表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

神様の加護ってすごい。過誤かもしれないけど。

「おかえりなさいませ。でも…こう言っては何ですが、早すぎませんか?」


うん。わかるよ、ドージ君。


朝出て、夕方に帰ってきたからね。


まさか一日で終わるとは思ってなかったよ。


持っていった食料ほとんど手を付けてません。


だって、言われた通りに右のルートに行ったら、道端に岩の裂け目があって、そこから溶岩の流れが見えたんだもん。わざわざ頂上なんて登らなくてよくなっちゃった。行く途中は噴火も落石もなくて、全く危険がなかったし。

 

しかも溶岩の流れがいい感じで、かなり熱い溶岩キューブをクリエイトすることが出来た。


周りにあった火山性の多孔質の石を甕に敷き詰めて、その中に溶岩キューブを入れたら、想定通り甕を割らずに運ぶことが出来たしね。今も特に甕の外側は熱くないから、多孔質の石の断熱効果はすごいのかもしれない。ちなみに近くに黒曜石もあったから持ってきた。何に使うかはわからないけど、格好いいからね。旅の記念にしよう。あ、なにか刃物を作ってもいいかも。そういえばドージさん矢じりないって言ってたし。


さすがに裂け目の近くは、火山ガスが噴き出てて危なかったから僕一人で近づいたけど、腰に巻いたロープをブルオクスさんに持っててもらえたから全く問題なし。ラヴィータさんは硫黄の匂いにやられて裂け目から少し離れたところで休憩してたけど、今は元気そうだ。


そうそう、硫黄の匂い…いや正確には硫化水素の匂いなんだろうけど、匂いのもとをたどっていったらなんと硫黄があった。教科書通りの黄色いやつ。…ってあるのは当たり前かな?いや匂いはすれども、単体の硫黄はないっていう場合もあるだろうから、ラッキーだったと思う。これも拾ってきた。こっちはいろいろ使い道があるだろう。文明に欠かせない素材だ。


 あと、信じられないんだけど、帰りにつまずきそうになって足元を見たら、隕石が落ちていた。いや、空から落ちてきたんじゃなくて、ずっとそこにあった感じの隕石だ。なんで隕石ってわかったかっていうと、前の世界で手に入れた隕石と同じで、ウィドマンシュテッテン構造っていう特殊な模様が石の断面に見えたから。前の世界で見てなかったらわからなかっただろうけど、僕にはなじみのある模様だ。


こんないろいろなものが手に入るなんて、アストリア様のアドバイスすごい。さすが神様。


と、言いたいんだけどいいことがありすぎじゃない?


硫黄とか、黒曜石ならまだしも、隕石はないでしょ。できすぎだよ。それにウィドマンシュテッテン構造って隕石を磨かないと出てこないからね。これ見よがしに出てるものじゃないから。しかもさっき磨いたみたいにキラキラだし。なんか作為を感じるんだよな。


正直、完全にアストリア様が仕組んで僕に手に入れさせようとしてる感じがする。


まあ、いいものだからありがたくはあるんだけど、釈然としないんだよな。


こう、なんていうか、罪滅ぼし感があるというか…。


こんなにいろいろくれるっていうのは、また手違いがあったんじゃないんだろうか?

やっぱりいくら何でも、この世界の生活が平均的な生活とは思えないんだよね。

絶海の孤島で、飢餓寸前の状態っておかしくないかな?少なくとも平均的な生活ではないよね?

考えたくはないんだけど、この世界に転生したこと自体がアストリア様のミスなんじゃないだろうか?

アストリア様ならやりそうじゃない?


『あ、救世主様。マニュアルにまた新しいステップが現れましたわ』


ララナさんがマニュアルを手に広げている。


そう。これも怪しさをかもし出してるんだよな。今日の朝から急になんだけど、新しいステップが現れるたびに、マニュアルが光るようになった。ついでにふるえる。ララナさんに聞いてもそんなことは今までなかったそうだ。


しかも、出てくるステップの内容が呪文ばっかりで、“モウチョットヒダリアルコウカダイチャン”とか“ウエノホウアヤシイカラミタホウガイインジャナイカダイチャン”とか妙に具体的なんだよな。


今やマニュアルは、アストリア様からのメッセージを受信するスマホみたいになってる。


なんかこう、ここまでやってくると、アストリア様に後ろ暗いことがないとやらないレベルな気がするんだよね。


僕の転生先って、本当にここで正解なのかな?


今日のラッキーぶりは神の加護じゃなくて、神の過誤に対する罪滅ぼしじゃないの?


『また呪文ですので読み上げますわ。“ツ、ツミホロボシトカジャナイデアンシンシテクレダイチャン” やはり“ダイチャン”が頻出ですね。相当重要な単語かと。どのような意味なのですか?』


大ちゃんは僕です。


「あ、いや。たぶんあんまり関係ないんじゃないですかね。相変わらず、内容はよくわからないです。ははは…」


『そうですか。深遠な内容だと思うのですが』


ララナさんが難しい顔をしてるけど、なんとなく笑ってごまかそう。


まあ、考えても仕方ない。


実際のところ、アストリア様が味方であることは心強いし、現に今日もいいことしかなかった。


今日の収穫で、ここでの生活にも少し希望が見えてきた気がする。楽しくなってきているのも事実だ。ここは素直に感謝しておこう。


『あ、また呪文ですわ。“ソノイキヤデダイチャンオウエンシトルカラ”』


うーん。なんだかなあ。



まあ気を取り直して、やることをやりましょう。


「ではララナさん。溶岩のキューブを安置したいのですが、僕の家に行っていいですか?」


『もちろんですわ。救世主様を召喚した地はいわば聖地。聖火を安置するにはうってつけかと存じます。さっそく参りましょう』


ララナさんは僕の家のほうへ歩いて行った。


後ろから、ブルオクスさんが後ろから小声で話しかけてきた。


『救世主様の家でいいのか?料理をするところに置いたほうがいいんじゃないか?このままだとララナの祭具の一つになっちまうぞ』


「それは大丈夫です。単純に危ないので、僕の目の届くところに置いておきたいだけです。それにいろいろ試したいこともありますし」


『そうか。ならいいんだ』



僕の家に着くと、水のキューブの時と同じように、ララナさんが儀式を行った。みんなも魔力を送っていた。


前回とは違って、甕の中に溶岩キューブが入った状態だから、はた目には甕を置いただけだ。水のキューブの時のように、みんなの目の前で水がでてきて、歓声が沸き上がる…みたいな劇的な感じはない。でも。これは確かにここの生活を劇的に変えるはずだ。


みんなが帰った後、改めて甕の中の溶岩のキューブを見た。

今もクリエイトしたときと同じように白熱している。赤熱のさらに上の感じだ。

予想通り、熱が出続けてる。色から考えて、おそらく温度は1000度くらいだろう。ステータスを見ても温度まではわからなかった。ステータスも万能じゃないね。


1000度って普通に考えると高温だけど、文明を考えるとちょっと低い温度なんだよな。

いや、でも大丈夫。何とかなるさ。

これでもできることはたくさんある。


そういえば、気になることがあったんだった。当たり前だけど溶岩って岩だからかなり密度が大きいと思うんだけど、意外に大きなキューブがクリエイトできたんだよね。液状だから軽いのかな?持ってみるわけにいかないし、甕に入ってるといまいち重さがわかんないんだよね。


それとも僕が成長してクリエイトできる量が増えたのか?


自分のステータスをしばらく見てなかったから見てみるか。


ステータス


【名前:ダイスケ スズキ 種族:ヒト 職業:平均的な異世界転生者 固有スキル:クリエイト(平均)+1】


あ、なんか固有スキルに『+1』って書いてある。


やっぱり成長してたんだ。


いやでも待てよ。なんで平均の影響を受けないんだ?ララナさんとかが近くにいたら、魔力が大きいから、大量にクリエイトできそうじゃないか?


…いやちがうか。クリエイトなんていうスキルは誰も持ってないから、平均にならないのか。

あ、だから『固有』スキルね。僕にしかない唯一無二のものなんだ、たぶん。

魔力とか関係ないのかもね。

そういや、僕には魔力あるんだろうか?魔法も使えたら便利そうだ。


でもうれしいな。身長とかおなかの減り具合まで周りに影響されるこの世界で、自分にしかないスキルっていうのは励みになる。僕のアイデンティティと言ったら言い過ぎかな。

このスキルは伸ばしていけば絶対便利だし、どんどんクリエイトして生活をよくするぞ!

ゆくゆくは村の食料全部クリエイトできるかもね。そしたらどんなことがあっても安心だ。


じゃあ早速クリエイトやりましょうか。まだまだできる気がしてきた!


って、すごく眠くなってきたぞ…。


もう日が暮れて半数以上が寝始めちゃったのか。


固有スキルがあっても、こういう不便さはなくなら…ない…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ