してはダメだとは言われていないというのもあるが、一応誰かの秘密という訳でも無いし、なによりこの世界にもっと錬金術が広まって欲しいと思ったからだ。


どのみち道具が揃ったとしても錬金術師になれない人はなれないだろうし、徇の考えた錬金釜が正解かどうかも分からない。

それで例えば錬金術師が増えて利益を得られなくなるのだとしたらそれは徇のせいではない。

そんな大人の事情的問題よりもやはりポーションがもっとみんなの身近な物になって欲しい。


「ご提案なのですが、その錬金釜を商標登録なさる気はありませんか?」


「えっ?」


考えてみれば徇より先にこの世界に来た人々が色んな文化を広めている時点で、商標登録制度があるのも当然かと納得する。

だとしたら今まで徇の他に錬金術師になろうとした人は居なかったのだろうか?


「私共商業ギルドとしては是非錬金術師様が増える事を望んでいるのです。錬金術に道具が必要なのは薄々分かってましたが実際どのような道具が必要かは秘匿されているので知る事もできずにいるのです。ですのでアマネ様さえ宜しければ是非この機会に私共と一緒に錬金術師を志望する者達に錬金釜を広めていきましょう」


「商標登録したら実際に錬金釜を作って私にも売って貰えるという事ですか?」


「アマネ様には情報提供料として進呈させていただきます」


「それってただで貰えるって事よね?」


「そうなりますね」


レグリスはニヤリと何か含みのある笑顔を浮かべた。

他に何か思惑があるのだろうとは思ったがそこは徇の感知するところではないのでスルーする。


その後詳しく話を詰め、徇の頭にあった錬金釜を大雑把に図柄で説明し、純利益の10%を徇の取り分として契約を結んだ。


正直徇には契約の内容などどうでも良かった。

錬金釜が実際に売れるかどうかも分からないし、この世界の法律や適性内容など理解していないのだから考えても仕方ないと思っていたからだ。


それよりも錬金釜がタダで手に入るのならやはりどんなものが錬金術で作れるのか色々試してみたいという興味の方が大きくなった。

それによって他の錬金術師に睨まれる事になり面倒事が起こったらレグリスにすべてを押付けてしまおうと考えていた。


そして結局徇は商業ギルドに会員登録しギルド預金を利用できる事になり、色々な清算を済ませロック鳥などの買取代金を受け取る事になった。


「代金はギルド預金に預け入れられますがどうしますか?」


「現金でお願いします!」


ギルド預金は商標登録で手に入る代金を預け入れるという名目で作ったので正直あまり興味がない。

それよりもアダマンタイトやプラチナを購入しなくて良くなったのなら現金の殆どを現実世界へ持ち帰れるのだ。


7億リットと言う事はその4倍だから28億円。徇はもう一生働かなくても食べていけると内心でほくそ笑んでいた。

異世界で結界の確認がてら錬金術の研究をして現実世界で好きな事だけして生活する。

そして多分老後も安泰。超ハッピーv。


「そうなりますと白金貨か大金貨でのお渡しになりますが宜しいですか」


「何それ?」


徇は初めて聞く白金貨と大金貨に難色を示す。

確か瑠紺は金貨で持ち帰れって言っていた。

金貨が30グラムだから40万になるのだとかなんとか…。

白金貨や大金貨も現実世界でちゃんと4倍の価格になってくれるのか心配になる。


「白金貨や大金貨はあまり出回ってませんのでご存じないのも仕方ありませんが大きな金額での取引だと普通ですよ」


「でも私は全部金貨で欲しいのですが」


徇はいくらで換金できるか分からない白金貨や大金貨を持ち帰るより確実に換金価格の分かっている金貨を優先させた。


「残念ですが7000枚以上の金貨を今すぐにはご用意できないのです。申し訳ありません」


「7000枚!」


金貨が一枚10万リットなんだから当然と言えば当然なのだが、実際に枚数として聞いて徇はちょっと驚いた。


(そうなると白金貨や大金貨で受け取るしかないのか?)


「ところで白金貨と大金貨っていくらになるんですか?」


「白金貨は100万リット大金貨が50万リットですね」


(って事は大金貨の重さが少なくとも150グラムは無いと損になるよね。白金貨ってきっとプラチナだろうけど確かプラチナは金より安かった筈。この世界では貴重な金属だから価値が高いのだろうが白金貨は絶対にパスだな)


「ところで大金貨の大きさってどの位になるのですか?」


「実際にご覧になってください」


徇は目の前に出された大金貨にガックリと肩を落とす。

どう見繕っても金貨の二倍程度の大きさだ。


(やっぱりないわ~)


「白金貨や大金貨って普通の商店で両替できますか?」


「一般の商店での取り扱いは難しいでしょう。王都へ行けば両替も可能ですがやはりあまりの大金となると難しいかと」


レグリスは徇が何を考えているのか察したようだ。


(それじゃあ現実世界に持ち込んで換金する時点で大損じゃん!)


そもそも大金貨が50万リットなら重さ二倍として換金したら80万円になるので損ではないのだが、金貨五枚だったら200万円になると思うと残念でしかない。

28億円になると喜んでいたのにそれが11億円程度にしかならないのかと思うと本当にガッカリだ。


(それでもきっと老後は安泰だろうし働かなくてもいいんだけどさ……)


「取り敢えずご用意できる金貨分をお持ち帰りいただき残金は預金しておくというのでどうですか?」


徇のあまりにがっかりする様子を見てレグリスが提案してきた。


「ギルド預金はこのカードをご提示いただければどこの商業ギルドでも利用できるようになっております。ですのでどうしても金貨をお望みならこまめなお取引をなさったらいかがでしょう」


「なるほど!」


(この町のギルドではいっぺんに下ろせないけど他の街のギルドへ行って下ろせるだけ下ろせば良いのか。毎日コツコツ方式ですね。そのくらいなら面倒くさいなんて言わずにやるよ!)


徇の落ち込んでいた気分は途端に上向いた。

徇の足りない頭と知識を補ってくれたレグリスに心から感謝をし、取り敢えず7億を超えていた分の金額である金貨241枚と銀貨銅貨を受け取って商業ギルドをルンルンで後にした。



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