✒ 双子勇者 ~ 弟勇者と仲間に勇者パーティから追放された兄勇者は、拾われて介抱される ~
──*──*──*── 宿屋街
──*──*──*── 宿屋
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「 …………………………此処は…………?? 」
見慣れない部屋だ。
何でオレは知らない部屋に居るんだ……??
オレは…………双子勇者の兄……エカロトル。
同じく双子勇者の弟……ケイオズリに殴られた筈…………。
気を失ってる間に一体何が…………。
?
「 気が付いたエリね。
身体の調子は、どんな感じエリ? 」
エカロトル
「 ……………いっ──い゛や゛ぁぁぁぁぁぁっ!!!!
怪物が喋ってるぅぅぅぅぅ~~~~!!!! 」
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「 お前、命の恩人に対して失礼エリ 」
エカロトル
「 ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒッィィィィ!!!!
命の恩人~~~~??
怪物が何で勇者のオレ助けるんだよぉぉぉぉ??
オレを食べるつもりなのかよぉぉぉぉ!?!? 」
?
「 お前を喰べるのは禁止されてるエリ。
お前を助けたボクは〈 大陸神クワルチンクの化身 〉エリ 」
エカロトル
「 大陸神クワルチンクの化身?? 」
大陸神クワルチンクの化身
「 そうエリ!
ボクの事は気軽に “ キノコン ” と呼ぶと良いエリ!
苦しゅうないエリ 」
エカロトル
「 ……………………苦しゅうない??
──って、お奉行様かよ…… 」
キノコン
「 お前──、異世界転生した人間エリね 」
エカロトル
「 ──な、何で、それを?!
弟にも話した事ないのにっ──!! 」
キノコン
「 フフン!
ボクはキノコン!
〈 大陸神クワルチンクの化身 〉だから、お視通しエリ! 」
エカロトル
「 何か知らんが凄ぇ…… 」
キノコン
「 お前は双子勇者の1人──、通称 “ 兄勇者 ” のエカロトル・セイブリン──エリね 」
エカロトル
「 は、はい!
す、凄ぇ~~!!
未だ名乗ってもないのにオレの本名を言い当てるなんて──、本物だぁ~~~~!!
異世界ファンタジック、フォォォォォ~~~~~~!!!! 」
キノコン
「 興奮は程々にするエリ。
エカロトルよ、お前は同じく双子勇者である弟勇者ケイオズリと仲間達から引導を渡され、勇者パーティを追放されたエリね 」
エカロトル
「 は…はい…………その通りです…… 」
キノコン
「 弟勇者の根回しにより、勇者教会から除名され、勇者の称号も剥奪されたエリね 」
エカロトル
「 …………返す言葉も御座いません…… 」
キノコン
「 勇者教会から除名された事により、勇者教会から受けられる一切の優遇も受けられなくなったエリね 」
エカロトル
「 …………その通りで御座います…… 」
キノコン
「 好都合エリ 」
エカロトル
「 ………………あ、あの……キノコン様…………、“ 好都合 ” とは……?? 」
キノコン
「 異世界転生者、エカロトル・セイブリヤン!
只今を以て、汝を〈 大陸神クワルチンクの化身 〉のボク──、キノコンの御遣いに任命するエリ!! 」
エカロトル
「 ………………は??
オレが……キノコン様の御遣い??
えっ…………オレで良いんですか??
オレは…………ケイオズリや仲間達から役立たずの烙印を押されて追放された駄目人間なんですけど…… 」
キノコン
「 他人の評価を真に受けるのは良くないエリ。
自分で自分を “ 駄目人間 ” だと貶め、卑下する事を〈 大陸神クワルチンク 〉は御許しにならないエリ。
顔を上げて、背筋を伸ばして、胸を張って堂々とするエリ。
勇者よりも重要な使命エリ 」
エカロトル
「 勇者よりも重要…………。
でも、勇者の使命は≪ クワルチンク大陸 ≫を未曾有の危機に陥れる妖精妃を見付け出して倒さないといけなくて── 」
キノコン
「 エカロトル、君は勇者教会を通して王族と貴族達から誤った知識を学ばされたエリ 」
エカロトル
「 えっ…………誤った知識……ですか…?? 」
キノコン
「 エカロトルの受けた洗脳をボクが解くエリ★ 」
エカロトル
「 せ、洗脳を解くって…………どうやってですかぁ~~~~?? 」
キノコン
「 病み上がりの無理は禁物エリ。
今から規則正しい生活を身体に叩き込むエリ! 」
エカロトル
「 規則正しい生活……ですか?? 」
キノコン
「 生活習慣,食事の改善,基礎体力を向上させるエリ。
要はリハビリするエリ 」
エカロトル
「 リハビリ……ですかぁ?? 」
キノコン
「 エカロトル──、君は弟と仲間達から勇者パーティを追放され、勇者である事を剥奪されたエリ。
それでも君が “ 勇者 ” である事実は何者にも消せないエリ。
エカロトルこそが、真の勇者エリ 」
エカロトル
「 どうしてオレが??
だってオレは役立たず…… 」
キノコン
「 卑下は罰金エリ! 」
エカロトル
「 ごっ御免なさいっ!! 」
キノコン
「 本来、勇者は異世界召喚されるものエリ。
ところが君の場合は “ 召喚 ” ではなく “ 転生 ” という形で≪ アップラシュナ王国 ≫に召喚されたエリ。
今から5年前──、王族は聖女召喚を成功させたエリ。
多勢召喚によって30名の聖女が≪ アップラシュナ王国 ≫に召喚され、妖精妃の討伐に駆り出されているエリ 」
エカロトル
「 えっ…………聖女召喚!?
30名?!
ど、とういう事ですかっ!! 」
キノコン
「 聖女召喚をする数年前、王族は勇者召喚を試みたエリ。
勇者召喚の義を行っている最中、召喚術師が発作を起こして亡くなったエリ。
勇者召喚は失敗、転移召喚される筈だった勇者が転生召喚される事態になったエリ。
勇者は母親の胎内の中で、前世の記憶を受け継いだ胎児と勇者の能力を受け継いだ胎児に分かれたエリ 」
エカロトル
「 ははは…………やっぱりだ……。
オレは勇者の能力を受け継いでないんだ……。
だから…………勇者の装備品を装備する事が出来なかったんだ…… 」
キノコン
「 勇者の能力は1人だけでは制御する事が出来ないエリ。
勇者の能力を制御し、安全に使う為には、前世の記憶が必要不可欠エリ。
弟勇者と仲間達は兄勇者を追放するべきではなかったエリ 」
エカロトル
「 えっ……勇者の能力って制御する必要があるんですか?? 」
キノコン
「 勇者の能力は強大エリ。
脆い人間には勇者の能力は害でしかないエリ。
制御の出来ない勇者の能力は、身体を蝕み、持ち主を死に至らしめるエリ。
弟勇者が亡くなれば勇者の能力はエカロトルの中に戻るエリ 」
エカロトル
「 ………………前世の記憶を持つオレがケイオズリの傍に居たから……、ケイオズリは勇者の能力を制御して思う存分に発揮して戦う事が出来ていた……。
勇者の能力を制御するオレがケイオズリから離れたら……ケイオズリは勇者の能力を制御する事が出来なくなる……。
勇者の能力に身体を蝕まれて死に至る…………。
ケイオズリが……死ぬ??
勇者の能力がオレの中に戻って来て──、オレが真の勇者になる………… 」
キノコン
「 呑み込みが早いエリね。
エカロトル──、君は時代劇を知ってるエリね。
前世は日本人エリ?
それとも日本人エリ? 」
エカロトル
「 オレは──日本人です。
確かに場合に依っては “ 日本 ” って呼ぶ時もありますけど、“ 日本 ” って呼ぶのが一般的です 」
キノコン
「 前世の世界では異形や怪異は存在していたエリ? 」
エカロトル
「 異形??
怪異……ですか??
えぇと……怪異って言うのは……、幽霊とか妖怪と妖精とかの事ですか?
異形って言うのは…………亜人種とか?? 」
キノコン
「 “ ファンタジー ” で例えるなら、異形は亜人種で合ってるエリ。
人獣族,獣人族,獣族,天使族,魔族,死神,魔女…等が該当するエリ。
怪異も幽霊,妖怪で合ってるエリ。
霊的存在,妖かし,モノノケ,付喪神,精霊,妖精…等が該当するエリ 」
エカロトル
「 …………現実には存在しないです。
想像,空想,妄想の中の産物でした。
小説,漫画,ゲーム,TV,映画の中で登場するだけです 」
キノコン
「 心霊現象,怪奇現象,呪い,祟りに関しては、どうだったエリ? 」
エカロトル
「 う~~ん…………心霊現象,怪奇現象なんてのも有りましたけど、大概の現象は科学的に解明,解決されていました。
呪い,祟り……に関しては、科学的にも解明はされてなかったと思います 」
キノコン
「 “ 陰陽師アイドル ” は知ってたエリ? 」
エカロトル
「 えっ??
陰陽師……アイドル…………え??
何ですか??
陰陽師とアイドル……ですか?? 」
キノコン
「 アイドル活動をする陰陽師エリ 」
エカロトル
「 えぇっ!?
アイドル活動をする陰陽師……ですか??
陰陽師のコスプレをして歌って踊るアイドルじゃくて──ですか??
陰陽師がアイドル活動をするんですか??
う~~~~ん…………オレは聞いた事が無いです…… 」
キノコン
「 食事は和食をメインにした方が良いエリ? 」
エカロトル
「 えっ?
和食ですか?!
和食を食べれるんですか??
本当ですか??
和食……日本料理──食べたいです!!
めちゃくちゃ食べたいですぅぅぅぅ!! 」
キノコン
「 朝食は和食を作るエリ。
昼食は洋食を作るエリ。
夕食は和風中華を作るエリ 」
エカロトル
「 キノコン様がオレの食事を作ってくれるんですか? 」
キノコン
「 ボクの分身体が作るエリ。
栄養管理は任せるエリ 」
エカロトル
「 有り難う御座います…………オレなんかの為に…… 」
キノコン
「 エカロトル、卑下は罰金エリ。
今から自分を卑下したら銅貨1枚、缶の中へ入れるエリ 」
そう言ったキノコン様は、何処からかデカい缶を出すとベッドの横に設置されている低い棚の上に置いた。
缶の上には縦長の穴が空いていて、硬貨を入れれる様になっている。
エカロトル
「 缶の貯金箱ですね!
描かれている絵は何のキャラクターですか? 」
キノコン
「 セロカ君エリ 」
エカロトル
「 セロカ君…………ですか?
知らないキャラクターだけど…………可愛いですね!
見てるだけで不思議と心が和んで来ますね(////)」
キノコン
「 アップラシュナ語の読み書きは出来るエリ? 」
エカロトル
「 あ、はい。
読み書き,算術なら勇者教会で習いました 」
キノコン
「 大陸語は分かるエリ? 」
エカロトル
「 大陸語……ですか??
大陸語って何ですか?
何処で使うんですか?? 」
キノコン
「 大陸語は≪ クワルチンク大陸 ≫全土で使われるエリ。
≪ クワルチンク大陸 ≫には≪ アップラシュナ王国 ≫以外にも多くの≪ 国 ≫が存在してるエリ。
様々な国々の文字,言葉を覚えるのは大変エリ。
≪ クワルチンク大陸 ≫の共通語──大陸語を知っていれば、他国へ入国した際には国民と会話する事が出来るエリ 」
エカロトル
「 そうなんですか?!
大陸語って、そんなに便利なんですか?
他所の≪ 国 ≫の言語を覚える必要がないなんて、楽過ぎじゃないですか??
オレ、覚えたいですっ!! 」
キノコン
「 エカロトルには〈 大陸神クワルチンクの化身 〉の御使いとして、≪ クワルチンク大陸 ≫全土を一緒に旅してもらうエリ。
勿論、確り覚えてもらうエリ。
怪我が治って歩ける様になったら基礎体力を上げるストレッチをしてもらうエリ 」
エカロトル
「 ストレッチ……ですか? 」
キノコン
「 インナーマッスルとアウターマッスルを鍛えるエリ 」
エカロトル
「 は、はい…… 」
キノコン
「 食事の時間まで、確り身体を休めるエリ 」
エカロトル
「 あ……有り難う御座います 」
キノコン様はドアを開けると室内から出て行った。
キノコン様の背中には透明で綺麗な羽が生えている。
えぇと………………キノコン様は、茸の怪物じゃない…………よな??




