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星と推し活とそれから… 3

 METEORの推し友に会うまで、あと1日。

 来夢に付き合う土曜日の2日前、つまり、木曜日に会うらしい。

 来夢からは推し友に関することをわざわざ聞いてはいない。

 いや、聞くべき?でも聞いたところで、当日のお楽しみ〜! なんて言って、ハイテンションな上にもったいぶって詳細なんて教えないであろう来夢が容易に想像できる。

 よって、あえて私は当日に挑む覚悟を決めた。


 今日という日のラストに夜空を見上げ、一呼吸おいて大好きな星たちと交信する。

「今日もお疲れ様。明日もよろしくね! 私の精神安定剤たち〜」

 いつからなのだろう。

 こんなにも夜空の星たちに依存し始めたのは…ーー。

 そんなことを疑問に思っても、答えはすんなりと出てこない。

 ただ、キラキラに輝く星たちを鑑賞するという、日々のご褒美に癒されている。そんな趣味感覚として捉え、深くは考えない。

 だから、星の種類とか季節の星座とかを調べようという概念はないのだ。

 神秘的な美しさに魅了され、幸福感で満たされる。ただそれでいいのだから。

 頭の中には”勉強”なんてワードは微塵みじんもなく、癒され放題の星たちのことと、METEORの推し友のことでいっぱいだった。

 METEORの楽曲もいくつか聞いてみて、素晴らしく感動する楽曲に出会った。

 楽曲のイントロから惹きつけられて仕方がなかった。

 日々に疲れきった仲間たちが、それでも同じ道を一緒に歩いて行こうという前向きな歌詞。

 きっとそれは、日々の心の救いになってくれそうで、感涙せずにはいられなかった。躊躇ためらわずに、泣いてしまっていた。

 こんな自分はおかしい。あり得ない。

 偏見もはなはだしく、えて言わせていただくと、容姿重視のアイドルなんて、空っぽで陳腐ちんぷな歌詞の曲しか歌わないでしょ?そう思っていた。

 ところが、率直に言うと、ただただ恐れ入った。

 この時点ですっかり私は、METEORのとりこになっていた。

 もっとMETEORの歌詞の世界を深掘りしてみたくなった。

 ため息をつきたくなるほど沈んだ心の闇を、灰色という空模様で表現していたり、月という闇を照らす明るい存在が、心に明るい希望の光を染み渡らせるという前向きな表現力に魅了されていた。

 そして、その全体の描写の背景には、星がいっぱい浮かんでいる夜空が存在し、得体の知れない温かいものが否応なく私の心に染み込んでいき、救われた。

 それからというもの、私の意識はまったく別のものとなり、METEORに関心が向くきっかけとなった。

 当たり前のように認知されている顔の良さではなく、詩の世界にーー。

 夜のそよ風がカーテンをなびかせ、ベッドで居眠り中の私の全身を、優しくデリケートに触れていく。

 微かに残る意識の中で心地良さを感じつつ、私は完全に意識を手放した。

 途中、布団を掛けていなかったため、まだ起きるには早い薄暗い早朝から激しいくしゃみに襲われ、身を猫のように丸めた。

 その後、そのままの状態で再び二度寝に突入したのだった。


 その日の放課後、私は来夢と一緒に我が校にいるという”推し友”に会うことになっている。

 正直なところ、新たなる出会いに胸が躍った。

 これまでの人生で経験のないそんな慣れない感情に、どうしようもなく振り回されている。そう思った瞬間、自分の体の中の血液がサーッと引いていくのを実感する。


 …おかしくなってるよね。あの日から私。


 そんな思いとともに、冷静を取り戻そうと必死になる。普段の達観に似たような、いい意味で冷めている自分というアイデンティティを見失いそうで怖いと思った。

 今までもそこそこ仲が良かった来夢のお誘いを受けた日から、私は何かがおかしくなっていた。

 ある意味、難関を突破したような気分に浮かれているのかもしれない。

 そう、私はいつもの自分から脱皮したがっていたのだ。

 変化を恐れつつも、目の前の一瞬のチャンスに辛うじて飛びついてしまったのだ。


 推しメンーーそれを愛する者は、必ずしも…XXではないのだ。

 勝手な固定概念に打ちのめされる明日が、私を待ち受けていたーー。


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