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第85話 おしまい

「師匠!大師匠!」

うるさいな。

せっかく西尾維新の新刊を読んでいるのに。

戯言シリーズ再開だぞ。

いーちゃんと友の、順調に捻くれて育った娘が主人公だぞ。

何気にいーちゃんは婿養子になってたか。

今、娘が哀川潤のコブラに轢かれて早速血塗れになったとこだぞ。 

相変わらず無駄なモノローグだらけで、ちっとも話が進まないぞ。


「それはわたくし達のお話と、どう違うのですか?」


あっちはアニメ化もされたプロの作品。

こっちは奇跡的に完結しかけてるアマチュアの戯言。


「なるほど。変な意味で、裏っ返しな作品なんですね。ここ。」

作品と言っていいのかどうか。

この作者は何作か小説を書いて、こうやってネットで公開もしてる小説もあるけど、実験と言うのも悍ましい手慰みなオナニー小説だ。これ。

いや、小説というより、自動書記だ。

誰の指令でこうなったんだか。


「いや、大師匠。」

だからなんだ。上泉信綱。

娘のサオリから一本でも取れたか?

「いえ、全く。」

まったく。サオリはまだ6歳だぞ。

成人のお前が負けてどうする。

だったら、サユリからは?

「かすりもしませんな。」

修行が足りんのう。ずずっ。

うん、ジェニーは紅茶の腕が上がったな。香りが良いな。

「畏れ入ります。あなたがくれる茶葉が良いんですよ。」

「お父さん。東野圭吾読み終わっちゃった。」

「あらあら、みどりさん。すっかり漢字をマスターしたわね。でしたら、ストランド誌を原書で取り寄せましょうか。ホームズはまだでしたよね。」

「…ジェニー師匠もみどり師匠も、異国の言葉を平気で操れますね。」

まぁ、ジェニーはそういう生まれだから。


で、なんのようだ。上泉信綱?ノブ?

「一応、拙者も武士の端くれでござるから、そう親しげな渾名をつけられてもですね!」

なんだいきなりサムライ口調を始めて。

ノブが嫌ならノッブで。

「上総介殿の未来の渾名です。それは。」


あれとも一時期設定が被りかけて、どうしようかなとか思ってたらさ、うちの話の方が勝手に軌道転換したので助かったよ。

ワイアット・アープが女人化した時はどうなるかと思った。


「と、とにかく。兎に角!」

「あ、ノブさん。それ夏目漱石だね。」

「みどりさん。夏目漱石は兎に角を多用しただけで、別に語源ではありませんよ。」


…本編中にそんな会話をしたなぁ。

どこでそんな会話をしたか、今更探すのも面倒くさいから調べないけど。

「お父さん。月が綺麗ですね。」

「あらあら、漱石繋がりでお父さんにプロポーズですか?いけませんよ。お父さんはわたくしとサユリお母さんのものですから。」

ジェニーさんさぁ、ニコニコ笑いながら青筋立てて、娘にヤキモチを妬いてどうする?

みどりもニコニコ笑いながら呪文詠唱の準備をしない!


「だ〜か〜らぁ〜。話が進みませんよ!大師匠!」

そのツッコミも懐かしいなぁ。

ユカリがよく、俺の服を引っ張って「パパ、何とかして。」ってねだられてたなぁ。

ほっぽらかしたけど。

あそこできちんと軌道修正しなかったから、物語がぐちゃぐちゃになったんだな。

反省反省。

「まぁ良いです。大師匠?一つお手合わせをば。」

だから俺は今、西尾維新をだね。

「問答無用!どりゃあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー、………あのー拙者の刀返してください。」

大上段に振りかぶって来たけどさあ、隙だらけ何だよね。

そういえばアフタヌーンを読まなくなって随分と久しいけど、大きく振りかぶってって何処まで話進んだ?

プレイボール2が残念な最後だったから、あっちはハッピーエンドになって欲しいなぁ。

などと思いつつ、あっそうだ。選抜も始まってたな、とか思いつつ。 

話せばわかる。バイ犬養。ポキッ。

「ああ!拙者の刀が、刀があ!」

いきなり切り掛かって来たノブの刀を、読んでいた西尾維新で挟んで折ってみた。

真剣、西尾維新取り。

弱い。弱いぞ。

お前弱いな。本当に日の本に名を残す剣豪か?

「い、一応。世間ではそう言う事になっているでござる。というか、この道場がおかしいのでござる!化け物しかおらんし、いつもそこらで遊んでる大師匠なら容易いかと思いきや、一番の化け物でござった。」

誰が化け物だよ!

「きゅう。」


まぁそう言う事だ。

全ての旅を終えて俺達は、サユリの故郷の近所、下総は松戸宿に居を構えた。

サムライ娘・サユリのリクエストで、剣法道場を作って日々の糧(の足し)にした。

そしたら、後の水戸街道とされる田舎道を旅する剣豪とやらが次から次へと道場破りに来たので、次から次へとサユリがボコボコにしまくった。

見所のある奴は、俺が面談の上、何人かを弟子にとった。

上泉信綱はその1人。

その他に伊藤一刀斎とか、千葉周作とかがいて、今日も今日とてサユリに伸されてる。

でも、ジェニーの作る飯が美味いと、逃げ出すここ無く、弟子兼食客になってたりしてる。

おかしい。

時間と空間を修正したはずなのに。

めちゃくちゃでやんの。

足利義輝まで弟子入り志願に来やがった。

確かに剣の腕は確かでも、こいつみたいに面倒くさいのはと、お帰り願った奴もいる。

テル(渾名)はあまりにしつこいから、西の空に放り投げた。今頃、朝倉屋敷で、明智光秀と一緒に茶でも啜っているだろう。

逆・平将門だ。うん。

宮本武蔵とか来たらどうしよう。

佐々木小次郎を連れてきたらどうしよう。


そんなある日のこと。

近所の鎮守・御嶽権現に、宗教にうるさいジェニーが挨拶に行きたいとねだられたので見物に行ったのさ。

クリスチャンが神社に参拝とかアレだけど、一応まだキリスト教伝来前の時代設定なのと、神様ならなんでも良かったらしい。

色々な宗教の神と直接交流したり、パーティーメンバーが神になったりと、色々あったし。俺達の中で唯一、神様達を敬っていたからね。


そしたら、祭神の日本武尊が現れて、この小さな社を何とかならないかと頼まれた。

お前が神様なんだから、自分で何とかしろよと言いたい。

野郎どうやら、俺の腰にある草薙の剣に引き寄せられて、顕現したらしい。


で、しょうがないから、うちの歌姫ジェニーが歌い踊って、村人や旅人から金を集めてちゃんとした神社に建て直した。

本人が、楽しい楽しいって言ってたからイイヤ。


金が動くと、当然、役人やら地元のチンピラやらが絡んで来たけど、俺が地面をぶん殴って谷を作って川を流してみたら、役場やら地元の親分やらが土下座して沢山寄付してくれたよ。別に脅してないよ。

ドラゴンちゃんがサービスで現れたり、雷を落として2~3人殺したり、水の神ゆえ川用の水源を作ったり、ついでに村娘を何人か拐かしたりしてないよ。

してないったらしてないよ。

うん、やっぱり神社の前には川がないとな。


まぁ、俺の背後でサユリがチンピラの1人を48箇所に八つ裂きにしたり、ジェニーが烏や鳩を操って役人を突付き殺したり、色々やってた訳だけど。

あと、俺の隣で日本武尊が権限して、光輝いたりしてたし。

ワタリと日本武尊が並んで草薙の剣を振り回してたら、そりゃねぇ。


祭神を背後に圧倒的暴力を見せつけた結果、たちまちお金が貯まったよ。

うんうん。信心深い事は良い事だ。

高木何とか言う、一帯を支配する殿様が一隊を率いて攻めて来たけど、一撃で俺が殺し尽くしたせいかもしれない。

残された死体を小金だか根木内だか、本拠地としている城に、ゴルフクラブで片っ端から打ち込んだせいかもしれない。

ドラコン賞!俺1人だけど。

なんか空堀が、飛んできた兵隊の死骸で埋まったとかなんとか。

慌てて降伏の特使を送って来たので、面白半分に米を1,000俵くらいお土産で持たせて帰した。

何も言ってこなくなった。

うん。それは正しい。

俺達はただ、のんびりと暮らしたいだけ。

邪魔する奴は殺し尽くす。

それが俺。


つうかまぁ、世界中の魔王やら悪魔やら妖怪やらをぶっ倒して来た俺らに、せいぜい室町末期の、まだ火縄銃すらない田舎侍が敵うわけ無いっての。


で、拝殿・本殿・秋葉社・神楽殿を備えた、狭い敷地には本格的な社殿が揃ったわけだ。

日本武尊は大喜びだ。


ジェニーはいつものように讃美歌を歌っているんだけど、宗教的に多岐都姫がOK出してだから、景行天皇の息子如きが反論できるはずもなく。

今でも夏の大例祭には、神楽殿でアメージンググレイスを歌う事が習わしになっちゃった。村人も合唱してるぞ。

日本武尊を祀る神社で。


そんな愉快な宿場町で、俺達はのんびり暮らしている。

やがて、それぞれの妻に、それぞれ娘が出来て、あいも変わらず女だらけの俺達だ。


現状の説明終わり。

うん。最終回っぽいね。


で、この狼藉を何とする?上泉信綱?

「お父さん、ノブなら気絶してるよ。」

ありゃま。死んだカブトムシみたいに両手丸めて泡吹いてるよ。

「あなたの気魂をぶつけられて意識を保てる人はいないでしょうしね。」


「水でもかければ大丈夫だよ。父上。」

道場からミニサユリがすっ飛んで来て、俺の背中に飛び付いた。

なんだサオリは、甘えん坊だな。 

「あ、ズルい。みどりも。」

前からはみどりに抱きつかれた。

こういうとこは、お前ら母親にそっくりだな。


「あら、サオリさん。お母さんはどうしたの?」

「お客さんと立ち会ってるよ。でも、お母さん負けそう。」

「え?サユリさんが負ける相手なんか存在するの?」

そりゃいるだろ。俺からはまだ、一本も取れないし。

それに。

俺には、奴が来た瞬間わかったぞ。

やっと来たか。

俺達のもう1人の娘が。


「きゅう。」

ほら、ぐるぐる目玉のサユリが首根っこ掴まれてやって来た。

「お久しぶりです。パパ。」

「「パパ?」」


まぁユカリだよね。

龍に勝てる人間なんか。

ましてや逆鱗を超えて神となった龍に勝てる人間なんかいやしない訳で。


「お父さんの隠し子?」

「でも、お母さん達よりおっぱい大きいよ。」

「でもお尻は小さい。」

「赤ちゃん産む時大変そうだね。」


「……唐突に話始めて止まらないのは、おかーさん達と同じなのね。」

人の話をまったく聞かなくなるとこまで同じだぞ。

紹介しとく。

そっちの馬鹿でかい黒髪がサユリの娘サオリ、こっちのちっちゃくて金髪がジェニーの娘みどりだ。

随分とかかったな。


「私は割と何とかなったんだよ。蛇神がね。いくら竜に変化したとはいえ、やっぱりおかーさんと切り離されてるから、なかなか龍神まで進化出来なかったんだ。」

未来から遡りゃ良いじゃねぇか。

「お姉様と違って、ユカリは空間は超えてもまだ時間は自由に超えられないです。」

いかんねえ。

そんなこっちゃ、次回作に出れないぞ。

「で、パパのお妾さんの竜人姫姉妹の子供達の力を借りました。パパの血と縁でおかーさんと繋がったら、一気に修行が進んだよ。今じゃ正式に龍神に昇華して、竜人の国を守ってる。」

そっか。

あいつらも元気にやってたっぽいな。


「え?お父さん、お妾さん居るの?」

「父上、ずっとサオリ達と暮らしてんに?」


時代と世界が違うからなぁ。

俺はちゃんと、あいつらを娶って、最後まで寄り添って、子供もきちんと育て結婚させて、孫が出来るところまで見届けた。

そこまで大体250年くらいかかったけど、サユリとジェニーの体感時間では、瞬きする間だよ。

しかも、深夜に全部終わらせたから、あいつらは何も知らない。

ま、それがワタリの仕事だから。


「という事でパパ。ユカリをお嫁さんにして下さい。」

どういうわけでだ?

今んとこ、嫁は余ってんだけど?

「ユカリにユカリと名付けて、300年も放置プレイはないです。ちゃんとお姉様にも許可もらいました。今後はワタリ・秋津慎吾の両翼として、未来永劫パパの元にいるんです。パパのご家族と、パパの娘さんを守るんです。」


だってさ。 

どうする?

「あら、わたくしは構いませんよ。せっかくユカリさんが来たなら、可愛がってあげないと。わたくし達は、あの旅を完遂した家族ですよ。」

「何だかわからないけど、お母様が良いなら、みどりは賛成だよ。」

「サオリは、父上に逆らう言葉は持ちません。母上も同じです。」

「きゅう」

メインヒロインが、最後の最後で伸びてて台詞がないのも前代未聞だろ。

ま、この小説、ずっと前代未聞の繰り返しだからいっか。


というわけで、この気が狂った様な馬鹿話も終わりだ。

元設定を全部投げ捨てて、ラストシーンは家族団欒だけ決めて、あとは全部風邪任せで書き綴ってきたけど、何とかなるもんだな。

ワタリの設定は、作者が割と気に入っているので、次回作にこのまま流用してる。

今度はまともな小説にしたいから、設定もプロットもしっかり組んで、それなりに書き進めている。

脱線しない事を見届けてから、公開になるだろう。それまでのお別れだ。


こんな馬鹿話に最後まで付き合ってくれてありがとう。

また次回作で会おう。



脱線しなくて、きちんとファンタジーとして成立する目処がついたらね。

………つくのかなあ。


     完

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