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第84話 ばらける

「パパ、パパ?」

ん?どうしたユカリさん。

身体中から光の粒が舞って、なんとも神々しいな。

「どうして。ユカリ、おかしいよ。消えちゃうよ。」

ああまぁそうだろうなぁ。


「どうして!どうして!」

慌てて義母のサユリが娘のユカリを抱きしめるけど、少しずつ少しずつユカリの身体が縮んでいく。

「慎吾様?慎吾様!ユカリを助けて。私達の娘を助けて…。」  

いや、助けるも助けないも無いんだが。

おい、竜神。

顕現しろ。

サユリの胸部から飛び出してきたのは、小さな蛇だった。


「つまり、この世界では、私の身は蛇に戻ると言う事ですか。」

さすがに歳月を重ねているだけのことはあるな。お前には察しがつくか。

「まぁ、それなりに。」


「旦那様、ご説明を。」

前回言っただろ。ロジックだ。

異世界異能バトル物として、この小説は大失敗だ。 

俺とドラゴンちゃんが果てしなく最強な上、仲間がみんなカンストクラスの強さだから、古今東西の魔王や魔神や悪魔やモンスターを引っ張り出してみたけど、これがまた弱い弱い。

結局、魔力や腕力ではなく、頭脳戦に落とし込むしかなかった。

「それが徐福、幻の仙人ですか。」

セリフ一つ無く退場したがな。


「不老長寿の力を手に入れた仙人が、人魚の肉を食べて不老長寿になった八尾比丘尼を取り込んだせいで、矛盾が発生した…。」

矛盾では無いんだ。

例えば、神が八尾比丘尼を取り込んだ場合、おそらく問題は発生しない。

“不老長寿“を背負うには、ベースとするには、「人間は弱すぎる」。

永遠を生きるワタリには、そのストレスを解消する為に様々な恩恵があるが、ただの人間では、ただ死なないだけ。腕力も財産も全ては自分の努力と才覚が必要になるが、そんなもんを持ち合わせている人間なんか一握り中の一握りだ。


ただ、不老長寿は不老不死は、神の能力に近い。そんな能力を制御出来ずに暴走させれば、時間も空間も滅茶苦茶になるだろうよ。

その特異点たる徐福をこの世界に於いて俺達は抹消した。


その結果。

世界は元に戻る。

時間も空間も、元に戻る。


俺達の旅の中で、ユカリはムーの民の神になった。ムーの民は蜥蜴から竜人に進化した。

だけどな。

現実世界に於いて、ムー大陸は物理的に存在しないんだ。J・チャーチワードが語った物語はただのSFなんだ。


「でも、でも。ユカリはここにいるよ!」

物理的に存在しなくとも、並行世界に存在する。インチキ量子学の部類に入るんだが、そんなインチキでも、それを認めれば、確認出来れば、観察出来れば、その存在は確立する。

そんな事が出来る存在が、ここには3人いるだろ。

すなわち、日本神の多岐都姫。

究極の龍神ドラゴンちゃん。

そしてワタリの俺だ。


そして俺とサユリは、ユカリが治める竜人の里を既に旅している。別世界に於いて、ユカリと蛇神と竜人達の存在、その世界は既に確定している。

だから今は、ユカリと蛇神は元の世界に戻るんだ。

この世界に、この時空に存在する「理由」が無いからな。


それだけの事だ。


「パパ、おかーさん、ジェニーお母様。また逢えるのかなぁ?ユカリ、また逢いたいよう。」

「旦那様?」

そうだなぁ。

確か、竜の里には、俺の許嫁姉妹がいるんだっけ。貞操の一つも貰いに行かないとな。(伏線回収伏線回収)

いずれにしても、多分俺はいつかユカリ達の世界に行くよ。

だから俺とは逢える。

うち合わせ嫁ーズにまた逢えるかどうかはユカリ次第だ。

「ユカリ次第……。」

そもそもあの世界の時間軸がわからん。

今、この世界のこの時間より、過去なのか現在なのか、未来なのか。

ウルド・スクルド・ベルダンディも居ないしな。

ユカリの能力も把握し切ってない。


ただ。

うちのドラゴンちゃんを見ればわかる通り、逆鱗を超えた龍は、「時間も空間も容易く飛び越える」。

「うむ。」

ドラゴンちゃん、割といいところなんだから、おっぱいを俺の頭に乗せて遊ばないように。

「精進せよ、我が妹に、新たる竜神よ。若き竜は龍となり、古き蛇は竜となった。ならば龍は猛き龍に、竜は世界の治る龍ともなろうぞ。」

「…それは、つまり…。」

サユリとジェニーに、ユカリが再開出来るかどうかはユカリ次第って事だ。


「指切りしましょう指切り。」

「指切り?」

「指切りというのはね、約束・プロミスを小指を交わす事で契約とする、サユリおかーさんの国の素敵な風習ですよ。」


「「「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます。指切った!」」」


因みに俺は指切りに加わっていない。 

何故なら、俺はユカリにいつでも逢いに行けるし、行くつもりだからだ。

ドラゴンちゃんも何も言わないけど、あの様子じゃ、時々様子を見に行くのだろう。



「儂らはそろそろ行くぞ。八尾比丘尼が眠ってもうた。

幼女を胸に抱いた多岐都姫は、右手を空に差し出した。途端に八咫烏は金色の光に包まれて、あー巨大化した。

何?国際映画社的な?アクロバンチかバクシンガーか。

「せめて神の力と行ってくれんか。色々片付いたのに、うちの母上が天の岩戸に篭って出てこんのじゃ。」

会いに行った時は、引き篭もり生活を満喫してだからな。あの神様。

「んで、呼びに来たから行ってくる。」

行ってくるは良いが、空に浮かぶ巨大な女性器はなんだ?毛も無くてピンクで綺麗だけど。

「ありゃアメノウズメじゃ。」

…たしかに、アメノウズメはストリッパーの祖とか、芸人の祖とか、記紀でも酷い扱いされてるけど!

とうとう◯ンコにされちゃったか。

相当神様を乱雑に扱って来た話だけど、ここまで不敬な事書いて、バチ当たっても知らんぞ。

「天照皇大神を引き篭もりにした段階で、バチが当たるならさっさと当てとるわ。」

かもねー。


「じゃあの、小鳥となって、小鴉と共にする旅は楽しかったぞ。今度は高天原に来るが良い。歓迎するぞ。」

遠慮しときます。

って言っても、ワタリの仕事が入ったら行かざるを得ないけどさ。

「うむ。上手い酒を酌み交わそうぞ。待っとる!」

それだけ言うと、多岐都姫は八咫烏に跨り、八尾比丘尼を抱いて、アメノウズメの女陰に飛び込んで行った。


…ああまぁ。アレも一種の子宝信仰と、世界再生という事で。

「誰が上手い事を言えと。」

そうは言うがな。

序盤でそうそうに破綻した物語を、キャラクター達が更に滅茶苦茶にしときながら、それでもなんとか形になったから、そんな事も言いたくもなるわ。


物語の修正を諦めて、ラストシーンだけ決めて、後はダラダラ好き放題書いてただけなのに、物語の方から勝手に収束し始めたんだぜ。

これはアレだな。

別の意味で言霊がなんとかしてくれたんだろう。

クリエイターは、失敗しても、諦めなければなんとかなるって事だな。

「その結果が糞ゲーとかC級映画になると。」

うっさい。蛇はさっさと元の世界に戻れ。

「私は最後まで不遇な扱いですね。」


異世界の異形のモンスターが日本神話の八岐大蛇になって、竜神になって、最後は龍になると暗示してんだぞ。

お前実は、うちのパーティの出世頭だ。

「おおそういえば、でも出番少なかった。」

ユカリとドラゴンちゃんの下位互換だから、しゃんあんめい。

お前もさっさと修行を積んで、ユカリに取って代われ。そうすればユカリが自由になる。


「たしかに!」

わぁサユリが食いついた。

「竜神よ。秋津サユリの命を伝えます。修行を積み竜人達の絶対神になりなさい。」

「御意。」

ぎょいじゃねぇよ。無茶すんなよ。

一応、お前邪神の部類なんだからな。

「何、やらかしたらアタシがサクッと殺しに行くから。」

「姐さん、それやめて。怖い怖い。」

「ならさっさと帰るぞ。おいユカリ。アタシが案内してやる。空間を迷ったら探すの面倒だからな。ついでにお前らを少し鍛えてやる。」

「お、お姉様。アナスタシアちゃんは放置ですか?」

「ふっふっふっふ。ユカリ、その為の時間転移能力だ。アタシが複数存在しなければ、アタシはいつでも任意の時間に行けるんだ。」


あ、そのパラドックス使えるな。

次回作で早速使おう。


「では、その時はアタシがまた来よう。さらばだ!」


ユカリと蛇神を両手で掴んで、ドラゴンちゃんはバッサバッサと飛び出して行った。

…ユカリと蛇神の悲鳴が聞こえた様な気がしたけど、ま、いっか。


「ユカリさんもピヨちゃんも八咫さんも行ってしまって、わたくし達だけになってしまいましたね。」

「なんか寂しいです。」

「そういえば旦那様?わたくしとサユリさんは生きている、生きていた時間と国が異なりますが、問題は無いんですか?」


その為の夫婦生活だぞ。

その為の中出しだぞ。


お前らは、俺の妻として、俺の家族として、血と魂と子宮に、俺を染み込ませてあるんだよ。

お前らが愛想を尽かさなければ、お前らは生涯、俺の伴侶だ。


ついてくるか?

「勿論!師匠慎吾様!」

「王家を、姫を捨てて、わたくしはとても幸せなんです。それは旦那様が下さった幸せです!だから、わたくしの全力を持って、“あなた“と、わたくし達の子供を大切にする所存ですよ。」


そうか。

なら、それで良い。


黙って俺について来い!

「はい!」



やれやれ。

やっとここまできたか。

んじゃ、次回最終回。じゃあね。

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