十五発目 練習開始
とりあえず時間が欲しいです。
チュンチュン
チチッ、チッチチッ
「…………」
今の時間は城の庭に何羽かの小鳥が囀ずり『ツクツクホーシ、ツクツクホーシ』
小鳥が囀ず『ミーン、ミーン、ミー』
小鳥が『カナカナカナカナ』
…………。『逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ』
夏か。
こほん
小鳥が囀ずり、太陽の光がさっきまで庭を覆っていた暗闇を自身の光で明るく照らしている時間だ。
まあ、簡単に言えば今は朝、しかも早朝。
何故俺がこんなに朝早くに城の庭に居るかと言えば、大体今から約30分前の話になる。
/////////////
部屋に一人の少女がぐっすりと、それはもう気持ち良いくらい安眠の表情で熟睡している、起こすのを躊躇う程の寝相だったがそれを意に介せずに起こそうとする人物が一人いた。
「水よ、この者に零下の目覚めを『アクアボール』」
パシャ
「――――!!!」
「やっと起きたか馬鹿」
「何すんだ香!」
せっかく気持ち良く寝ていたのに。
と言うか、水をかけられたのは顔が濡れた事で分かるが何故辺りが濡れて無いのだろう。
「起きないお前が悪い
あと、お前を起こしたのは魔法だ
」
「だからと言って普通、冷水を頭にかけるか!?
あと魔法便利だな!!」
「私は普通に起こそうと約一時間程、頑張ったが?
後、魔法はコントロールが難しいからな、便利かと聞かれたら余り便利では無い」
香が微妙に疲れた顔をしている。
「うっ、そう言えば香。何か用なのか?」
こんなに朝早くに起こすからには何かしら用が有るのだろう。
て言うか無かったら二度寝する。
そこ、誤魔化し方下手とか言うな!気にしてるから。
「はあ。
私は、これから王に会ってくる。
一週間ほど自国の領地の視察に行っていたらしく、今日、漸くこの城に帰ってくるそうだからな。」
「なんと言うか大変だな王様も。
で、何で俺は起こされた?」
「私が王と会って居る間、お前には力を使いこなせる様に訓練してもらう」
「一人でか?」
少し不安になる。
なんせ、あの触手(?)を一撃で葬った威力だ
暴走や暴発したら大変だろう。
「大丈夫だ。きちんと講師は居る。私では無いがな」
香じや無いのか。
誰だろう?死神仲間か?
「安心しろ、お前も知ってる奴だ」
そう言って、香は笑いながらおもむろに俺に近付くと、手を一気に俺の身体の中に入れた。
「あ、う」
「もう少し奥か?」
そう言い、ズブズブと、腕の肘から先を全て俺の身体に入れてくる。
「ここら辺か?
うむ、いたな」
そう香が呟くと行きなり腕が引き抜かれ香の手の中に一体の和風の人形らしき物があった。
何それ?
まるで生きているかのような人形を見ていると。
ガタ
いきなり人形(?)が動いた。
ガタガタ
「香、何これ」
俺がそう聞くと、香は一瞬、何言ってるんだコイツ、みたいな顔をして直ぐに分かったのか、今度は吹き出す寸前の顔になった。
「ハッハッハ、お前それは本当に言ってるのか?」
「何を言ってるんだ?」
「酷いのじゃ主よ。妾を忘れたのか?」
香の手の上で器用にも泣き崩れる人形(?)
うん?よく人形(?)を見てみる。
着ているのは綺麗で動き易そうな着物に足元まである艶のある黒い髪。それと髪から生える一本の角。
何処かで見た。
と言うか、夢で見た。
「天か?」
「やっと分かったのじゃな」
嬉しそうに天が笑う。
すると香が聞いてきた。
「名前を付けたのか?」
「ああ、何か駄目だったか?」
「否、大丈夫だ。それどころか傑作だ。
あと、これがお前の講師だ」
香はそう言い、天をつまみ上げこちらに渡すと、後は頑張れと、言い扉の向こうへ消えた。
/////////////
「神力は魔法とは違い、想像力が全てじゃ。魔法は概ね人が持っている魔力の色に頼り、想像は大雑把で発動できるので構わんのじゃが、神力は色が無いのじゃ。無色じゃからしっかり細部まで想像できなければ世界の法則に消されるのじゃ。しかし、無色じゃからこそ様々な事をすることが出来るのじゃ」
天が肩の上で説明する。
今、俺がしているのはまず神力を感じる事だ。
まず自分の力を見てから練習方針を決めるらしい。
「…………」
精神統一。
まずは、邪心を消し、次に感情を消し、最後に心を消し無の境地に辿り着くまですると、自分の中の力が見える、らしい。
「…………」
全然見えない。
なんだか霞が掛かったかの様にボヤけて見えるが全体図が分からないが天に聞いたらそこまで分かるなら次にの段階まで進めるらしい。
「力が見えたなら今度は使う練習じゃな」
「天先生。どうするんですか?」
「見ているのじゃ『火よ』」
ボウ
おお、五メートル前位に火が現れた。
「まあこんなものじゃな。
主よ、やってみるのじゃ」
「うし、行くぞ。
『火よ』」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙が痛い。
「出ないな」
「主よ、しっかり想像しないと出ないのじゃよ?」
そう言い首を傾げる天。
ヤバい理性が崩壊する。
「主よ!?しっかりするのじや!」
おっと、駄目だ駄目だ。今はこっちに集中しないと。
火。
火。
火。
燃え盛る真っ赤な炎。
天に届かんばかりの真紅の炎!!
「『火よ』」
ゴウ
「出たな」
「出たのじや」
しっかり想像力したお蔭か火は出た。ただし15メートルの火柱が。
「て、やばい。
天、消せるか!?」
「なに容易いのじゃ『水柱』」
天がそう唱えると火柱の下から水柱が出て火柱を消した所で水柱が崩れ俺の顔にお湯がかかる。
「天?」
「なんじゃ?」
「結界ぽいの出来る?」
「出来るのじゃ」
「それじゃその中に入ってやろうか」
「その方が良さそうじゃな」
「さて遺言を聞こうか」
行きなりですか香サン。
「そうかそれが遺言かでは死ね」
待て話せば分かる、話せば分かる。
「問答無用」
ザク
ぐは。
バタン
「この世の悪はまた一つ減った」
死んで……た…まるか。
ザク
ぎや。
「しっかり馬鹿(作者)にはしっかり書かせるから心配はしなくていいぞ」
誰か助けて。
「行くぞ」
ズルズル、ズルズル
ギィ、バタン