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第73話 敵の狙い

「ふむ。敵が何者かは判らんか。」

多岐都姫の問いには答えず、変なものが這い上がって来ても鬱陶しいので、とりあえず穴と言うか、キレットと言うか、大地の裂け目を塞ぐ事にした。


面倒くさいから、この丘を全部均して残土を埋めようかしらね。

「それは駄目じゃあ!」

えーと、何故か焦った多岐都姫に頑強に反対されたので、そこら辺の太平洋海底から土砂を引っ張って来て埋めた。どっかの海溝が何センチか深くなったかも知れない。

まぁ、そのうち地殻変動で盛り上がってくるからいいか。地震とか海底火山の活動があれば一瞬だ一瞬。

生態系は…、まぁ影響など誤差だろ誤差。


「いや、唐だの南蛮だの他国なら知った事じゃないんじゃが、儂一応日の本の神じゃて。国土は大切にってこっちゃ。あと、土地神が文句を言ってくるのがめっちゃくっちゃウザいんじゃ。」

滅茶苦茶に溜めを作る多岐都姫。

土地神って、そうそう神格の高い神じゃあ無かったと思うがなぁ。

「その代わり数が多い。細っかいのが伊勢だの出雲だのに大量に押し寄せて来んじゃぞ。あれはもうGだ。G。」

土地神をG扱いする天照皇大神の娘。


「大丈夫かなぁ?G共、gdgd陳情に来ないかなぁ?」

口煩い市民団体と、地元の参議院議員みたいになってるぞ。日本神界。

「逆じゃ。神界がこうじゃから、人間界も似た。それだけの事じゃ。」

世知辛いなぁ。


「ねぇ慎吾様ぁ。ピヨちゃんが何言ってるか分からないんですけど。通訳をお願いしてもいいですか?」 

学がないなぁ。うちのお嫁さん。

「旦那様。わたくしもちんぷんかんぷんですわ。」

学はあっても、色々と偏っているジェニーさん。彼女は元・未来のイギリス女王(僅か数語で矛盾が生じる謎属性)さん。イングランドは一神教の上、絶対王制だから、陳情と談合だらけの日本には理解が及び尽くさないらしい。


サユリに判り易く言うなら百姓一揆だ。悪徳代官の圧政に耐えかねた農民達が、殿様に直訴する、あれだ。

「なるほど。ピヨちゃんは悪代官ですか。」

「し、失礼な事を言うでない。わ、儂は品行方正な神じゃあ!」

だったら吃るな。動揺し過ぎだ。

「だってのう。母上に知られたらヤバいんじゃて。晩御飯抜きで一晩正座は嫌じゃあ!」

意外とスパルタな母親だった。


当の本人(天照皇大神本神)は安全な天の岩戸の向こうで、テレビ見ながら煎餅食ってるけど。 

「私は囚われの身。私の身に何かがあったら、日の本の国がどうなるか、お判りでしょう?」

いや、俺のブレイン内で随分前の状況を思い出しているだけなのに、お前の方から話しかけてくんなや。

「とりあえず龍脈が生きていればG共もそんなに五月蝿く言わないわよ。」

お前まで土地神をG扱いすんな。


やっぱり神様なんか、何処の国も何処の世界もおんなじだな。

と言う訳で、シャットダウン。閉店ガラガラ。出た!ウワァオ!

「え?私の出番、これだけ?」

その為に、ピヨちゃんと八咫烏を遣わせたんでしょ。じゃあねー。

「そんなぁ。一休さんの最後のとこみたいな。」

あそこは今で言うエンドカードみたいな数秒だから、再放送じゃ絶対放送されないだろうな。

「わたくし、ピンスポが当たった一休禅師の背後が暗闇な事が怖くて怖くて。」

「しかもあの後、東京12チャンネルで始まるびっくり大集合の最初が心霊写真コーナーなのよね。私怖くてテレビの音声が聞こえない部屋に逃げてました。」

お前ら幾つだよ。

「15!」「13!」

…なんかごめんなさい。


龍脈調査と言うならば、うちのパーティーには専門家がいるじゃん。

という訳で、専門家さんご登場!  

「え?え?パパ、ユカリG嫌い。」

あぁ、ユカリさんまで土地神をG扱い。


「龍脈ったって、ここ独立丘だし、最初から通って無いよ。」

地面はな。空を見てみい。

「空って言ってもねぇ。」

ユカリは空を見上げて手をかざす。何かが見えている様だ。

「…なんだろう。細い糸みたいなのが一本。解れかけてるよ。」

それだけあれば充分だ。大雑把な座標をユカリに誘導してもらって、多岐都姫に力を分ける。

 

「何じゃこの感じ。お主、こんな力を身体に秘めておるのか!破裂しそうじゃ。」

神様を憑代にしてるから、結構無造作にやったけど、厳しいかな。多岐都姫の顔が赤くなってる。

んじゃ、このくらいで。

「お主、こんな力で奥方共を抱いとったのか。嫁御たちはよくぞ受け入れられるのを。」

全力の俺が攻め続けて何日もかかったうちのドラゴンちゃんの凄さが判ったか?  

「確かに、彼奴は神族でも最強を名乗る資格があるわ。」


という訳で、多岐都姫の両手を使って、天の龍脈、いわゆるレイラインの修復を終えました。巨大草薙の剣が巨大過ぎて、天空を走るレイライン(太陽軌道)を傷つけてしまった様だ。自重自重。


「ええと慎吾様。龍脈を繋ぎ直すだけで1500文字も使ってしまいましたよう。」

「わたくし達は、今回そんなに無駄話はしてませんよ。」

ああまぁ。設定の思い出しと再確認をしながらだから。そもそも話が暴走と変質し過ぎて、作者だって把握するの止めたんだから、せめて登場キャラが整理整頓しないと。


「飽きられたの?」

多分。 

「好き放題し過ぎたかしらね。」

好き放題し過ぎて、敵が居なくなっちゃったからね。ラスボスがまだ決まんないの。



「ふむ。敵が何者かは判らんか。」 

いくら画面データだからって、自分の台詞をコピペすんな。

「神様じゃからの。」

普段なら、冒頭に戻るで済ませて終わるとこだぞ。そして同じやり取りを繰り返す。

「面白いのう。やってみよか。」

やめやめ。本当にやりかねんぞ、うちの作者なら。

「ミスじゃなく、1回分丸ごとコピペで済ませたらギャグにならんかね。」

大ヒットアニメの2期で同じ話を8回やって、ファンが全員離れて行った事件があるので、やめましょう。

「アレはちゃんと全部書き直したのにな。」


「それはともかく。ともかくですよ。慎吾様の力が削がれるって言う事は、結構不味くは無いですか?」

うん?別に?

「だって、もう2つの力が封印されてる様なものですよね。まさか秋津慎吾99の力とかあるんですか?」

さすがはジェニーさん、物を考えている。

「し、慎吾様!私も私も!」

俺が相手にしないと同性愛に走りかねないくらい仲の良い、うちの第一夫人が、ハイハイと多岐都姫の頭を乗り越えて手を挙げてきた。

あー。多岐都姫の額に御怒りマークが浮かんでるぞ。

「私とジェニーは、慎吾様の能力に当たらないんですか?私は慎吾様の直弟子だし、ジェニーの魔法能力も慎吾様のお導きで身に付いたものだと思っています。」

さっきの熊は、俺の肉体ポテンシャルだけで叩き潰したし、サユリの剣術もジェニーの魔力も個人の研鑽によるものなので問題無いと思うよ。


「では今後、どうする気じゃ?敵の出方を考えるなら、お主のワタリの力を削る為に毎回毎回ちょぼちょぼ来るのを撃退し続けるかの?」

それはそれで鬱陶しいな。

なんなら、サユリとジェニーとユカリに任せようかね。さっきの熊くらいなら丁度良かろう。

「身長57メートルの熊に立ち向かう方法とか知りません。パパみたいな力任せは、おかーさんもお姉ちゃんもユカリも向いて無いし。」

そうは言ってもなぁ。

来たぞ。今回の中ボス。


「…。」

「…。」

「…。」

「…。」


あー全員黙らないの。

必死に考えたんだか、適当に思い付いたんだか知らんけど、普通の人間にはケッタイな相手だぞ、アリャ。


「鮫って空飛んだっけ?」

「まぁ、前章では大きな鯨がふわふわ浮いてましたし。」

「でっかいなぁ。ちょっとした飛空挺くらいあるよ。」


はい。今回の敵は鮫です。体長はざっと見30メートルってとこ。姿かたちはホロジロザメかねぇ。

まぁ、空飛ぶ鮫の一匹や二匹…

「三匹や四匹。」

「五匹や六匹。」

「増えるね。」

「旦那様。どうしましょう?」

うーん?鮫の数え方って〜匹でいいんだっけ?

「「「「そこ?」」」」

出鱈目な話だから、せめて知識的な面で正確を記さないと。


「調べてみたら、匹・頭・尾ですわね。大きさとか、個人の感覚で決めてるみたいです。」

ふむ。さすがは我が家のサイクロペディア。手持ちのスマホでちゃっちゃと調べてくれた。


「スマホを持っとるのかい、お主の嫁御は!」

サユリとユカリにも持たせてみたけど、サユリは理解出来なくて、ユカリは指の皮膚が反応しなかったの。

「しょんぼりです。」

「おかーさんに同じ。」

「呑気な親子じゃのう。」

「その分、わたくしが頭を使うのです。」 


「いやいや、みなさん!」

あ、八咫烏が喋った!

「さっきの“そこ?“で鉤括弧が4つあったでしょう。あっしはそこで喋ってます。」

相変わらず、機微を読み取らないと理解出来ねえ小説だな。これ。

「慎吾様から、作者にまともに描写しなさいって頼んでよう。」

いや、臍曲げられて、この小説は6ヶ月以上更新がありません。とか書かれかねねえぞ。

ラストが決まってるのに繋ぎの展開が思いつかなくて、腰痛を理由に中断したままやる気無さそうなプロクリエイター、何人かいるだろう。

「それはいくらなんでも暴論では?」

「いや、主に海賊マークのマンガ週刊誌にいそうな気もするわぁ。」

「いやいやいやいやいやいやいやいや、鮫ですよ鮫!鮫が襲ってきます!」


俺達の馬鹿話が終わるまで几帳面に待ってた鮫も鮫だぞ。

「そこら辺はほら、歌舞伎から東映戦隊シリーズに続く様式美ですよ。」


ふむ。文字数は4,000文字足らずか。

なら、まだ暴れても大丈夫かな。

では。


サユリとユカリはいつものだ。

「承知!」

「わかったー。」

いつもの、とは龍化したユカリの背に乗ったサユリがドラゴンライダーとなって上空の敵に突っ込んでいく奴。

我が家的に「ゴッドバード」って言われてる。

ジェニーは神様ーズに守られて讃美歌を歌う準備を…あの、準備?

「お待ち下さい。今、曲を選んでますので。」

あぁ、分厚いアンチョコ見てるよ。

もう戦場なんだか、カラオケなんだか。


さて、俺はどうすっかな。草薙の剣が役に立たないし。力任せってのもなぁ。鮫の速度がどんどん上がってるし。おーおー。久しぶりの出番(ムーでは神様扱いされて楽屋待機だったし)にユカリが燃えてる。素早さがそろそろ音速を越えそうだ。おーいピヨちゃん?


「わかっとる。ソニックブーム避けに結界を張ればいいんじゃろ。」

さすがはえーと、65話くらい一緒に旅した仲間だ。ツーと言えばカーだな。

「儂の初登場が何話くらいか読み返さんかい!」

えーっ。めんどいじゃん。

「カーはあっしでさぁ。」 

お前もお前で、伝達役に連れてきたのに何もしないな。

「ならば仕事をくだせえー。勝手に天照様と交信してないで!あっしの存在価値を全否定しやがりました。おまけにスマホて。」

あ、さっきそんな場面あったっけ。しまったなぁ。面白半分に場面を作ったら、そこを登場キャラにツッコミ食らったぞ。

閑話休題閑話休題。誤魔化せ誤魔化せ。

ゴホン、お前、戦闘力あるの?

「………。戦場でそれ言います?」

だってさ、見てみい。あのゴッドバード親子空飛ぶ鮫軍団を片っ端から叩き落としてるぞ。

「今の主役はあっちだし、カメラをあっちに向けるべきじゃありませんかね。」

いや、親子であはははあはははあははは高笑いしながら竜骨刀と龍の爪を振り回して、空から血が大量に降ってくる有り様を描写しろと申すか。


「旦那様ぁ。今回、わたくしの出番が無さそうです?」

あぁ。デカくて空を飛ぶ以外は、攻撃力も防御力もただの鮫っぽいし。うちの嫁と娘に敵うわきゃないわなぁ。

「と言うかですね。高笑いをしているお2人を夫として父として、きちんと教育すべきではありませんか?」

あー、サユリとユカリの躾はジェニーに任した。

「なんですと?」

ていうかな。剣士と龍の本質は破壊だから。変に本能を抑えると暴走すっぞ。

特にサユリ。  

「旦那様も結構なジャジャ馬慣らしでしたか。」

まぁまぁ。そろそろ防除も終わるから、とりあえず晩飯の事を考えようぜ。

「旦那様に係ると、空飛ぶ鮫軍団もG扱いなんですね。」

それが俺たちだし。

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