✒ きゅんデート 1
──*──*──*── 商店街
セロが言う通り、雨は3日3晩も降りっぱなしだった。
セロとオレの馬車は被害を受けはしなかったけど、他所の馬車は酷い有り様だった。
古代魔法の結界魔法ってマジで優れてる!
因みにセロの言う通り、雨が長引いた事もあってか、死者もかなり出たらしい。
激しい雨が降る中、外出して出歩く馬鹿が続出したらしく──、足を滑らせ、川に落ち、流されたり、溺れたりして死んだらしい。
セロ曰く、吹き荒れる風や雨に紛れた精霊の歌声に誘惑された人間が被害にあったんだとか。
本人達の “ 不注意が招いた事故死 ” として片付けられて終わりなんだろうけど、「 何だかな~~~~ 」って感じだ。
「 目に見えない精霊の歌声が事件の原因なんだ 」って言っても信じてもらえなさな気がする。
妖精族は姿が見えるから「 妖精族の歌声が事件の原因だ 」って言えば信じてはもらえそうかな?
手当たり次第に妖精族を捕まえて事情聴取という名の尋問をしまくるかも知れない。
妖精族にとっても迷惑な話だ。
だけど真犯人は妖精族じゃなくて、目に見えない精霊だ。
目に見えない精霊の犯行だとしても、それを裏付ける為の確固たる証拠なんて何処にもない。
セロには精霊の歌声が聴こえてた様だけど、オレには全く聴こえなかったしな。
セロが古代魔法で聴こえない様にしてくれてたのかも知れないよな?
実は《 馬車駐車広場 》に居た人達の中にも亡くなった人はかなりいたんだよな。
使役している主人が亡くなってしまった妖精族は《 妖精市場 》誘導されていた。
きっと《 妖精市場 》で次の主人を待つんだろう。
マオ
「 ──折角《 妖精市場 》に居た妖精族をセロが買い占めて空っぽたのに、今回の不幸な事故で《 妖精市場 》が妖精族で増えちゃったな~~ 」
セロフィート
「 そうですね。
《 妖精市場 》は商品の妖精族が戻って来て、喜んでますね 」
マオ
「 また買い占めるか? 」
セロフィート
「 暫くは様子見しましょう 」
──*──*──*── ブローチ屋
セロフィート
「 ──マオ、このブローチ見てください。
可愛いです 」
マオ
「 本当だな!
動物……だよな?
耳が長いからウサギかな?
でもさ、ウサギに角なんて生えてないよな? 」
セロフィート
「 これは “ ガインギュ ” と呼ばれる怪物です。
肉屋へ行けば売ってますね。
長い耳は高級食材として売買されてますし、角は薬師が薬の素材で使います。
ルビー色の目を使った料理を食べれる飲食店があります。
中々の珍味みたいですよ。
爪や皮は── 」
うぅ……長くなりそうだ。
何とか話題を変えたい。
マオ
「 セロは物知りだな!
あっちに機が売ってるぞ!
見に行ってみようよ! 」
セロフィート
「 はいはい。
──これを1つ包んでください 」
店主
「 毎度あり! 」
マオ
「 ブローチ、買ったんだな。
欲しかったのか? 」
セロフィート
「 マオに似合うと思って♪ 」
マオ
「 えぇ~~…………付けるのかよ(////)」
どうせならカッコイイのが良かったな…… 」
セロフィート
「 そう言わずに付けてください♪ 」
セロが左胸の辺りにガインギュのブローチを取り付けてくれる。
これじゃあ、完全に子供じゃんかよ。
歳上の妖精に子守されてる子供みたいじゃんかよぉぉぉぉ!!
──*──*──*── 機屋
セロフィート
「 色んなデザインの機が有りますね 」
マオ
「 凄いよな~~。
これを人が地道にコツコツと機を織ってるんだろ?
尊敬するよ… 」
セロフィート
「 マオ、妖精の羽が織られてます 」
マオ
「 本当だな。
ラメってる糸を使ってるから余計に綺麗に見えるんだな。
セロ、この機が欲しい! 」
セロフィート
「 はいはい。
ふむ──、結構な値段ですね。
それだけ手間隙が掛かっているのでしょう。
マオ、見る目が有りますね 」
セロはオレが気に入った生地を触りながら言う。
マオ
「 見る目が有るかな? 」
セロフィート
「 どんな安物でも、気に入った人にとっては価値ある品です。
これを1枚ください 」
店主
「 毎度あり! 」
マオ
「 セロ、有り難な。
こんなに高い機のに…… 」
セロフィート
「 構いません。
欲しいのが有れば何でも買います 」
マオ
「 セロぉ~~(////)
そう言えばさ、≪ クワルチンク大陸 ≫で使われてる銅貨,銀貨,金貨ってさ、1枚幾らの価値があるんだ? 」
セロフィート
「 そうですね。
“ 円 ” で例えると分り易いです? 」
マオ
「 ≪ 日本国 ≫の単価だな。
それで良いよ 」
セロフィート
「 銅貨1枚、100円。
銀貨1枚、1万円。
金貨1枚、100万円でしょうか 」
マオ
「 銅貨は100円か。
銀貨は使うのが勿体無いな~~ 」
セロフィート
「 金貨1枚と銀貨60枚は中々の値段でしたね 」
マオ
「 160万円って事だよな。
この1枚が160万円かぁ~~。
手織りだもんな、それぐらいするか 」
セロフィート
「 次は何処に行きます? 」
マオ
「 そうだな~~。
公園に行ってみよう!
公園はデートの定番だからな! 」
セロフィート
「 はいはい。
公園へ行くとしましょう 」
セロと手を繋いで《 商店街 》の中を歩いて出ると、公園を目指して歩いた。
──*──*──*── 公園
マオ
「 意外と人が多いな。
妖精族も居るから余計に人口密度が高い気がする… 」
セロフィート
「 マオは公園で何をしたいです? 」
マオ
「 う~~ん…………。
ボートが有れば乗りたいけど──、池は無さそうだな… 」
セロフィート
「 池が在っても一般客が乗れる様なボートは置いて無いでしょうね 」
マオ
「 そっか。
デートボートの習慣がなきゃ、ボートの漕ぎ方を知ってる一般客も居ないかも知れないな…… 」
セロフィート
「 マオ、絵師が居ます。
記念に1枚、描いてもらいましょうか 」
マオ
「 うん! 」
セロフィート
「 絵を1枚、描いてもらえます? 」
絵師
「 は、はい!
有り難う御座います!
喜んで!! 」
セロフィート
「 マオ、描いてくれるそうです 」
マオ
「 お願いします! 」
絵師
「 おまかせください!! 」
絵師はセロに声を掛けられて嬉しいのか、テンションが高い。
絵が上手いのか分からないけど、絵師をして稼いでる訳だから上手いって信じたい。
セロフィート
「 マオ、もっと近付いてください。
抱っこします 」
マオ
「 抱っこは駄目だろぉ?!
オレの威厳が── 」
セロフィート
「 マオに威厳なんて有りました? 」
マオ
「 ひでぇ…… 」
オレはセロにヒョイっと持ち上げられると、セロの膝の上に座らされた。
セロフィート
「 ふふふ…。
こうすれば仲良しに見えます♪ 」
マオ
「 ははは…………。
完全に子供扱いだな…… 」
オレはセロの膝に乗せられたままの状態で絵師に描かれる事になった。
絵師
「 ──お待たせ致しました。
完成しました 」
マオ
「 有り難う!
どんな感じに描きあがったんだろうな? 」
セロの膝の上から降りたオレは絵師から完成した絵を受け取った。
マオ
「 ヤバっ、上手いじゃん!!
セロ、この絵は立派な額に入れて馬車の中に飾ろうよ! 」
セロフィート
「 絵師さん、有り難う御座います。
此方は代金です 」
セロは布袋を出すと絵師に手渡す。
絵師
「 えっ!?
あの──、銀貨をこんなに?? 」
セロフィート
「 マオが喜んでますし。
マオ、行きましょうか 」
マオ
「 おぅ!
どんな額縁に入れようか? 」
セロフィート
「 額縁を選びに行くとしましょう 」
オレは素晴らしい絵を描いてくれた絵師に手を振った。
絵師
「 ………………はぁ……とんだ過保護な妖精だったなぁ……。
あんな美しい妖精は見た事がない……。
描き続けよう、あの妖精を──。
あの子は何処の貴族の息子なんだろう…… 」
──*──*──*── 飲食街
マオ
「 セロ、額縁を買うんじゃなかったのか? 」
セロフィート
「 額縁は砂糖菓子で作ります。
昼食にしましょう 」
マオ
「 砂糖菓子で額縁も作れちゃうなんて凄いな!
セロに任せるよ 」
セロフィート
「 ふふふ(////)
任されました♪ 」
マオ
「 《 飲食街 》って貴族や富裕層が利用する飲食店で高いんだろ?
高級料理か~~。
楽しみだな♪ 」
セロフィート
「 マオ、先ずは此処に入りましょう 」
マオ
「 此処って──、まるで高級ホテルみたいな外観だな。
如何にも高そうじゃん 」
セロフィート
「 問題ないです。
マオは好きなだけ食べてください。
テーブルマナーは覚えてます? 」
マオ
「 え゛っ…………テーブルマナー??
…………そうだよな……高級料理店だもんな……テーブルマナーは必須だよな……。
でもさ、≪ 大陸 ≫も時代も違うじゃんか。
≪ エルゼシア大陸 ≫と≪ クワルチンク大陸 ≫とじゃ、テーブルマナーも違うんじゃないのか? 」
セロフィート
「 テーブルマナーは基本同じです。
基本さえ出来ていれば後は臨機応変に応用するだけです 」
マオ
「 応用かぁ~~。
テーブルマナー関係無く食べれないかな? 」
セロフィート
「 マオ、これは抜き打ちテストです。
マオが王族として最低限の教養を忘れていない事を確認する為のテストだと思ってください 」
マオ
「 ひでぇ……。
楽しい昼食が出来ると思ったのにぃ~~!! 」
セロフィート
「 マオ、大袈裟過ぎです。
入りましょう 」
オレはセロに促されて、高級ホテル風の飲食店に入店した。
セロと一緒に何件もの飲食店を梯子をして、色んな料理を食べた。
どの飲食店も値段が高かったから、かなりの出費になると思う。
だけど、セロには大した事ではないみたいだ。
太っ腹なセロのお蔭で、オレのお腹は一杯だ。
セロと《 飲食街 》を出て歩いていると《 妖精市場 》の方から声が聞こえて来た。
マオ
「 《 妖精市場 》かぁ……。
久し振りだな。
騒がしいけど何か起きてるのかな? 」
セロフィート
「 女性が声を荒げてます。
マオ、野次馬してみます? 」
マオ
「 うん、何が起きてるか気になるし、一寸だけ覗いてみたいかな 」
セロフィート
「 はいはい。
では行くとしましょう 」
オレはセロと一緒に久し振りの《 妖精市場 》へ入った。
◎ 訂正しました。
布 ─→ 機
布屋 ─→ 機屋




