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52 都合の悪い真実





 ユリアンは、自分には兄のように機転を利かせた説得の言葉を思いついて、まるで何も恐れる物などないかのような態度をとれる才能があるとは思っていない。


 それは事実であるし、兄がカルシア王国に戻った以上はアーグローデでの道は自分で切り開かなければならない。


 そうはいっても、この場所の王族よりはユリアンが出来ることが多い。


 兄本人はいないが、王宮で公務を手伝っていた事務官たちを何人か派遣してもらっているので早急に調べ物も進んだ。


 兄がアーグローデの貴族たちをやる気にさせてくれたおかげもあって、スムーズに第二回目の対策会議を迎えられた。


 といっても、第三回目など開くつもりはない。


 それほど悠長に構えてはいられないのだ。


「それで、今回は、カルシア王国ユリアン第二王子の要望により、このような場を設けることになりました。


 し、しかし非常に短期間の調査ですから、正直なところ信憑性もあるかどうか……ねぇ、父上」

「うむ」


 そんなふうに言うハインリヒ王太子に、ユリアンは少し呆れた気持ちになった。


 自分たちの国の事情を他国の王子に任せきりにしているだけではなく、解決に向かって動いていることを素直に喜ぶ姿も見せないとは、つくづくこちらの王族は仕方がない。


 ……ああ、けれど、仕方がないというよりも、自分たちの失態を隠したいと思う能があるだけましというものでしょうか。


 ユリアンは、焦ったように言うハインリヒ王太子を見つめながらそう考えた。


「そのようにおっしゃられる可能性を加味し、きちんと証拠になりえる書類をそろえてまいりました。今この場で確認することは不可能に近いでしょうから、要点だけをまとめたものが薄い方の書類つづりです。


 皆様まずはそちらを一ページ目をご覧になってください」


 集まった上級貴族たちの前には、前回の内容が薄すぎる参考資料とは違って、濃すぎる上に一冊の本に出来るほどに枚数のある参考資料が置かれていた。


 そしてユリアンの言葉通りにその上に、総括された別の書類が数枚纏まっているだけの書類束がある。


 指定通りに貴族たちがページを開いて、ユリアンは慣れた口調で説明を始める。


 兄はいつだって適当にその場でものを決めて方針を勝手に変えたりするので資料を集めて、具体的な政策や細かなことを決めるのはユリアンの得意とするところだった。

 

 それにこれは本来は、ハインリヒ王太子とバルタザール国王陛下にだけするはずの説明だった。


 なぜなら彼らにとって都合が悪い事実だからだ。

 

 だからてっきりこの対策会議が始まる前に、制止と話し合いが行われることになるだろうと思っていた。


 しかしどうやら彼らは事前に書類の確認を行っていない様子で、ユリアンはここの王族は少々腑抜けているなと思ったのだった。




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― 新着の感想 ―
 いっそ現王家を廃して併吞した方がこの国の民の為のような…
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