✒ 双子勇者 ~ 弟勇者と仲間に勇者パーティから追放された兄勇者は、思い出に馳せる ~
オレは以前、“ 双子勇者 ” と言われていた元兄勇者のエカロトル・セイブリヤンだ。
実はオレ、前世は日本人でした!!
転生者ってヤツだ。
此方の世界──≪ クワルチンク大陸 ≫って言うんだけど、その中にある一国の≪ アップラシュナ王国 ≫を統治している王族に勇者召喚をされる筈だったらしい。
勇者召喚の最中に召喚術師が倒れて、勇者召喚は失敗。
勇者として転移召喚される筈だったオレは、≪ アップラシュナ王国 ≫の国民として産まれる事になった。
キノコン様の話では転移召喚された場合、元の世界──故郷へ帰れる可能性が有るらしいけど、転生してしまった場合は元の世界は “ 故郷 ” ではなくて、“ 前世 ” になってしまうから帰る事は出来ないみたいだ。
前世のオレは未だ高校生だった。
大学受験を受けるか就職するか──進路を決め兼ねていたんだ。
夏休みに友人とプールに出掛けて、大人気のウォータースライダーの列に並んでいた。
オレ達の順番が来て、ウォータースライダーを滑った記憶はあるんだ。
だけど、ウォータースライダーから出てプールにダイブした記憶が無い。
ウォータースライダーを楽しんでる途中でオレは、身体ごと消えてしまったのか──、身体を前世に残したまま魂だけが、≪ アップラシュナ王国 ≫へ召喚されてしまったのか──、真相は分からない。
前世で身体ごと消えても──、身体を残して魂だけ召喚されても──、前世では大事件になってそうな気がする。
オレが産まれたのは≪ アップラシュナ王国 ≫の中にある “ ケイツビ ” って名前の≪ 村落 ≫だった。
兄貴が3人,双子の姉が2人,オレとケイオズリの双子の下に、弟が1人と妹が2人も居る。
子供が10人も居る大家族ってヤツだ。
ド田舎の≪ 村落 ≫では子供が多いのは普通だったりする。
農作業をするのに戦力が必要だからだ。
此方の世界の父親,母親も子沢山で兄姉弟妹が多い。
だから、従兄弟や従姉妹,再従兄弟や再従姉妹も多くて、≪ 村落 ≫には親戚が多いんだ。
≪ 村落 ≫の周辺にも幾つか≪ 集落 ≫が在る。
≪ 村落 ≫から出た村人達が≪ 集落 ≫を作って、引っ越したりしたからだ。
長男は実家を継ぐ為に成人を迎えても≪ 村落 ≫に残るけど、長男以外は成人を迎えたら実家を出て周辺の≪ 集落 ≫へ引っ越しをして、≪ 集落 ≫を発展させる為に尽力する事がルールになっている。
15歳を迎えた日、勇者教会で成人の義を受けている最中に、オレとケイオズリの手の甲に勇者を示す聖痕ってのが現れた。
そんな訳で、オレとケイオズリは “ 勇者様の生まれ変わり ” として、勇者教会の偉い人に≪ 王都 ≫へ連れて行かれる事になった。
オレとケイオズリの手の甲に現れた聖痕ってのは半分ずつで、オレの左手の甲とケイオズリの右手の甲を横に並べると1つの聖痕になる。
≪ 王都 ≫に在る王城で謁見した国王様から「 1人では半人前,2人で1人前の勇者 」って言われて “ 双子勇者 ” って呼ばれる事になった訳だ。
国王様からに「 ≪ クワルチンク大陸 ≫は未曾有の危機に瀕している 」とかなんとか言われて、次代の妖精王の誕生を阻止する為に妖精妃を討伐する役目を担った。
オレの知ってるファンタジー物では、討伐するのは妖精妃じゃなくて魔王なのがパターンなんだが──、「 ≪ クワルチンク大陸 ≫では次代の妖精王が魔王的なポジションなのかも 」って思った。
国王様から旅に必要な資金をたんまりと貰った後、オレとケイオズリは王国騎士団の騎士に冒険者ギルドへ連れて行かれた。
初めての冒険者ギルドで、一緒に旅をしてくれる仲間を探す事になったんだ。
弟のケイオズリに良い所をほぼほぼ全部持って行かれてしまっていた “ 出涸らし兄 ” のオレは結成した勇者パーティ内で直ぐに “ お荷物勇者 ” の烙印を押されて、役立たずで使えないレッテルを貼られる事になったんだよな……。
ケイオズリは役立たずなオレを庇ってくれていたけど、ある日を境にケイオズリからも敵視される様になって、余計に勇者パーティに居ずらくなったんだ。
何が原因になったかって?
ケイオズリが想いを寄せていたらしいポーチェルって子が勇者パーティに居たんだ。
ポーチェルは僧侶で、パーティ内で役立たずなオレにも親切で優しく接してくれていた。
仲良くなったポーチェルとオレは “ いけない関係 ” ってヤツになってしまって、それをケイオズリを慕っている魔法使いがチクった訳だ。
──で、オレは仲間の男性陣にしこたま殴る蹴るの暴行を受けてサンドバックにされた。
ポーチェルに手を出して辱しめた罪に対する制裁ってヤツだ。
それをポーチェルの目の前でされた訳だな。
ケイオズリが “ ポーチェルに惚れていた ” って事を初めて知ったんだけど、何故かケイオズリとポーチェルが両想いで相思相愛だって事になっていた。
ポーチェルは否定してくれたけど、ケイオズリは勇者だ。
勇者として何の貢献も出来なくて何の功績も上げれてないオレなんかよりも勇者として活躍しているケイオズリの言う事を皆が信じるのは当然だった。
勇者パーティに貢献すら出来ない役立たずの分際で、ケイオズリの伴侶を夜這いして、寝込みを襲い嫌がるポーチェルを無理矢理に強姦した──って事にされて、大変な目に遭わされた。
ポーチェルはオレを助ける為に勇気を出してケイオズリに頼み込んでくれた。
ポーチェルがケイオズリに何をされたのかは言いたくない。
ポーチェルはオレなんかを助ける為に、ケイオズリや仲間の男性陣達の性欲処理に利用されまくったらしい。
魔法使いが下品に嗤いながら面白可笑しく話てくれた。
性格の悪い魔法使いだったな。
勇者パーティは何度も仲間が入れ替わり立ち替わりしている。
勇者パーティで変わらないメンバーなのは、勇者であるオレとケイオズリだけだ。
ポーチェルは知らぬ間に勇者パーティから抜けてしまって、別の僧侶がパーティメンバーに加わったんだ。
あの一件があってから、オレとケイオズリとはギクシャクしていた。
≪ 街 ≫に到着して、勇者パーティを追放されて、勇者の称号を剥奪されて、勇者教会を除名されるぐらい、ケイオズリはオレの事を敵視していたんだ。
ケイオズリは意外と根深い奴だったんだな。
ポーチェルの事、本気だったのかも知れない。
夜の街でしこたま派手に女遊びしといてな~~~。
因みにケイオズリは8歳の若さで既に童貞を卒業していた。
ケイオズリは誠実感の欠片も持たない不誠実なヤリ●ン野郎なんだよ!!
オレが童貞を卒業する事が出来たのは16歳で、相手はポーチェルだった訳だ。
こんなオレを好きになってくれて、男にしてくれて、有り難う、ポーチェル。
オレの女神様!!
おっと、いけない!
自分を卑下したら罰金なんだった!
貯金箱に銅貨を1枚入れないといけない決まりなんだ。
気を付けないとだ。