✒ 双子勇者 ～ 弟勇者と仲間に勇者パーティから追放された兄勇者は、古武術を習う ～
目に見えるアウターマッスルと目に見えないインナーマッスルを人並みに鍛える事が出来たオレは、キノコン様から直々に体術を習える事になった。
アウターマッスルとインナーマッスルを鍛える為にしていたエクササイズとストレッチは、古武術ってのを基にしていたみたいだ。
古武術って何だよ？
スマホが有れば、直ぐ検索して調べられるのにな──って思う。
アウターマッスルとインナーマッスルを平行して鍛えた事で知らず知らずに体幹トレーニングにもなっていて、体幹も鍛えられていたみたいだ。
受け身と言えば、柔道しか思い浮かばない。
柔道はＴＶでしか見た事がないんだよな。
オレに出来るのか不安だ……。
受け身のコツを教えてもらったら、ひたすら受け身を繰り返す。
人並みに受け身を取れる様になったら、護身術を習った。
キノコン様から直々に護身術のノウハウを叩きこまれる。
護身術を習った次は合気道を習う事になった。
円の動きから生み出される “ 円の理合い ” ってのと “ 螺旋の力 ” ってのを合気道で習う。
先ずは “ 円の理合い ” の基本的な動きを徹底的に習う。
それから “ 螺旋の力 ” の基本的な動きを徹底的に習う。
“ 徹底的に ” って言ったら語弊になるか。
前世のオレは運動音痴だったから、運動に関しては期待は出来ない。
転生したら運動音痴から脱却を出来るかと思ったけど、そうでもなかった。
運動神経の良しも頭脳明晰の良しも社交性の良しも良い所は全部、双子の弟に取られてしまっていた。
転生したオレは、運動神経はズギャン，頭脳明晰もズギャン，社交性すらズギャンと他にも様々な能力が双子の弟に奪われたまさに “ 出涸らし ” ってヤツだった。
前世で読んでた転生モノなんかで良く見られる定番の設定だ。
両親からも兄姉弟妹からも、オレは一切期待されてなかった。
国王様に「 １人では半人前。２人で１人前の勇者 」だと言われて、オレも勇者の一員として、皆の役に立てると浮かれていたけど、実際には荷物持ちすらもまともに出来ない役立たずだった。
そんなオレが体力や筋力を人並みに鍛える事が出来たのは、キノコン様とオレなんかな為に献身的に世話をしてくれるキノコンのお蔭だ。
受け身，護身術，合気道まで習う事が出来た。
根気良く、親切に丁寧に教えてもらえるなんて、思いもしなかった。
同じ人間よりも断然優しい……。
未だに茸の怪物感は否めないけど、間違いなくオレの人生は好転してると思いたい。
いや、絶対に好転してるに決まってる！！
キノコン
「 ふぅ……。
良い感じに汗を掻けたエリね。
エカロトル、順調に人並みに成長してるエリ。
グッジョブ、エリ★ 」
エカロトル
「 有り難う御座います！！ 」
キノコン
「 さぁ、もうひと踏ん張りするエリ！ 」
エカロトル
「 はい！
キノコン様ぁ！！ 」
麦わら帽子を被って、土を耕すキノコン様は輝いてるなぁ～～～～。
可愛くて癒されるぅ～～～～♥️♥️
──ってぇ、何でキノコン様は分身体達と一緒に麦わら帽子を被って鍬を片手に農作業してるんだ！？
──っていうか、何時の間にかオレも農作業に参加してたぁぁぁぁぁぁ！！？？
何で…………体術の合気道を習っていた筈なのにぃぃぃぃぃ！！
エカロトル
「 あ、あの……キノコン様──。
オレは何で…………農作業してるんでしょうか？？ 」
キノコン
「 そんなの決まってるエリ！
マオ様に美味しい野菜を食べて頂く為エリ！
真心と丹精を込めて育てた野菜と果物は生産者を裏切らないエリ！ 」
エカロトル
「 は、はぁ…………。
あの…………因みに “ マオ様 ” って何者なんですか？？ 」
キノコン
「 マオ様は人身御供──生け贄エリね 」
エカロトル
「 は…………えっ？
はぁぁぁぁぁぁ！？
人身御供ぅ？？
生け贄って何ですかぁ！？ 」
キノコン
「 そうエリね……エカロトルは〈 大陸神クワルチンクの化身 〉の御遣いエリ。
真実を話すエリ 」
エカロトル
「 真実…………あの……それは農作業をしながら聞いても大丈夫な内容なんですか？？ 」
キノコン
「 問題ないエリ。
野菜の成長を妨げる草を抜きながら聞くエリ。
どんどん抜くエリ 」
エカロトル
「 わ…分かりましたぁ！！ 」
いや、マジで良いんか！
駄目な気が半端なくするぅ～～～～！！
だけど、キノコン様が言うんだから此処は素直に従うしかない。
オレは畑に生えている雑草を引き抜きながらキノコン様の話を聞く事になった。
キノコン
「 キノコン達には創造主様が居られるエリ。
キノコン達の創造主様は〈 久遠実成 〉に作られた〈 ゴデッセルロドール 〉エリ。
マオ様もキノコン達も敬意と親しみを込めて〈 ゴデッセルロドール 〉の事を “ セロフィート様 ” と呼んでるエリ。
因みに〈 大陸神クワルチンク 〉は〈 久遠実成 〉の方便身の１つエリ。
〈 大陸神クワルチンク 〉 ＝ 〈 久遠実成 〉だと覚えておくエリ 」
エカロトル
「 わ、分かりました！ 」
それ全っ然っ──、草を引き抜きながら聞く様な話じゃないですよ、キノコン様ぁ！！
キノコン
「 〈 大陸神クワルチンク 〉に作られた “ セロフィート様 ” の手により、ボク達──〈 大陸神クワルチンクの化身 〉が生み出されたエリ。
“ セロフィート様 ” は偉大なる御方エリ！
そんな “ セロフィート様 ” が大切にされておられる眷属が “ マオ様 ” エリ！！
マオ様は自身を犠牲にし、“ セロフィート様 ” に己の総てを捧げておられるエリ！！
マオ様は今世で最も尊く慈悲深い羊を体現された素晴らしくも崇高なる生け贄エリ！！
キノコン達の安寧はマオ様の尊い自己犠牲によって築かれ、衛られているエリ！！
マオ様なくして、キノコン達の安寧は維持されないエリ！！ 」
エカロトル
「 は……はぁ……。
そうなんですね……。
その “ マオ様 ” に喜んでもらう為の農作業なんですね…… 」
キノコン
「 そうエリ！
マオ様への感謝の気持ちを野菜や果物に込めて一生懸命、育てているエリ。
マオ様への御供えエリ★ 」
エカロトル
「 御供え……。
その “ セロフィート様 ” と “ マオ様 ” には会えたりしないんですか？ 」
キノコン
「 エカロトルが会うのは難しいエリ。
セロフィート様とマオ様は既に≪ 街 ≫を出て他の≪ 街 ≫へ向かってるエリ 」
エカロトル
「 そうなんですか？ 」
キノコン
「 ≪ アップラシュナ王国 ≫全域を観光旅行されてるエリ 」
エカロトル
「 観光旅行……楽しそうですね！ 」
キノコン
「 エカロトルは〈 大陸神クワルチンクの化身 〉の御遣いとしてボクと他国を巡る旅に出るエリ。
セロフィート様，マオ様と会う機会はないエリ 」
エカロトル
「 そうなんですね。
残念です…… 」
どんな人達なのか一目だけでも見たかったな……。
抑人なのかさえ分からないけどな。
〈 大陸神クワルチンク 〉に作られた〈 ゴデッセルロドール 〉か……。
まさしくファンタジーだな！！
オレは、そんなファンタジー世界に転生して生きてるんだ。
キノコン様もキノコンの存在も十分、ファンタジーだけどな！
