✒ いけない密会 1
──*──*──*── 馬車駐車広場
──*──*──*── 馬車
マオ
「 なぁ、セロ──。
弟勇者と仲間達から “ 勇者 ” を剥奪されて勇者パーティを追放されて、ボコボコに殴られた兄勇者だけど──、何でキノコンに任せたんだ? 」
セロフィート
「 利用出来るからに決まってます 」
マオ
「 利用って……。
勇者を剥奪された元勇者に何をさせるつもりだよ? 」
装飾品屋の前で派手に仲間割れをしていた勇者パーティの騒ぎを野次馬に紛れて見物後、オレはセロに頼んでボロ雑巾の様にズタボロになってしまった兄勇者を助けた。
セロと《 宿屋街 》へ運んで──いや、“ 運んだ ” って言ったら語弊になるかな。
兄勇者の片足を掴んだセロが《 宿屋街 》まで引き摺ってた訳だし……。
雨風を凌げる程度の激安宿屋にチェックインして、宿泊室まで運じゃなくて──引き摺ったら、ベッドの上に寝かせる前に汚れた兄勇者に浄化魔法を掛けて綺麗にした。
ベッドの上に寝かせたら、回復魔法も掛けた。
眠る様に気絶している兄勇者が起きる迄オレが介抱しても良かったんだけど、観光デートの続きをしないといけなかったから、セロが呼び出したキノコンに介抱を任せる事になった。
一体全体何処に居たのやら、毎度の事ながら神出鬼没なキノコンが現れて、兄勇者の介抱を引き継いだんだ。
キノコンに介抱の一切を任せて宿屋を後にしたセロとオレは、観光デートの続きを再開してしこたま楽しんだ後、《 馬車駐車広場 》へ戻って来たって訳だ。
マオ
「 聞こえて来た内容だと、勇者なのに “ 戦えない ” とか “ 魔法を使えない ” とか “ 役立たず ” とか “ お荷物 ” とか散々な事を言われてたけど? 」
白昼堂々と公衆の面前で言う様な事じゃなかったと思うけどな。
かなり酷い追放劇だった気がする。
オレが被害者だったら、全員をノックアウトにした後、全裸に剥いて逆さ吊りにしてたかもだ。
セロフィート
「 マオ、勇者を ” 剥奪された “ と言っても所詮は人間間でのやりとりに過ぎません。
彼が ” 勇者である “ 事を覆す事も無かった事にも出来ません。
人間が勝手に彼から勇者の称号を剥奪しても意味の無い事です。
事実、真の勇者は彼の方ですし 」
マオ
「 ………………は?
弱くて役立たずで使い道のないエカロトルが、何で真の勇者なんだ??
どゆことだよ?? 」
セロフィート
「 勇者の能力を制御する事が出来るからに決まってます 」
マオ
「 勇者の能力を制御??
勇者の能力って制御しないと使えないもんなのか? 」
セロフィート
「 脆い人間の身体には強大な勇者の能力は有害です。
制御が出来ないと勇者の能力に呑み込まれます。
勇者の能力を酷使し続けると寿命が削られ死に至ります 」
マオ
「 えっ?
勇者の能力って寿命を消費するのか?
正しく魔法を発動させなかったが故に寿命を対価で持ってかれるみたいな──。
命を奪われる程ヤバいもんなんだ…… 」
セロフィート
「 人間には過ぎた能力です。
あの弟勇者が勇者の能力を制御する事が出来るのは寿命を使い切ってしまう迄です。
寿命が尽きた瞬間、彼は勇者の能力に呑まれます 」
マオ
「 勇者の能力って危険極まりなくて、おっかないもんなんだな……。
じゃあ、兄勇者は役立たずで使えないけど、勇者の能力を制御する事が出来るから、どんなに勇者の能力を使っても寿命を対価に消費する事はない訳か? 」
セロフィート
「 その通りです。
彼に勇者の能力が戻っても、勇者の能力を使う機会は無いでしょう 」
マオ
「 何でだ? 」
セロフィート
「 〈 大陸神クワルチンクの化身 〉の御使いとしてキノコンと行動する事になるからです 」
マオ
「 プリテみたいにか? 」
セロフィート
「 はい♪
勇者も次代の妖精王の誕生を阻止する為、妖精妃を倒す為に王族から駆り出されている立場です。
弟勇者は、近い内に勝手に自滅して死にますから放っといて良いです。
勇者の能力を制御する事に苦戦する勇者パーティ等に妖精妃の討伐は出来ません 」
マオ
「 随分と断言するなぁ。
もしかして、フィールドに出没する怪物の出現率や遭遇率を上げたりはしてないよな? 」
セロフィート
「 はい?
そんな面白い事してませんけど? 」
マオ
「 何で疑問系なんだよ! 」
絶対、やらかしてんな!
明らかに勇者パーティの邪魔してるぅぅぅぅ!!
セロフィート
「 兄勇者にも〈 大陸神クワルチンクの化身 〉の御遣いに相応しい法衣を用意してます 」
マオ
「 用意周到だな。
まぁ、妖精妃の居場所を見付け出されて退治されても困る訳だし、弟勇者と仲間達には怪物の餌になってもらうしかないよな?
本当の事を話しても通じなさそうな感じだったし…… 」
セロフィート
「 マオ、キノコンが報告に来てくれました 」
マオ
「 えっ?
《 宿屋街 》から此処まで態々来てくれたのか? 」
兄勇者の介抱は分身体にでも任してるんだな。




