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第80話 件

人間の顔に牛の身体。

俗に言う「くだん」は予言の妖怪である。


人に似た外見ながら、全身毛で覆われた身体。

俗に言う「さとり」は、心を読む妖怪である。


全身を鱗に覆われ、髭と角を生やし宝玉を持つ身体。

俗に言う、「ユカリとドラゴンちゃん」は水の神である。

    

多岐都姫と八咫烏を無事(どうにかなるとか最初から思ってないけど)回収した俺たちは、ユカリの気配を辿り、芒流れる荒野へとやって来た。

そこでは件と覚と、ユカリとドラゴンちゃんが睨みあっていた。

4者共、ピクリとも動かない。

むう。結構な緊迫感だ。


さて、この緊迫状態から外れていいのは、と。うちの娘だけだな。


ユカリさん。こっち来て説明しなさい。


「多分、覚がユカリ達の思考を読んで、件がユカリ達に不利な予言をしようとしたけど。

ユカリとドラゴンちゃんが思考をシャットアウトして、ドラゴンちゃんが件の予言をすっ飛ばすひと暴れをしたから、妖怪コンビが固まったところに、怪異として最強レベルの龍がガンを飛ばしたんで、震え上がった。

くらいかね。」


「パパはユカリ達をどっかから見てたの?」

見てないけど、ユカリは娘だし、ドラゴンちゃんとも付き合いが古いから、行動に想像はつくし、考えてる事も、考えてた事もわかるさ。

それに、正面の山に丸くてデカい穴が開いてるのは、ドラゴンちゃんの仕業だろ、アレ。

ドラゴン姉妹との一心同体少女隊具合は、うちの嫁ーズよりよっぽど深いぞ。

少女隊はあれだ。引田天功の娘がいたアイドルグループだ。大金かけて大失敗した伝説的グループだ。


「まぁまぁなんて事でしょう。正妻にして愛妻にして一番弟子で愛弟子の私より関係が深いとは許し難きお言葉ですよう。」


我が愛妻サユリに問う。我が家の姓は?

あ、言い直すか。

問おう。あなたは私の愛妻か?


「はい?…ええと。しまった。慎吾様!何という卑怯な手を!早く読み直さないと。何話くらいだっけ。あと、セイバーと私って微妙にキャラ被りしてるからごめんなさいです。」


剣士と食いしん坊と料理下手くらいしか被ってないがな。


俺はいつまで経っても嫁入り先の家名を覚えない、お前の愛情の薄さと脳みそのツルツル具合が残念だぞ。

「待って。待ってください。私の脳みそに皺が無いのはともかく、愛情を疑われてはたまりません!まるで慎吾様のちんちんが目当ての女みたいじゃないですか!」

お前、物語の最終盤にしてとんでもねぇ事言い出しやがるか。

「私の身体は全て慎吾様向けにカスタマイズされ切ってますから。今更、そこら辺の征夷大将軍如きには私の身体は反応しませんよ。」

知らんがな。

「知らないとは言わせませんよ。私の身体の性感帯を隅から隅まで開発したのは慎吾様です。腋の下から腋にかけて、竹刀で突かれるだけで腰が抜けてしまう身体にしたのは誰ですか!」

知らんがな…とは言えんな。

あぁまぁ、じゃあ今晩はそこを重点化に攻めると言う事で。

「はいはい、全部お許ししますよう。」


「お主ら、ほんと仲良いな。」

一応、俺は自分の女は大切にしてるので。

てか、なんでピヨちゃんは羨ましいそうなんだ?あんた人妻で母親だろ。

「うむ。儂ら神族はどうにも気が多くてな。添い遂げる神っておるかのう。」

伊弉諾は一応そうだろ。

伊奘冉が死んで、なんやかんやあった前までは。

「うふふ。なんだかお主なら、嫁御が黄泉に落ちても、黄泉比良坂で普通に夫婦生活を送りそうじゃ。」

さすがに死んだ嫁をあの世まで追いかける程、立派な男じゃないぞ。行けるけど。

「行けんのかい!」

けどさ、お前らと違って、人は老いる。疲れ果てる。吸血鬼なんか、たかだか数百年生きただけで死を望む。自死する。

人間の死霊・魂も同じだ。

いわゆる幽霊だって、100年も経てば擦り減る。どれだけ深い怨みを抱こうと、時の経過には勝てないんだよ。


何百年経とうと正気を保っていられるのは、「神」と「ワタリ」しかいないんだよ。


「西洋龍もそうかえ?」

西洋龍って。

うちのドラゴンちゃん達の事か?

龍ってのは、最初から完全生物として誕生するからなぁ。精神がすり減るって事ないんじゃない?

うちのドラゴンちゃんやユカリが成長したのは、俺との絡みで神性を得たからであって、何より本人が成長を望んだからであって。

まぁ、ドラゴンちゃんは「性長」だけど。


で、サユリは両の頬っぺたに手を当てて「いやんいやん」と自分の世界に入り出した訳だが、ジェニーさん?お前さんは件と覚の周りにブルーシートを敷いて何してんの?


「ほら、この方達が凄い汗かいてるので。切り傷・打ち身・捻挫に効きそうなのです。」

筑波山か!

「ガマはガマでも、しろくのガーマー。」

「でゅーわー!」

八咫烏まで歌わないの。コーラスしないの。

「だって旦那。第二奥様の推測は割と当たりですぜ。怪異の体液は、うまく調剤すれば人間には結構な効能が見込めます。しかもここには神がゴロゴロ居ますから、更に副作用を抑えた上で薬効が上昇するかと。」

「売れは儲かるかもしれません。」

…ここまで80話費やしてきて、俺たちが金に困った描写は1行たりとて無いと思うけどなぁ。ジェニー。何か欲しいの?ひもじいの?

おじちゃんがなんでも買ってあげるよ?

代わりにいやらしい事もたくさんするけど。


「よく考えようよ。お金は大事だよん。」


あ、こら。危ない台詞を吐くんじゃないの。

「節もつけてないし、語尾を変えてるから平気ですよ。」

個人的には、そんな中途半端に古いCMを知ってるジェニーが気にかかるんだけど。

「今回の話を書いている時に、作者様が鼻歌で歌ってましたよ。保険だか預金だかが満期になって、安い自動車一台分くらいなら新車で買える臨時収入があったとかで、貯金しようか何か買おうか投資しようか迷ってるんだそうです。」


だから今回、更新が遅れてるのか。

やめとけって。

今の車、去年の夏に車検通したばかりだろ。

貯金しろ貯金。今別に欲しいものもないだろう。今朝がた冷えたから、ヒートテックを買ってみようとか思ってるだけだろ。

考えてみたら、近所にあったユニ◯ロもG.◯も撤退してるじゃん。何処にあったかな。

ああ、車だして国道沿いのショッピングモールに行かないと。面倒くさいなぁ。

密林(懐かしい隠語)で似た商品買ってポカポカしとけ。ポカポカを片仮名で書いたのは、ハライチに対する配慮だぞ。知らんけど。


「なのでわたくしも、一つ貯金でもしてみようかと。作者もすなる貯金といふものを創作キャラもしてみむとてするなり。」

土佐日記ですか?紀貫之ですか?

ジェニーさん、最近すっかり所帯染みて来てるけど、あんたイギリス初代女王ジェーン・グレイ!オカネモチ!まだローティーン。貨幣経済があるかどうかもわからない世界をずっと旅して来たけど、必要なものは、俺のワタリの力を、って言うか、俺との身体の結びつきで得た「縁」を使って、あなた勝手に俺の知識から色々引き出してるの。ぼくドラえもん!(CV:富田耕生)


「でもそろそろ、物語が終わってわたくしは姉さんと、旦那様の妻妾となり、引退でしょう?生まれくる息子・シンスケにはお金の大切さを知ってもらわないといけません。」

シンスケってのは、ジェニーが妄想してる俺との子供か?

…その名前はなぁ。

「吉本的には、シンゴだって厄介な名前ですよ。」

吉本的とかゆーな。


「ねぇパパ。例によって2,000文字過ぎても、物語が一切進んで無いんだけど。これ、ユカリが睨めっこから離脱した意味あるのかな?」

さっきのアレ、睨めっこかい。

覚と件は死を覚悟してるぞ、アレは。  

で、ええとなんだっけ。

サユリの腋の下で貯金すんだっけ。


「それだとカネゴンみたいですね。」

「あれ、アフレコの音調整に失敗したのか、特に主人公の声が浮いてますね。」

「はせさん治みたいな声ね。」

「あの人、はせさん治じゃなくて、ググったら、巨人の星で、金田正一のお母さんの声もしてました。」

「金尽くしですねぇ。」


ジェニーに言われて俺もググってみた。(頭が残念なサユリはデバイス関係が全く使えないので、ユカリに習っている。お婆ちゃんのスマホ教室かよ)

はせさん治って、一休さんにもレギュラーで出演してたからクレジットでよく見てたけど、人の名前だとは思わなかったなぁ。

あ、この人、3代目江戸屋猫八師匠の弟子だ。

そういえばこないだ、猫八師匠の孫が猫八を継ぐってニュースになってたなあ。

ゲーム王国で司会していたお父さんは、いつまで経っても江戸屋子猫の印象が抜けないぞ。

というか、お父さんも亡くなってたんだ。

真打ち競演(説明しないのでわからない奴はググれ)で良く聴いたのにな。

なんか寂しいな。


さて。

進行ので全てを諦めたユカリさんが、ジェニーが集めた体液を龍の力でデトックスし始めたので(龍の力ってなんだよ作者。もう少し設定を煮詰めてから書け。商業出版じゃないからって手を抜くな。あと、このツッコミもギャグに数えるな)、そろそろ俺が話を進めないとな。


とはいえなぁ。

件にしても覚にしても、自然現象系の怪異であって、特に人に害なす怪異では無い。 

出会ったことが不運なだけで、はっきり言やぁ逃げれはそれで済む怪異だ。


確かに基本的にクソ真面目なユカリじゃあ、このコンビじゃ惑わされて終わるな。

いざとなったら全員殺すドラゴンちゃんがいたから、山一個で済んでいる訳で。

 

中腹に大穴が開いた山は、多岐都姫がぶつぶつ言いながら修復した。

「まぁ、ここ儂の国じゃし。」

俺、山一個、剣で叩き割った覚えがあるけど。

具体的には70話あたりで。


「縦の穴は崖だけど、横の穴は崩れるだろ。」

縦の穴も崩れると思うけどなぁ。

「その辺は去年の11月末くらいに更新されてるな。あれから3ヶ月経つけど、崩壊した様子がないから良いの。」

ピヨちゃんは神様のくせに、時々語尾が可愛いな。

って真っ赤になって俯くなや。

「ああもう!ああもう!さっさと話を進めんかい!自然現象がどうさた!」

どうさた?

「失礼。かみまみた。」

1人で全部終わらせないでください。

3行くらい稼げるパクリネタだぞ。

「まったく。お主らの前では、迂闊に噛む事も出来ん。お主の嫁御がツッコミ損ねて凄く残念そうだぞ。」

ああそういえば、この物語はすっかり会話劇になってしまって、人物描写とか場面描写とか全然しなくなってるな。


最初の頃は、ちゃあんとコロシアムだとか宿屋だとか、失禁する処女だとか、ものの拍子に蹴り千切ったオッさんの首が向かいの八百屋に並んでたとか、懇切丁寧に描写してたなぁ。しみじみ。


なんで俺がいきなりしみじみ過去を振り返ったかと言うと。

ドラゴンちゃんに睨まれて汗だくになってた件と覚が溶けちゃってたから。

睨めっこで負けた中ボスってなんなん。


「死んどらんぞ。奴らが自然現象と言ったのはお主だろう。」

ああ待てドラゴンちゃん。いよいよ多岐都姫と口調が被るから、文字だけだと区別がつかん。

「作者が区別しようとか、とうの昔に書き分けを辞めてるけどな。」

ラノベってさぁ、大抵変な名前や口癖でキャラ付けするじゃん。

うちのメンツだと、サユリの「よう」か、ジェニーの「わたくし」くらいしかねぇぞう。

「2人が喋り出すと、どっちが話してるとかどうでもいいみたいだしな。さっきのカネゴン話だってさぁ。」

一応、ググれるのジェニーだけなので、区別はつくようになってるらしいぞ。

「そんなんでわかるかい!」

だよねー。


で、件と覚が何故死んでないかと言うと。

蛍が飛んでいるからだ。

蛍は件と覚の命の結晶だから。

件も覚も、自然現象だから、自然が(つまり地球が)存在する限り死ぬ事はない。


多岐都姫が殺すなと言うのは、殺すべき存在ではないから。

ドラゴンちゃんが殺さないのは、殺すなら全てを滅ぼす必要があるから。


ドラゴンちゃんは自分の判断で殺すべきでは無いとして、睨むだけで存在を抹消させた。

自然現象であるからには、身体を無くしてもいつかは復活する。

ドラゴンちゃんは自分の「存在力」で「怪異」を圧倒した。

それはユカリには出来ない事。

おそらく、多岐都姫にも出来ないだろう。

日本神話の神も、件や覚と同じ「自然」だからだ。


それを察知して。

まだ若い龍・ユカリの危機と俺の思惑を察して、(信じられない事に、幼女アナスタシア姫の性的開発を後回しにして)来てくれた訳だ。

俺は俺で、家族を探さにゃならんかったし、何よりユカリはドラゴンちゃんが認めた「妹」だ。

妹の教育も、ドラゴンちゃんが自らに課した役目だったりする。

龍族の(龍神の)繋がりは深い。

因みにサユリが使役してる竜神は、漢字が違うくらい地位も種族も離れているから、どうでもいいそうだ。


「でた、我が主殿よ。見つけたぞ。奴を。」

奴。つまり、ラスボスか。

「正式にはラスボスとは言えんな。奴をおかしくした奴がいる訳だから。」

だよな。

伝説に言う「彼女」は優しく気立の良い娘だった筈だ。

それをおかしくした奴を倒してこそ、この世界でのワタリの仕事が完了するんだろう。

そして、多岐都姫が殺さないでくれと願うそいつ。


「八百比丘尼」


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