✒ 双子勇者 ~ 弟勇者と仲間に勇者パーティから追放された兄勇者は、無一文になりました ~
──*──*──*── 装飾品屋前
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「 ──ちょっ、ま、待ってくれよ!
いきなり『 勇者パーティを追放する! 』って言われても──、急にどうしてだよ!? 」
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「 “ 急に ” じゃないんだよ、兄貴。
前々から皆とは話し合っていたんだ。
兄貴は “ 足手まとい,お荷物,役立たず ” の三要素を具備してるだろ。
だから兄貴には『 勇者パーティから抜けてもらおう 』って満場一致で決まったんだよ! 」
兄貴と呼ばれた男
「 満場一致って──。
で、でもっ、オレ達は双子だ!
『 1人では半人前だけど、2人揃って一人前の勇者だ 』って王様からも言われたじゃないか! 」
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「 兄貴……、戦えないだろ。
勇者の武器も防具類も装備する事が出来ないじゃないか!
攻撃力も低い,防御力も低い,素早さも低い,体力も低い,命中率も低い,移動力も低い,魔法力も低いし、魔法も使えない。
戦力にすらならない兄貴が勇者パーティに居て、一体何の役に立つって言うんだ? 」
兄貴と呼ばれた男
「 ………………荷物持ちや雑用……ぐらいかな?? 」
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「 体力も腕力も忍耐力も低い兄貴が、1度でも荷物持ちを最期までやりきれた事があったか?
兄貴が雑用を最期まで責任を持ってこなせた事があったか? 」
兄貴と呼ばれた男
「 ………………………………情けない兄貴で……すまない………… 」
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「 なぁ、兄貴──。
オレ達の事を真の仲間だと思ってくれてるなら、此処等辺でオレ達を兄貴の呪縛から解放してくれ!! 」
兄貴と呼ばれた男
「 オレの呪縛……??
オレは呪いなんて使えな── 」
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「 兄貴がパーティに居ると、生存率が大幅に下がるんだよ!!
足手まといで役立たずでお荷物な兄貴を衛りなが怪物と戦うのは辛いし、肉体的にも精神的にもしんどいんだよ!!
兄貴は勇者パーティに要らないんだ!!
邪魔なんだよ、兄貴の存在は!!
兄貴と一緒に旅を続けていたら、妖精妃の元へ辿り着く前に死んでしまうよ!!
勇者としての使命を果たせぬまま死ぬなんて御免なんだよ!! 」
兄貴と呼ばれた男
「 ケイオズリ………… 」
ケイオズリ
「 兄貴…………追放だよ。
本日を以て、兄貴を勇者パーティから追放する!!
兄貴の名前は既に勇者教会の名簿から除名してもらったからな!
勇者教会との縁が切れた事により、兄貴から “ 勇者 ” を剥奪する!! 」
兄貴と呼ばれた男
「 そ──そんな、何で勝手に勇者教会から除名なんてするんだっ!! 」
ケイオズリ
「 皆、役立たずな兄貴が “ 勇者 ” でいる事が許せないんだ。
勇者じゃなくなった兄貴は、勇者教会の優遇を受ける権利の一切を失った。
勇者教会に泣き付いても無駄だからな!! 」
兄貴と呼ばれた男
「 ケイオズリ…… 」
ケイオズリ
「 双子の誼で身ぐるみは剥がないでやるよ。
最低限の装備品もくれてやる。
役立たずは役立たずらしく目立たない場所で惨めに細々と生きてろ!! 」
仲間:戦士
「 ほらよ!
お前にくれてやる武器は “ ひのきの棒 ” だ! 」
仲間:格闘家
「 盾には “ 鍋のフタ ” を使いやがれ! 」
仲間:魔法使い
「 防具は “ 旅人の古着 ” で十分よね? 」
仲間:僧侶
「 はぁ…………裸足じゃ可哀想だから、“ ボロボロの皮靴 ” を恵んであげるわ。
有り難く思いなさいよ 」
仲間:盗賊
「 コレを忘れたら駄目だよな!
お前の全財産は貰っとくからな!
俺達が使ってやるから感謝しろよ★ 」
仲間:薬師
「 エカロトル…………。
バンダナ……貰いますね。
代わりにコレを受け取ってください。
パーティ内で出たゴミです。
僕達の代わりに捨てといてくださいね★ 」
仲間:弓使い
「 あ、あの…………僕は…………マントを……。
新調したので “ 使い古したマント ” になりますけど──、無いよりはマシ……ですよね? 」
ケイオズリ
「 兄貴──、オレからは今迄の謝礼を纏めて返すよ。
受け取ってくれるよな? 」
そう言った赤みがかった栗色の髪をした男──ケイオズリは、黒みががった赤色の髪をした男──エカロトルの顔面に拳を叩き込んだぁぁぁぁぁぁあ!!!!
両手の拳を休める事なく、ケイオズリって男はエカロトルって男を殴り始める。
今迄の恨み辛みでも込めているのか何発も殴りまくっている。
そ…………壮絶だぁ~~~~!!
殴る拳を止めたケイオズリは、両目から涙を流しながらボコボコになった男──エカロトルから離れる。
パーティの仲間達は泣いている男──ケイオズリを囲むと優しい言葉を掛けながら慰めている。
ケイオズリは仲間達と共に去って行ったけど、殴られて散々な目に遭わされた男──エカロトルは、まるでボロボロのボロ雑巾みたいだ。
パーティ内での仲間割れってのは冒険者パーティでは良くある事らしいから、野次馬達にとっては珍しくはない見慣れた光景なのかも知れない。
騒ぎの原因が去った事で、見物に集まった野次馬達は次々に散って行く。
殴られてボロボロな男──エカロトルに声を掛ける街民は誰1人として居ない。
怪我人が目の前に居るってのに放置って…………。
オレはボロ雑巾の様にズタボロな男──エカロトルに近付いた。
怪我人を放っとくなんて出来ないもんな。
回復魔法を──と思ったけど、魔法が使えるアミュレットはセロに没収されていたんだった!!
これじゃあ、回復魔法で傷を癒やす事が出来ない!!
セロフィート
「 マオ、観光デートの続きをしましょう 」
そうだよな、セロだもんな。
怪我人を見て「 急いで手当てをしましょう 」なんて言葉をセロの口から出る訳がないんだ。
人形だから…………。
マオ
「 セロ、怪我人の手当てをしたい!
放っとくなんて出来ないよ!!
セロ、頼む!
応急処置させてくれ!! 」
セロフィート
「 マオ……。
仕方無いですね。
《 宿屋街 》へ行くとましょう 」
マオ
「 セロぉ!
有り難な!! 」
セロフィート
「 はいはい。
雨風が防げれば、1番安い宿屋でも良いですね? 」
マオ
「 そう……だな。
ベッドに寝かせる前に身体の汚れを落として綺麗にしないとだよな 」
セロフィート
「 マオ、アミュレットを返します。
彼の手当てをしたいなら好きにしてください 」
マオ
「 うん!
有り難な! 」
セロはエカロトルの左足を掴むと引き摺って歩き出した。
もしかして《 宿屋街 》まで引き摺って行くつもりなのかな??
背中が土で汚れるけど……まぁ良いか!
どうせ後で浄化魔法で綺麗にするんだからな!!




