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クレールラビリンス  作者: 橘可憐
異世界へGO!
12/56

お嬢様とお祝い?

あけましておめでとうございます。

今年一年がみな様にとって良い年でありますように。


瑠紺は思った通り夕飯の準備を終え食事を待ってくれていた。


「今日は初日のお祝いだと思って遠慮なく食べてくれたまえ。素材も特別に取り寄せた物だから美味しいに決まっているからね」


瑠紺は過去に料理人を何度も雇っていた事があったらしいが、結局自分の食べたい物を自分で作るのが一番だという結論に至ったらしく、今は食材に拘るのが趣味のようだった。


「最近はあまり知られていない美味しい食材もちょっと検索すれば結構簡単に見つかるし、私はその方面に明るい人に頼んでもいるからね」


と、自慢気に話していた。


「瑠紺さんっていったい何をしてる人なんですか?」


雪永に会長と呼ばれ、徇に湯水のようにお金を使う瑠紺さんが、いったい何をしているのか気になりながらも聞くタイミングをずっと逃していた徇はここぞとばかりに聞いてみた。


「私かい? 私はただの地主だよ。この近辺の土地を広く持っていてね。その中のビルをいくつか貸したり、いくつかの事業に力を貸してはいるが私自身は別段これと言って何もしてはいないね」


「でも会長って呼ばれてるじゃないですか」


徇はこの近辺がどの程度の広さなのかはまったく分からなかったが、土地を持っていてビルを貸しているという事は不労収入が多いのかと納得した。

しかしそれならばなぜ秘書が居て会長と呼ばれているのかが理解できなかった。


「税務上会社を作って管理している事も多いのでね。しかし私自身そっちの方面は明るくないので人任せにしているのだよ。だから会長と呼ばれているのかな。秘書とは彼らがそう名乗っているだけだと思ってくれれば良いよ」


「すごいですね」


徇から聞いておきながら瑠紺の説明ではまったく理解できなかったが、取り敢えず分かったふりをして返事だけしていた。


「勝手に名乗っている訳じゃありませんよ会長。私は会長に誠心誠意お仕えするように申し付かっておりますから」


雪永は勝手に名乗っていると言われた事に憤慨しているようでもあったが、多分いつもの事なのか諦めたような雰囲気もあった。


「まぁそんな事より早いところ食べて食べて」


「それじゃあ遠慮なくいただきます!」


正直徇も美味しそうな料理を前にして我慢も限界だったのですかさず返事をする。


「「いただきます」」


瑠紺が素材に拘って作ったというだけあって、座卓に並べられた料理はどれもこれもとても美味しかった。

彩とりどりの野菜が盛り付けられたサラダも今まで徇が見た事も無いものに思えたし、何よりローストビーフがとっても美味しかった。

徇が今まで食べたローストビーフとはまるで違い、薫り高く口の中で溶けて行く感じがたまらない。


「これ本当に美味しいです!」


「気に入ったのならまた作るよ。今日は他の料理も楽しんでくれると嬉しいね」


「違いますよ、どれもこれも美味しいと言ったんです」


徇が今まで食べた事のない大きさのエビのガーリックシュリンプもプリプリしてとっても美味しいし、ミネストローネも文句なく美味しかった。


和食派だと思われる瑠紺が徇の為に洋食にしてくれたのだろう事は想像がついたので、瑠紺が徇の言葉を誤解した事に少し慌て、言葉ではなく行動で示そうと料理を口にする。


「会長、どれもこれも本当に美味しいです。ありがとうございます」


「お礼を言うのは私の方だよ。これからも異世界活動をくれぐれも頼んだよ」


「承知しております」


エビを口いっぱいに頬張っていて返事をしそびれた徇は雪永に合わせ大きく何度も頷いた。


「お嬢様…」


「ハハハ、徇の食べっぷりはいつ見ても本当に気持ちが良いね」


雰囲気が一気に和んだは良いが、徇は雪永に呆れられたようで恥ずかしくなった。

とは言っても、徇には箸を止める気はまったく無く食べすすめ、そして食後のお茶を飲みながら今後の事を話し合った。


向こうの世界の魔力に侵される速度もこちらで浄化できる速度も人によって違うというので、取り敢えずしばらくは一日おきに様子を見ながら異世界へ行くという話になった。


雪永にも他に仕事があるらしく、徇専属になるにしても引き継ぎが必要らしい。

それに休みも当然必要だしね。


もしこれから先異世界でもっと活動したくなり向こうの世界で限界までいるとなったら、休みも無くつき合わせるなどどんなブラックだという話になる。

その辺は徇一人じゃない不便さを感じるが、向こうの世界で頼れるのは雪永しかいないと思い知ったばかりなので徇には何も言えなかった。


「それじゃあこれからもくれぐれも頼んだよ」


「お任せください、お嬢様は必ずお守りします」


「ハハハ……」


意気込む雪永の言葉に徇はまだどことなく慣れる事もできず、曖昧に笑って誤魔化すしかなかった。



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