表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/85

第81話 八尾比丘尼

八尾比丘尼。


人魚の肉を食べて、不老不死になった女。

いや、不老とは概念が少し違うらしい。

伝承の中には、普通の女性として、普通に結婚し、普通に年老い、配偶者の死を見送ると髪を落とし、尼僧になるもやがて若返り、普通にまた結婚してを繰り返した。とも言われている。

(子供は出来なかったのだろうか?)


どちらにせよ、彼女は「被害者」だ。

人魚の肉を食べたのも、騙されてとか、間違えてとか、多動的な事が原因との伝承もある。

 

『ただの女が死ねないって、どれだけ孤独で、どれだけ寂しい生活を送っているんだろう』


徳川家康の孫・千姫は、豊臣秀頼が大阪夏の陣で腹を切った後、将軍の娘として政略結婚の道具となったが、一説では江戸の屋敷に半隠棲し、窓から通り過ぎる若い武士を引き込んでは、淫事に励んだとも言われる。


それほど、「孤独」と言うものは、人の精神に影響を及ぼす。

影響を及ぼさないのは、最初から壊れられない神(或いは最初から壊れている神)と、“そうならない様に“ありとあらゆる欲望をノーリスクで解消できるワタリだけだ。


そして。

「不死」と言うものは厄介だ。

あぁいや、「退治」するだけなら、なんの苦労もない。

「不死」はあくまでも「不死」が居る世界でだけ通用する「理」(ことわり)だからだ。

ぶっちゃけちまえば、そいつが所属する世界を消滅させちまえはいい。

もっと絞り込むならば、そいつが所属する惑星を、そいつが記憶する土地を消滅させるだけで済む。

それなら、うちのドラゴンちゃんが鼻唄混じりで、ちゃっちゃと終わらせられる。


もっともっと絞り込むなら、俺がやれば良い。

前にもどこかでやったけど、重力魔神に原子レベルまで圧縮圧迫させて、ミニミニブラックホールにしちまえば、あらまぁ、環境に優しい妖怪退治ですわ。

あとはブラックホールを宇宙にでも放り投げればほら。

環境にうっさいグレ◯嬢も「よくもそんな事を!」って怒ったりしないでしょう。

(グレ◯嬢をモデルにしたらぶどーるが販売されていて、いわゆるマニアックな変態プレイをすると、そう怒り出す機能が付いているとかいないとか。人間の欲望って馬鹿だよなぁ)


でも。

日本神話に於いて、かなりの上級神である多岐都姫が、ワタリの俺に頭を下げた。


「奴を殺さないでくれ。」

と。


「奴は確かに元はただの娘じゃ。長者の娘とか、神職・仏門の娘と言われる事もあるが、彼奴は漁師の娘。そして、儂の元で尺解として成した娘じゃ。」


………つまりなんだ?

ラスボスはお前の弟子なのか?


まぁ、ゲームの一つも探せば、そんなオチも有るかもしれないけどさぁ。

安直じゃね?


「彼奴はの。やはり1人なんじゃよ。世界で1人。この世で1人。どんなに愛した男も、どんなに愛してくれた男も。所詮は時と共に去っていく。

「だから彼奴は祈った。男と暮らさん限りは老けんからのぅ。死ぬ事も出来ん彼奴はとにかく祈った。祈って祈って祈って祈って祈った。仕舞いには、自分が何を祈っているのか分からなくなっていたが、それでも彼奴は祈った。

「彼奴は寺も神社も、地蔵も磐座も、問わず祈った。やがて自分が何をしているのかも分からなくなり、彷徨い、泣き、喚き、そして彷徨い、辿り付いた場所が宗像神社の末社じゃ。」


宗像神社。

確か多岐都姫は、天照皇大神と素戔嗚命から生まれた三姉妹の末娘。

日本神話に言う、宗像三姉妹だ。


「たまたま儂が、そのこしゃまっくれた末社で休んどった。儂は神無月の仕事を終え、里に帰る途中だったんじゃよ。」


里というのは、多分、福岡県宗像市だろうな。


「で、壊れかけた八尾比丘尼を拾い、育てた。…200年くらいかけたかの。無事、彼奴は正気を取り戻した。生気を取り戻した。そして精気と性器を捨てた。別に洒落じゃない。彼奴は人間を捨てた。人間の欲を捨てた。人間の身体を捨てた。尺解になった。神の、神気を身に纏った。」


それだけ言うと、多岐都姫は黙った。

黙ったと言うよりも、喋れなくなった。


ジェニーがそっと多岐都姫を抱きしめた。

イギリス人の少女に抱きしめられる日本の神様と言うのも珍しい光景なんだけど、それを突っ込むには、空気が許されなかった。


天照皇大神が3女、多岐都姫が泣いている。

多岐都姫は経産婦でもある。

日本神話に於いて、2人の子を産んでいる。(そのうち1人が恵比寿様と言うのは内緒…にする必要もないか。古事記か日本書紀に書いてある)

自らが腹を痛めて産んだ子ではなく、たまたま拾った人外と化した1人の女の為に泣いている。


ジェニーが多岐都姫の長い髪を静かに撫でている。

12歳の少女の前には、神様もただの女の子だった。


「さてよ、我が主人。どうするかね?」

ん?

とりあえず、先ずやる事は決まってんだろ。

「そこの地元神の話じゃ、奴は仙人に類する存在になったようじゃが、ただの人間だった奴にどこまで期待出来る?」


「ひっく、…それならば…ひっく…彼奴の核は…ひっく、か、変わらん!…ひっく。彼奴の核が崩壊したなら、儂には判るから、ひっく。」


あーあー。

いい歳して号泣したもんだから、肝心なとこで締まりやしない。


「……どういうこった?我が主人よ。」

そうだな。

例えば、「神の欠片」を体内に宿したとか、魂に溶かしたとか、そんなこっちゃねぇか?


「……ひっく。当たりじゃ。彼奴は神に敵する者どもには弱いからの。彼奴の肉体を食すれば、不老不死になれる。そう判断する輩が居ってもおかしくは無い。ひっく…実際のところか弱い人間にはそんな効力もあるだろうが、怪異どもにはむしろ猛毒と化す。その為の尺解化じゃ。」

「我が主人、この泣き虫が何言ってるのか、さっぱり理解出来ん。」

うちのドラゴンちゃんは、やっぱりドラゴンちゃんだった。


簡単に言やぁ、可愛がってる八尾比丘尼に悪い虫が付かないように、蚊取り線香を腰につけたんだ。


八尾比丘尼は、宗像の多岐都姫の配下に入った。

八尾比丘尼に害なす者は、多岐都姫の名において成敗する。

その覚悟はあるか?


と、宣言したんだ。


「悪い虫も何も、何人もの男と夫婦生活を送って来たんだろ。今更じゃねぇか?」

あぁほら、亭主が死んだら若返るんだろ。

だったら、膜も新品に再生するのかもしれない。

「えー。再生すんのおー。またあんな痛い思いすんのおー?アタシやだ。」

性のプロフェッショナルドラゴンが、今更何言ってんの?

「アタシの膜を破ったのはお前じゃぞ、我が主人!」

あれ?あの時、初めてだったんだ。

「まったく、初めてをやって、初めて気をやられたから、お主に付き従おうと決めたのに。」

つうか、お前、一人称がアタシだったっけ?


「作者の実生活が忙しいのか知らんが、更新が伸び伸びになってて、自分で自分の設定忘れたわい。最終回までのプロットはもう出来上がってるのに、相変わらず書かねえし、書き始めたら書き始めたで、ちっとも話が先に進まねえし。」


まぁ、それもウチの持ち味と言う事で。


「だったら、あららぎさんとこの小ちゃい方の妹は人間じゃなく怪異の変幻らしいけど、傷が治る設定なので、膜はどうなるんだろうとかの考察を始めようとするなよ。」

何故わかったし?

「儂を誰だと思っておる。我が主人の忠実なるエンシェントドラゴンじゃ!」

あ、一人称が儂になった。

「…こんなノリも懐かしいの。2人で旅していた頃は、毎日こうじゃった。」

いや、今もまったく同じなんだが。


「さて、ならば儂のやる事は一つじゃな。…それとも儂が残って、我が主人が行った方がいいか?」

「みずち」だろ。

はっきり言って、うちのお嫁さんだけでオーバーキルだぞ。

「前から言おうと思っとったが、嫁御にしても育て過ぎじゃ。ユカリだってお主の側にいたから逆鱗を乗り越えたんじゃろ?」

そもそも“お前がそうだった“って事を忘れるな。

「ふふふ。そうじゃったな。馬鹿なドラゴンに道を示し、育ててくれたのは、我が主人じゃった。」

まぁ、連中ならサユリの使い魔だけで充分だ。

お前はお前の仕事をしろ。


「承知」 

それだけ言うと、ドラゴンちゃんは飛び立って行った。


やれやれ。

これはこれで良し。

「慎吾様。何がどうなっているんですか?龍と何やら乳繰り合っていた様にしか見えませんでしたけど。」

あれが、ドラゴンちゃんの本質なんだよ。


エンシェントドラゴンは強すぎる故に1人。

エンシェントドラゴンは強すぎる故に孤独。


「…ユカリは1人じゃないよ。パパが居ておかーさんが居て、ジェニーお母さんも居る。」

「何故私がおかーさんで、ジェニーがお母さんなのか、1時間くらい問いただしてていいかしら?」

そこの馬鹿親娘。

戯れ合う前に、ちょっと仕事しろ。


「誰が馬鹿親娘ですか!」

お前ら。

「即答です?」

「さっき、お姉様が言ってた奴だね。おかーさんと2人で出るね?」

うんにゃ。

例によって「殺すな」だろ?多岐都姫。


「神気が出ている。お主の言う“みずち“だとしたら、神として殺す訳にはいかん。ひっく。」

まだ泣き止んでなかったのかよ。


と言う事で、破壊しか出来ないハカイダー親娘に出番は無い。

「なんでキカイダー01のハカイダーはあんなんなっちゃったの?」

「でも、あの人キカイダーの頃からあんな感じでしたよ。白骨ムササビがキカイダーを倒したらやさぐれちゃったし。」

「キカイダー01の池田さんの証言で、伴さんにお持ち帰りされたい女優が楽屋の前をウロウロしていたのに、もうおじさんだった池田さんは全然モテなかったとか。」

「でもビジンダーを演じていた志穂美のエッちゃんは、池田さんを警戒する千葉ちゃんががっちりガードしていたらしいわよ。かー!」

「それ、関根勤がする千葉ちゃんのモノマネだね。」

「直撃!地獄拳に出てた時の千葉ちゃんです。」


「…ねぇパパ。ほんのついさっきまで、神様が泣いていたり、パパとお姉様が意味深な会話をしていた筈なのに。たちまちいつものユカリ達に戻ったよ。」

ドラゴンちゃんに遠慮していたんだろ。

サユリ達にとってみたら、あいつは普通に畏怖の対象だし。

まぁドラゴンちゃんも普通の女の子の面もある。

俺相手だと、ああなるんだ。

「えぇと、結構緊迫した場面になる伏線が張られて…無いね。読み返してみたら。」

だから俺達が強くなりすぎたの。

俺の能力が二度目は使えないとか、

敵は殺しちゃいけないとか、

一応幾つかのストレスを話にかけてみたけど、俺達キャラクターじゃなくて、ストーリー自体がストレスを跳ね返しちゃった。

「どんなストーリーで、どんな世界なの?それ。」

キャラクターが暴走を始めるってのはよくあるけど、このお話はストーリーと世界が暴走を始めちゃった。

そりゃ、物語も破綻するわ。

作者だって、物語の方が好き勝手に動いている世界の話なんか書けないだろ。


もっと、ゆったり穏やかな世界で狸を可愛がる話を書きたがるさ。

プロットが完全に固まっている筈なのに、よほど手綱を絞らないとプロットが崩壊するからな。

「なんでそんな話書き出したんだろ。読まされる方も迷惑だと思う。」

ねぇ。


さて。

じゃあ今回も話を締めるか。

サユリ!…サユリ?

えーと。

何故サユリは竜骨刀に口つけて、ジェニーは頭抱えてふらふらしてるの?


「「ギルの笛ごっこです!」」

…君らは昭和の小学2年男子か?

あと、スキル的には音楽魔法を使うジェニーがギル役だと思う。

「わたくしは歌い手なので、楽器が弾けないので。」

ああ成る程。そういやそうか。


「モンキーズで言うなら、デイビー・ジョーンズです。」

たしかにあの人は、打楽器専門だったけど。


「パパ、もう4,500字を越えちゃった。前半悪ふざけして、後半に申し訳程度に無双するのがユカリ達でしょ。」

ユカリさんまでメタ発言すると、まともな人が残らないんだけど。

あぁそういや、八咫烏どうした?

あいつやんすキャラだけど、発言は至ってまともだぞ。

あいつ今回、喋ってないだろ。


「最初に書いた時は、八尾比丘尼の解説をしていた辺りで一回喋ったんですけどね。結構シビアなシーンだったんで削られたんでヤンスよ。」

お前までメタ発言か。

あと、思い出した様に語尾にヤンスをつけるな。

「実際、あっしは神話でもパシリですからね。」

…俺はメッセンジャーだと思ってだけど?

「その筈だったんですがね。雇い主の天照様と音信不通になりました。」

おいおい。

ここまで来て、神界だか、天岩戸だかに異変発生か。

俺はさっさとこの物語を終わらせて、まともなファンタジーに出たいんだ。

一応、2話まで書き上げてるんだぜ。

「どうせこの作者が書くファンタジーなんか途中で滅茶苦茶になりますよ。現実世界を舞台にした、少し不思議な話だと破綻しないできちんと完結するんですけどねぇ。」


それは作者の想像力や構成力に問題があるんじゃ無いか?

「この話に出てる限り、想像力は駄目な人の域に達してませんかね。構成なんか最初から放棄してませんか?ほら、今さっき後半で無双する無双するって書いてて、ちっとも無双し始めない。」


一応、敵も書いてあるんだけどな。

本当に文字数多すぎだ。 

あぁもう。ここから一戦始めたら、もう2,000文字は必要じゃん。

やめやめ。

いつアップすっか解らんけど、次回へ続く。 


「こんな、しっちゃかめっちゃかな引きも無いですな。」

別にうちなら珍しく無いぞ。

あとお前、もう少し漢字で喋れ。

平仮名ばっかりで読みにくいぞ。

「それこそ作者に言って下さい。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ