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第78話 バラバラ

つーなーみー!

日本人的には色々思うところがある現象なのだけど、ここは明らかに内陸で、あと丘陵の描写もちょっぴりあって、しかも田園風景も広がっているって地方だった筈。

なのに津波かねぇ。

話跨ぎの場面転換とは言え、強引過ぎないかねぇ。


と言う事で、思い切り海水に飲み込まれた。

いくら俺でも、そこまで空気を読まずにひねくれている訳じゃあない。抵抗しないで、素直に流された。

これ、多岐都姫の仕業なので、一応神さまの天罰とかになるのかね。


その多岐都姫は、自分の神力で津波を呼んでおきながら

「あーれー。誰かタースーケーテー。」

と悲鳴を上げて流されて行っちゃった。

あーまー、慌てて八咫烏が追いかけてったし、天照大神の娘という高位の神だから、そうそう死ぬ事もないだろう。

待てよ。前回、神殺し神殺しとアイツ、フラグ立ててたな。

神の自殺とか、神の事故死とか、「うっかり女神のうっかり死」という展開も面白いかも。

なんかこの馬鹿小説。本来なら真面目にラノベのネタになるような事、ポイポイ捨ててる様な気がする。


いやいや。いやいやいやいや。さっさと物語を終結させたいのに、新しく分岐させるとか面倒くさい。

まぁ物語のセオリー上、易々とは死なんだろ。(重複)

放置放置。


さて、問題は、他の家族も流されちゃった訳で。

波が引いて、地面に立っていたのは俺1人。

人魚も河童もセイレーンも、みーんな流れて行っちゃった。

辺りを見回しても、前回まで1か月近くダラダラしていた川や堤防は見えない。

普通、漂流物や流着物で瓦礫の山になっているとこだけど、そこは神のご都合主義。

黄金色に首を垂れる稲穂が海になっている。

美味そう。

作者がコサキンソングでたまたま知ってただけでジェニーの召喚対象にされた「剣の舞」日本語バージョンの尾藤イサオは大丈夫かね。「あしたのジョー」をまだ聞いていたいんだけどね。

ま、ジェニーの魔法で何人かに増えてたし、とりあえず1人どっかで生きてりゃいっか。


「いくないぞ。」

おや、ドラゴンちゃんじゃ無いか。

あけましておめでとう。

「あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします、じゃなくて。」

お前、ノリツッコミするようなドラゴンだっけ?

「我が主様よ。儂もどうしたらいいのかわからないのよ。一応さ、儂裏設定で魔王だったじゃん。なんなら儂と我が主の最終決戦的なラストもプロットにあったじゃん。」

じゃんじゃん言うなや。

お前は妖艶で蓮っ葉でお色気ムンムン文在寅で、不良で素直になると可愛い設定を崩さないでくれ。

元ラスボス候補として、鼎の軽重が問われるぞ。

「今更、鼎の軽重もあるまいて。儂一応最強設定だよな?最近金髪娘がやたらと強くなってないか?あと、口癖が小鳥の姐ちゃんと被っとるし。儂どうしよう。」

ユカリがお前にビビっている事に変わりは無いぞ。あと、悠久の時を生きる存在は、「なのじゃよ」になりがちなんだから、なんなら次回作までに自分のキャラを固めておきなさい。

「次回作に出して貰えるのかぇ?」

成長途中のユカリと違って、強さがカンストしてるドラゴンなんか、使い勝手最高だろう。


「おっと忘れてた。アイツを助けに来たんだった。」

ユカリに、津波程度でどうにかなるような教育はしてないぞ。

「一応な、今のアイツじゃ手に余る事態が起きそうだからの。」

ん?ユカリの強さで苦戦するような奴が、今更この作品に登場するんか?

妻子を強くし過ぎて行き詰まってんだぞ。

「言っちゃあなんだが、儂等は長く生きとる割に頭が悪い!」 


「!」マークつけてまで力説されると、さすがにお前のパートナーとして悲しいんだが。

どうでもいいけど、このパートナーって言葉にも色々な意味が加付されたせいで、俺とドラゴンちゃんの関係性も怪しく捉えられかねないな。


「頭脳だけで罠に嵌める敵が出るそうなので。」

出るそうなのでって?

「小鳥が言っとった。」

あの野郎、知らないうちに何やら動いていたか。本当に殺したろうかな?

「待て待て。作者の考えたプロットを滅茶苦茶にしてもうたから、あれこれ考えての事じゃ。作者の思惑なんかとうに無視して暗躍しとるが、決して敵ではない。あやつも物語を完結させようと必死なのだよん。しばらく裏で、アナスタシアにお姉様と言われて悦にいっとった儂に無理矢理コンタクトを取りに来おった。」

だよんて。あと、伝説のロマノフ王朝最後の姫君(童女)に何してるんだ?お前は。

「伝説のテューダー朝にしてイギリス帝国最初の女王(少女)を妻にして、光源氏計画を実践しとる我が主に言われたくないわ。」


それだけ言うと、ドラゴンちゃんは龍化して飛び去った。

またねー、と手を振りながら。

可愛いぞコノヤロー。


さて、そう言う事ならば。

あれだ。パーティーがバラバラになって、個々が苦戦しながら合流を目指すパターンだな。これは。

苦戦しながら、新しいスキルを開眼するのがパターンなんだけど。

アイツら、苦戦するのかね。




するわけがなかった。

最初に合流したのは、我が正妻にして我が弟子のサユリだった。

サユリが相手取っていたのは、野盗というか野武士というか、野伏の集団。

血の匂いがしたので、丘を一つ駆け上って行ったら、その向こうでサユリは囲まれていた。囲まれていたけど、竜骨刀を無造作に肩に担いで、切り掛かってくる野伏を、次から次へと袈裟懸けに切り落としている。


むう。気に食わんな。

サユリは竜骨刀に頼り過ぎだ。

あんな使い方してると、普通の刀だと保たんだろう。曲がるし、脂身が纏わりついて切れ味まも直ぐ鈍る。

今晩たっぷり説教だな。

久しぶりに失神させたる。

明日、歩けなくなる様に腰抜かしたる。

ふっふっふ。


「夫婦仲が宜しくのは結構ですが、手助けしないでいいのですか?」

手頃な枝に腰掛けて戦況を見守っていたら、サユリが使役する元蛇神、今は進化して下級竜神が飛んで来た。


いんじゃない?

だって、明らかに力の差があるのに野伏連中が逃げ出さないのは、おおかた、お前が結界を張っているからだろ。

「はぁまぁ。野武士に囲まれた時に、あねさんから命令されましたから。あねさんのおかげで、結界どころか、簡単な思考誘導も出来るようになってますしね。今は、あねさんを中心に半径50メートル内に閉じ込めた野武士連中を怯えられなくしてあります。まぁいざとなったら、私も参戦しますが、必要無さそうですねぇ。」

因みに野伏の人数は。

「148人。」

まぁ問題ないか。

「です。」

見通しの通り、それから11分26秒でサユリは野伏を全滅させた。


竜神に跨ってサユリの元に飛んでいく。

サユリは息も切らせてなかった。

「まだまだですね。ちょっと怖かったです。」

俺の顔を見るなり、そう反省の弁を述べるあたりは、剣士として感心感心。

お説教は後回しにして、取り敢えず抱きしめてやろう。

散々っぱら身体を重ねていても、顔を情気させて目を潤ませるあたりは可愛い奴だ。


で、何か掴んだか?

「慎吾様は、蟻ん子を100匹潰して、何か奥義が得られますか?」

ませんな。だよなぁ。

多岐都姫さぁ、この展開、意味あったかぁ?




「慎吾様。誰を先ず探しに行きましょうか?」

そりゃ、ユカリにはドラゴンちゃんが助けに行ったし、ピヨちゃんには八咫烏がついていった。ジェニー以外にあり得なかろう。

「ユカリが大丈夫ならいいです。けど、ジェニーをどうやって探しましょう。」


そりゃな。


俺が一度、家族・仲間と認めた者は、俺の中で今どこサーチが使えるから平気。

ほら、鬼太郎みたいにアホ毛が一本立った。

「便利ですねぇ。」

裏切り者を地の果てまで追いかけるのにも便利だぞ。

「怖い怖い。慎吾様怖いですよう。慎吾様早く物語を完結させましょう。お子を作りましょう。早く隠居して縁側でのんびりお茶を啜りましょう。」

15歳の女の子が言う事じゃないなぁ。


まぁ今どこサーチを使わずとも、ジェニーの居場所は直ぐにわかった。

サユリが暴れていたところから西側、里山が連なる丘陵があるのだけど、そこから巨人が顔を出したのだ。顔だけでない。

やがて肩が出て、胴が出て、腰が出て、腿が出て、脹脛が出て。

見た目高さ数十メートルの里山では、足首しか隠れていない。

頭は雲にかかっている。


「でっかいですねぇ。金角銀角とかブロッケンとか、色々な巨人と戦ってきましたけど、あれ桁外れにでっかいです。」

ダイダラボッチって奴だな。

日本の神話でもデカい事で有名だ。

でもアイツ、とくに暴れたりしてない筈。

富士山を作ったり、琵琶湖を掘ったりしてるけど。


「巨人が暴れだしました!山を踏み潰してます。」

だろうなぁ。少し展開が安直じゃない?

「まぁまぁ。ピヨちゃんが年末から3週間くらいかけて考えた展開ですよね。乗りましょ。乗っときましょ。で、ジェニーはあそこにいると見ていいんですね?」

ほら、放水が始まった。


俺達は、竜神に乗って現場に急行した。


絶句した。


梯子車が伸ばした梯子のてっぺんで、「みずいろの雨」をピアノを弾きながら歌っていたジェニーにではなく。 

梯子車の放水が、ダイダラボッチの身体を崩している事を。

梯子車に水を供給している連中が、セイレーンだけでなく、人魚も河童もジェニーの指揮下に入っている事。

そして、セイレーンたちを直接指揮しているのは、深沙大将であり、水神である事だ。


水神は、水場を治め生物に命の水を授ける土地神であり、中位の竜神である。

ユカリや多岐都姫と仲良しな姫さんとはいえ、なんの修行もしてない「ただの人間」が使役出来る存在じゃねぇぞう。


ダイダラボッチと水神では、神格の低い水神に勝ち目は普通ない。

だけれど、仏法の高位守護者である深沙大将の仏力に、人魚たちの妖力を、ジェニーの歌声が最高位に底上げしている事もあり。

ダイダラボッチの身体を、最も容易く放水が貫いていく。


よし、俺も参加しよ。

来たれ!セクサロイド。


「はいはい。呼ばれたから来ましたけどね。いつ以来の御用命よ。人を飛行機にしたり潜水艦にしたりしてたけど、私自体はちょとも呼ばれないじゃない。」

うん。いつも乗ってる車の頭脳って、セクサロイドのコピーなんだよね。

どんな奴だっけと、慌てて読み返したら、ジェニーがまだ真面目で、ユカリと一緒にツッコミ担当してて懐かしかった。去年の5月頃の更新だな。この頃なら、まだ路線修正出来たなぁ。しみじみ。

まだピヨちゃんがピヨちゃんで、天照皇大神を普通に大御神と思ってた頃だった。


時折、きちんと解説を丁寧に加えていてさ。

まさか、その解説すら使い捨てのギャグにするとは思わなかった。


それはともかく。

行くぞ。変形!モンケーン!

「アイアイサー!…なんでモンケン?」

そりゃ放水と言えばモンケンだろう。

「また微妙なネタを…」 


大丈夫。佐々淳行率いる警視庁機動隊と長野県警機動隊も出揃ってる。

放水車にモンケンは、この国の様式美だ。

大和の隣には冬月が似合うだろ。


「?!旦那様!」

行くぞ。八代亜紀キボンヌ。

「慎吾様、それは古い。」

「わかりました。雨の慕情、行きます!」

あめあめふれふれ(ここで止めておけば童謡のあめふりと区別がつかない)



巨人な鉄球は一撃でダイダラボッチの足首を粉砕した。同時に警視庁第九機動隊を先頭に警官隊が突入する。

人魚・河童・セイレーン・深沙大将・水神・俺・警官隊の集中攻撃がダイダラボッチのHPを瞬く間に削り、あっという間にその存在を亡き者にした。


ありがとさん。

史実と違って、その役割を十全に果たしたモンケンは、「たまには私も呼びなさいよ!」と文句を言いながら消えていった。

消えて行ったって言っても、畦道と農道しかないこの土地で車を出しても邪魔なのでしまっただけ。

俺の能力じゃなくてセクサロイドの能力だから、封印される事もないだろう。


問題は。 

感極まったジェニーが、梯子車のてっぺんから飛び降りて来た事で。

俺だから怪我一つ無く、受け止められるわけで。この子、こんなに向う見ずで頭悪かったかなぁ。

「旦那様を信じているだけですよ。」

そうですか。

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