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第75話 人魚大戦(承前)

「何ですか旦那様。この赤いお魚美味しいです。ただ焚き火で焼いて、お塩を振っただけなのに。」

ムツって魚だよ。

赤いからアカムツって言われてる。ほれ。


俺は切身にした中から、串刺しにした兜をジェニーに見せた。


口ん中が真っ黒だろ。だから通称「のどぐろ」。白身魚のトロと言われてる程、脂が乗る魚なんだ。


「でも慎吾様、これはお刺身で頂きたいお魚ですね。」

「ユカリ、パパがたまに作ってくれるお寿司が大好きなのです。」


寿司にするには、ある程度の種類の魚が要るからなぁ。海辺の港町とか行かないと。

俺たちは、基本的に食材は現地調達だから。

あと、ジェニーに生魚はどうなのかって事もあるし。


「そうですね。我が国は魚は火を通す物ですから。フィッシュ&チップスとか。」

ニシンの頭を突き刺したパイとかな。

「あれはビジュアルこそ強烈ですが、とっても美味しいんですよ。」


「でも、ジェニーの国って我が日の本と同じく島国なんでしょ。」

あぁ、流通が最初から海産物を運ぶように出来てないから。肉とじゃがいもと小麦の国だからな。逆に日本は最近まで魚と米の国だった。

「なるほど。」

サユリの家は下総だろ。あそこは水にも土地にも恵まれているから、川魚は泥臭いけど、飯は基本的に美味いとこだ。

…たまに富士山とか浅間山が噴火して、大変な事になるけど。


「ねーねー、ユカリんちは?ユカリんちはどうなの?」

あぁユカリんちか。あの頃はまだ異世界ファンタジーだったんだよな。寒い土地だっけかな?ちょっと待て。今、読み返すから。


「おい!」


あぁ、何やら訳の分からない偉そうな兄ちゃんいたなぁ。

アイツ、どうしたっけ?


「おい」」


「確か、パパかお姉様が縊り殺したと思うけど。」


「おい!」


どの辺だっけ?

「9話の副題が竜王戦だから、その辺ぽく無い?」

9話ぁ?そこまで遡るのぉ?面倒くさいなぁ。

今、何話だっけ?

「サイトによるけど、今書いてるこのサイトだと、すぐ上に、“第75話 人魚大戦(承前)て書いてあるよ。」

こんな馬鹿話75回も書いてたのかよ。3桁に行くまでに終わらせないと。


「ええ加減にせんかああああ!」

なんなの多岐都姫ちゃん。仕方ないなぁ、ほら兜焼きあげる。

「おおこれはありがたい、とかノリツッコミはせんぞ。」

じゃ返せ。俺が食う。

「一度貰ったもんは、儂のもんじゃ。誰が返すか!それよりも、いつになったら話が始まるんじゃ?さっきから魚食っとるだけじゃろ。」

いつも同じだろ。5,000文字もかけて話がさっぱり進まないは、もはやこの作品のキャッチフレーズだぞ。


「物語が崩壊するほどのメタ発言もな。そのメタ発言絡みじゃが。さっき今回の副題を、そこな龍の娘が言っとったじゃろ。人魚大戦(承前)て。承前じゃ承前。前章をそろそろ承れ。」

えええええ、面倒くさいなぁ。

「ウガアアアアァ。」


さて、多岐都姫ちゃんが発狂しちゃったので。


「姐さん、控えて控えて!」

「離せ八咫烏。此奴を刺して儂も死ぬ!」

「無駄ですって。日本武尊様とか素戔嗚様とか、日本神界が束になっても旦那に敵いませんて。ましてや奥方と娘さんまでいらっしゃって、奥方は八岐大蛇を使役してるんですよ!」

あ、大人しくなった。

「…母上は、何故にこんな役を儂に擦りつけたのだろう。」

「多分、面倒くさいから、かと。」

「一切否定出来んでは無いか!よよよ。」

なんか、男女の修羅場みたいだなぁ。


ええと、前回どこまで行ったっけか。 

あぁ大爆発したとこか。


「大体!なんでアカムツなんて深海魚を“現地調達“しとるんじゃ。ここ川!か〜わ!海のお魚来ないの!」

お前、すっかり小鳥のピヨちゃんに戻らなくなって、パーティーのツッコミ役になったな。

「仕方なかろう。元はお主か龍の娘がツッコミ役だったのに、お主は嫁御達が何しても流すし、龍の娘は賑やかしに徹し出しちゃうし。」


嫁ーズ漫才は、放置しとくと文字数が増えてマス目が埋まるから楽なんだもん。大体、なんでピヨちゃんに化けてだんだっけ?


「一応、あっしと多岐都姫様は神族ですから、魔神から身を隠すって設定があったんですよ。マスコットに小鳥を出したから、それに便乗したんです。あっしの八咫烏形態が、例の3本脚から小鴉になったのも、肩に乗ってたら可愛いだろうってだけでさぁ。」

そんな描写もあったねぇ。まだヨーロッパをうろちょろしてた頃かな?


「だけどほら、旦那の家族衆が強くなりすぎて、うちの戦闘神が苦戦するような魔神を笑いながらボコ殴り出来ますから。姿を隠す必要もないというか、結界を張るくらいしか役目も無いし。だったら人形態で喋ってたほうが、キャラが立つんでは無いかという判断でさぁ。」

結果、レギュラーキャラが増えすぎて、作者が書き分けを放棄したけどな。


ほら、さっきから嫁ーズとユカリが出てこないのは、出番じゃないからと、楽屋に戻ってアカムツを食ってるからだ。

ご飯炊いてるぞ、アイツら。

先週、河原で飯食ってたのに。


「先週言うな。いつからこの話は週刊になっておるんじゃ?」

ええと。ああほら。新しい魔神魔王募集でリアル1週間あけるという、ジャックバウワー的な試みをしたろ。あれからだな。

「あれ、結局は作者が後回しにしただけじゃろ。」

そうともいう。

「いうんかい!」


一応、ラスボスもしくはその前の準ボスは思いついたらしい。で、それに向けて先週からラストスパートをかけだしたんだけど、何故か無駄話ばかりが思いついて、本編に戻れなくなってんだってさ。


あれだ、晩年の先代林家三平(こないだ笑点から降ろされた方じゃないぞ)が、真面目に古典落語を語りたいって言って、立川談志に落語会を開いて貰ったら、本人の意図とは別に往年のギャグが次から次へと口から出るのが止まらなくなって、終いには談志に高座から蹴り落とされた話があるけど、あれだな。


因みに、◯OKIOの◯口元メンバーが三平役を演じたドラマのDVDを持ってます。


「だからそんな事ばかり書いてるから話が進まないんじゃ。さっさと終わらせたいのなら、無駄な口叩くな。そもそも強さのインフレって敵味方にあってこそ、話が成立するんじゃぞ。味方ばかり強くしたら、そりゃ行き詰まるわい。」

最初から、俺が無敵だからなぁ。

ノンストレスストーリーを書いていた筈なのに、この物語を書く事が作者のストレスになっているってのはどうなんだ。

正月休み前の最終週で、実生活が滅茶苦茶忙しいらしいけど。


「作者の実生活なんかしるかい!大体、巫女さん話は頻繁に更新してるじゃないか。」

一応、こっちも下書きくらいはしてんだよ。

毎回ワンアイデアを伸ばしたり縮めたりしてるのがこの物語の執筆スタイルだから、いいアイデアあっちに取られたりしてるし。


前回だって本当は鍋しようとしたのに、あっちが鱈ちり鍋始めちゃったから、こっちは山鳥は香草焼きになるし。

野蒜の味噌汁になるとは、書いてる最中も思わなかった。うまかったから良いけど。


んじゃ続き行くか。

おい、サユリ、ジェニー、ユカリ。帰ってこい。

「お鍋も美味しかったね。」

「あっちのに巫女さんに土鍋て炊いたご飯を差し入れしてもらいました。おこげが美味しかったです。」

勝手に楽屋裏でコンボすんなや。



さて、承前と書いたからには、前章の続きをせねばなるまい。

承前と書いて、まるっきり前章を無視しても良いんだが、それは朝松◯と言うプロが、今は昔のソノラマ文庫で出していた◯闘学園で、とっくの昔に使っていたギャグなんだな。(俺が知らないだけで、ラノベ・ジュブナイル以前の文学畑で使っててもおかしくないだろうし。)


と言うわけで。

敵の第二陣到着。だって人魚軍団が結構流されて行ったからなぁ。別に人魚の中で爆弾を爆発させたわけじゃないから、死んではいないだろうけど、あれだ。ガッチンコ漁(書いててチンコが出てきたから、ちょいと口元だけ苦笑い)みたいなもんで、気絶したんだろう。

で、次なる水妖怪は河童。


くけけけけ。

くけけけけ。


「河童かぁ。」

「どうします?相撲を取って負けたら、尻子玉を抜かれますよ。」

「わたくし、あのぬめぬめはちょっと。」


おお!河童と人魚で水陸フォーメーションが組まれたぞ! 熊手を構える河童を前衛に、後衛の人魚が弓を構えている。

まぁ、俺たちが近寄らなければ、何の意味もないんだけど。


「おい主様よ。頼みがある。」

俺が我儘と判断したら、例え神の願いであろうが却下するが?

「まぁお前さんの事だから、あの妖怪くらい瞬殺できるだろうが、殺さんで欲しいのよ。妖は神には逆らわん。妖は強者には逆らわん。なのに彼奴等は戦う気満々じゃ。何かがおかしい。」

要は、場が狂ってんた。土地神もおかしいんだろ。 

「これが、敵の仕業かのう。」

だろね。しかしなぁ、俺にしても、サユリにしても、ユカリにしても、手加減出来ないぞ。力の差があり過ぎる。

「妖相手に手加減出来ない嫁御ってなんじゃ!」

サユリはニコニコニコニコニコニコニコニコしてるだけだ。

「怖い怖い。神を怯えさせる人間ってなんじゃ?」

「大丈夫ですよ多岐都姫様。全ては我が師匠の御心のままに。」

「一番危なっかしい御心に従うなや。」

「うふふふふふふふふふふふふふふ。」

「きゃあきゃあ。」


さて、神を虐めるのはその辺にしとけ。

ピヨちゃんよ。うちの家族で1人名前が上がっていない奴がいるだろう?

「わたくしの事ですね。」

シュタッと右手を挙げたイギリス女王。

うむ。耳をこちらに。

「わたくし、旦那様に開発されて、耳は敏感なのですが。」

あとでたっぷり可愛がってやるから我慢しろ。

実はな。こしょこしょ。

「古書古書。」

誤変換で見つけたからって、なんでも言い出すんじゃない!

「うふふ。わかりました。では、行きますよ!」


いそいそとタキシードに(ハニーフラッシュで)着替えて指揮台に乗ったジェニーが指揮棒を振る。

途端に露天の土手に現れるフルオーケストラ。

演奏するは、バレエ音楽「ガイーヌ」より最終幕。同時に沢山の外国人がサーベルを片手に川へ突っ込んでいく。


その外国人はクルド人。中東に住むイスラム教徒と言われているが、その姿は仮初のもの。

ジェニーは、クルド人の姿を借りてある妖を召喚したんだ。


うちの人脈?には人魚に類する連中がいるじゃないか!


大河に響く楽曲は、今更言うまでもない。ハチャトリアンの剣の舞だ。ついでに尾藤イサオまで来てるぞ。あしたのジョーを歌わせてないで、オバ歌謡を歌わせるとは、なんて贅沢な。


ワタリとジェニーの力とはいえ、こんなに豪華にしたのは、これからを全部コメディにするからだ。


人魚にはセイレーン。そして河童には。

「来たれ!深沙大将!」

「承知!!」

天竺に行く途中で干からびていた河童の最上位、沙悟浄のモデルにもなった仏様が、俺の人脈にいるじゃないか!


河童と人魚が身構える中、深沙大将を先陣に突入した我が軍が一斉に発射したのは。


パイ、だった。


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