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第3話:「これはゲームであり、試練でもある」

「ようこそ、そしてこんばんは。早速ですが、私は皆さんの時間を無駄にしないために有益なお話をしたいと思います。混乱しているでしょうし、状況をよく呑み込めていないのは分かります。ですが、どうか、チャンスを無駄にしないためにお話を聞いてください」

 真っ暗だった会場にスポットライトが差し出され、そこには男が立っていた。顔の半分を隠しているが、出ている口の部分だけでうさんくさそうだ。

 到底、日本人とは思えないような背の高さをしているが、言葉は流暢だ。

 一輝いっきはいつの間にか、この場所にいた。意識が少しあやふやな感じがするし、体にもうまく力が入らない。暗がりの中でさっと周りを見渡すが、かなりの人数がいそうだ。

「うふふ――グレイト。上出来ですよ、皆さん。チャンスは平等だと言われていますが、私はそう思いません。おそらく、ここにいる皆さんも同じ考えでしょう?」

 男はかなり上機嫌のようだ。状況を咀嚼していくと、きっと男は借金返済のためのイベントの主催者か何かだろう。家にスカウトしてきた男たちと同じような立場にいるのだろう。

「しかし、救済の道がないのは私の道理に反しています。いくら不平等な世の中だったとしても、少しぐらいは起死回生の余地があってもいいのではないでしょうか? そこで私たちは開催しましょう」

 そこで男は言葉を切った。

 スポットライトが消えた瞬間、あたり一帯が明るくなった。

少年刑事エージェントを選出する大イベント――トライアルの開催を宣言します」

 今から始まるのはトライアルと言うらしい。胡散臭い男はそのまま自己紹介をはじめ、自身のことを「司会者」だと名乗った。それ以上の説明をする気はないらしく、その場でターンすると話に戻った。

「第一試練から最終試練までの四つの試練を乗り越えたものには起死回生のチャンスとして、ジュブナイル・インターポールへの捜査官となることができます。その他にも副賞として、皆さん一人一人の願いを叶えられるようになっています」

 僕の副賞は家族の借金の満額返済だ。借金以外にも色々あるのだろう。僕とは違って、金には困っていないような綺麗な見た目をしたやつもいる。

「この会場には百人の皆さんがいらっしゃいますが、入賞できるのはたったの十人です。懸命・・に試練を乗り越えてほしいと私は切に願っています。説明はこれぐらいにして、質問はありますか?」

 まだ分からないことも多いが、たいていのことは教えてくれた。重要なルールについては試練の度に説明してくれるようなので、聞かなくても大丈夫だろう。

 前の方で手が上がった。

「禁止事項の中に争いごとや傷害についての説明がなかったのですが、命の保障はしてくれないのですか?」

「ええ、その通りです。私たちはあくまでもイベントを開催するだけです。これはゲームであり、そして同時に――試練でもあります。まさかとは思いますが、救済に一切のリスクがないと思っていたのですか?」

 質問した男は何も言えないという表情をしている。さすがに同情するが、司会者の言う通りだ。

「そんなの私たちにメリットがないではありませんか。あなた方は救済され、私たちは有能な人材を手に入れることができる。ウィンウィンな関係を築きたいと真に思っているのです」

「ウィンウィンな関係……」

 司会者側からすれば、利点も多いだろうが、このイベントの参加者の多くはハンディを持っているようなものだ。とても公平だとは思えない。

「それと最後に……この試練では、命を落とすこともあります。私たちが排除するような真似はしませんが、かといってそれを規制することもありません。捜査官となった時、一級の戦士として生き残る力がなければ意味がありませんから」

 納得するしかないだろう。そんなこんなしているうちにまた会場の照明が落とされる。

「第一試練は『ともだちゲーム』です。ルールは単純です。私たちが用意した裏切り者以外とお友達になればいいだけです。ここにいる百人のうち、二十人は裏切り者です。さあ、本当の友達になれるかな? 制限時間は二〇分。レディ・ファイト!」

 それと同時に明かりにももとに戻る。しかし、司会者の陽気な鼻歌が響き渡るだけで、誰ひとりとして動かない。配られたスマホには制限時間が映し出されている。

「ともだち」になれると思った相手のスマホの裏のQRコードを読み取り、結果次第では退場になる。裏切り者と繋がる可能性は二〇パーセントだ。どうやったら見抜けるのだろうか。

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