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第62話 太平洋

その後、ラスベガスで州の年間予算くらい勝ちカジノを3軒くらい破産させて、襲って来たギャングを全員肉片になるまで殺し尽くしたり、ホテルを物理的に塵芥にしたりしながら、俺たちは北米大陸を横断して太平洋に到達した。


「普通なら、そこは2回くらい使って描写するところではありませんかね。普通のラノベならばちょっとした山になりますよう。」


そうは言うがなお嫁さん。俺たちだぞ。

人間相手じゃ相手にならないって、前回思い知っただろ。普通ならさ、敵も強くなって少年ジャンプ的なインフレ状態になっていくもんだけど、何しろ俺が最強過ぎて、どんなに強い魔王が出て来ても敵にならないもん。

ストーリー構成をどうしたらいいんだ?こんなもん。


「それにしても、あそこまでやる必要あったのかしらね。」

別にインチキはしてないぞ。スロットで「777」を連発しただけだし。

別にドルなんか要らねえんだから、大人しく頭を下げりゃ全額放棄したのに。

「あら意外。慎吾様って欲無いのね。…って考えてみたら確かに金銭に齷齪した事ってありませんね。慎吾様って。」  

ステータス的には、俺って財産と幸運が♾だから。

「…何しにカジノに入ったのよ。」

せっかくラスベガスを通ったから、ストーリーにメリハリをつける為だろ。

全く展開しなかったけどさぁ。

「だったら、いよいよ本格的にわたくし達の脱線を主軸にしましょう。」

それは小説ではありません。ラノベはライトノベルズの略称ですよ。

「ほんとお?ちぃっとも知らなかったわぁ。」

………ジェニーはいくつなんだよ? 

「鼻も恥じらう12歳です。因みに初潮を迎えたのは去年です。」

「そう考えると、ジェニーとエッチな事するのって犯罪じゃない?」

現代日本では、お互いの合意が有っても犯罪ですな。

「よく慎吾様は、恥ずかしげもなくのうのうと言えますねぇ。」

初対面でいきなりぱんつを脱いで、お股を開いたのジェニーだぞ。最近じゃ、お嫁さんがダウンした後も3回戦4回戦をせがんでくるのもジェニーだぞ。

「覚えたては興味深々なのですよ。」

「…西洋人って強いのかしらね。」

久しぶりに言おう。知らんがな。


それにさ、ここに来て、お嫁さんもジェニーも人外の強さを身につけて来たし、今のユカリならくしゃみ一つでラスベガスを吹き飛ばしちゃうから。

「えー?私には無理だよー。」

うんにゃ。お前のお姉様こと、うちのドラゴンちゃんは寝返りで世界を一個滅ぼしたからな。同じエンシェントドラゴンなら、そこまで強さで振り切れ。

「それって慎吾様に性具塗れにされて拘束された時でしょ。」

「わたくし、結構その状態に興味があったりします。マゾっ気が育ってきたのかしら。」

「慎吾様?あまりジェニーを育てちゃダメですよ?」

つうか、お前ら最近、俺で遊び過ぎ。

2人で男を攻めるローティーンってなんだよ。

「「貴方の女ですが」」

ぎゃふん。

「「「「「ぎゃふんて、昭和か」」」」」

ちょっと待て、鉤括弧が5個あったぞ。おい、鳥ーズ!

「嫁ーズがいい加減なまとめ方なのに、妾達を鳥ーズって。」

「あっしら、神様とその僕なんですけどねぇ。」

いや、多岐都姫として何度も人化してるピヨちゃんはいいよ。八咫烏。お前いつから人になった?何そのヤンスキャラ。

「つうかですね。あっしはなんでこの旅に着いて来てんだか、最近疑問に思いまして。」

それなら天照大神に言えよ。

アイツに頼まれて連れ出したんだから。

「うちのお母さんも、結構いい加減だからねえ。」

神がいい加減な事はよーっく知ってます。


「あら、こんにちは烏さん?」

「八咫ちゃんでいいですよ奥方。」

「あ、私、私。私も多岐都姫とか大仰な名前よりピヨちゃんが良いです!」

天照大神が付けた名前を粗末にするうちの神様。

「えぇと。私からすると、お二人とも、とっても有難い神様なんですが。」

「アレの女房してんでしょ。それだけで私達からすると化物だわよ。誰がこの世界に呼んだのか知らないけど、私達より上位の存在よ。この兄さん。さすがに蛇神や龍神よりは、うちの八咫烏の方が上位になるけど。」

俺をアレ言うな。兄さんて。

「…今更ながら、わたくしって神様に囲まれて旅してんですねぇ。なんだか我ながら感心しちゃったわ。」


「んで、おんしは何しとる?」

見て分かる様に釣りだよ。ずっと内陸を進んで来て、血の滴る様な肉ばかり食ってたから、魚食いたいんだ。刺身を山葵醤油で食いたいんだ。

「大陸の食事は、大雑把でわたくしの好みではありませんねぇ。わたくし達島国人はやっぱり海産物ですよ。」

フィッシュ&チップスを海産物と言って良いのかな?

「わたくしは旦那様に舌も下も開発されましたから。フーターズは美味しそうでしたね。」 

どっちが美味しそうなのかな?料理?おっぱい?

「りっぱいです。」

…どっちもなんだね。

「料理を先にして合成しないと、おっぱいになりますね。」

「ジェニーさん。下ネタはいけないと思います。」 

お嫁さんは、会った当初から下ネタ全開だった覚えがあるんだけど?

「ただの耳年増のおぼこでしたよ。今は妻としての余裕が後輩を諭せるわけです。」

「そういえば、旦那様は2人目の奥様をお持ちになる気は無いんでか?」


うーん。


最初はさ、この世界って単純な異世界の筈だったんだよ。

たまたま拾った娘を嫁にしたら、そいつが日本出身の、おまけに千葉県人でしたと。そしたらやはり日本の常識に縛られるわなぁ。

お嫁さんへの遠慮も出るしさ。

日本は、帝にしても将軍にしても、たとえお妾さんを何人も抱えていても、基本は一夫一妻制だから。イギリスだってそうだろ?

「うちはキリスト教主義ですからねぇ。正式にはお妾の所持は不倫に当たるので禁止されてますし、宗派によっては離婚も禁止。1人の相手と添い遂げる事が是とされますから。」


ポイ、鯖か。どう食おうかな。


「血統維持の為に近親婚やら何やら、結構好き放題して、その為の内戦も定期的に起こっていますけど。」


バン、海亀かぁ、これはいいや。リリースリリース。


スペイン王朝なんかはそれで絶滅してるな。

よっと。これは手答えあるぞ。

「アレにはうちも介入しましたけどね。ブルボン家に負けました。…随分と竿がしなってますけど、お手伝い要りますか?」

お米を水に浸けてそろそろ30分経つから、ご飯炊いてくれると助かる。 

「わかりました。」

「ジェニーはそこまで慎吾様に嫁入りしたいの?」

「単に不安なだけです。奥様は旦那様と同郷だし、龍としての存在が確立しているユカリさんはともかく、ピヨちゃんさんも八咫さんも結局、旦那様の国の神様じゃないですか。わたくしだけ異邦人なのです。髪の色も肌の色も違う。旦那様に捨てられたら、生きていけない女なんです。おしんこ要りますか?」


茄子を浅漬けを所望します。 

 

「畏まりました。お味噌汁の具は何にしますか?」

大根の千六本で。

「承りました。すとととと。」

「おう、凄いの。12歳の少女の包丁捌きとは思えん。」

「あっしらは奉納品ばかり食べてるから、料理ってしませんからねぇ。」

「異国の12歳の少女が、私なんかよりずっと主婦しているんですが。」

せめて俺好みの糠漬けを作れないと、俺の子供を任せる訳にはいかんざき。

「なんですと!どうしましょう、ジェニー?糠漬け教えて!」

「そうは言われましても、先ずは糠床から作らないと。」

「そうか、糠、糠。…糠ってなぁに?」

おい、そこなる農家の娘?


よし、釣れた釣れた。

3メートル越えのクロマグロだ。


「ねぇパパ。ふつーそんな3~400キロあるマグロを自力で持ち上げないと思うの。」

ユカリにも出来るだろ。

「出来ますけどねー。改めてパパってなんだろう?」

「旦那様、鮫も釣って下さいな。クロマグロ食べるなら、山葵は鮫肌で下ろしましょう。鮫肉は蒲鉾にするので。フカヒレもいいですね。」

「ジェニーが和食の作り方について、どんどん達者になっている件について。」

うちのお嫁さんの家事が一向に上達しない件について。

「仕方ないじゃない…って最近言えないのよね。多分、私達の中で色々一番成長しているのジェニーだし。」

「それだけ金髪の危機感が本物だと言う事じゃな。おんしがいつまでも正妻であると思っとったら大間違いじゃ。別に届けも出しとらんのじゃろ?」

この世界の婚姻届って、どこに出したらいいんだろう。菩提寺とか、檀家とか色々あった気がする。

「待ったー!私こそが慎吾様の正妻、サユリなるぞ!」

苗字は?

「………………。」

えぇと。ジェニーの性はグレイでいいんだっけ?

「もはや捨てた家名ですから、いくらでも旦那様に合わせますよ。」

「待って、待って。今読み返してるから。」

「自分の姓が書いてある文章があるって言うのも便利ですね。」

その前に、嫁入り先の姓を忘れる嫁もいないがな。

「わかったあー。私の姓は秋津。秋津サユリが私の名前です。第7話に書いてありました。」

そこまで遡らんでも、第57話で散々言ってるじゃ無いか。

「ああ、あの注釈ごっこしていて、途中で飽きた回ですねぇ。」

「うわ、私この回威張ってるじゃん。名前を覚えたって。」

5話経ったら忘れるうちのお嫁さんの残念ぷりよ。

「秋津サユリ秋津サユリ秋津サユリ秋津サユリ秋津サユリ秋津サユリ秋津サユリ秋津サユリ秋津サユリ秋津サユリ。どっかに書いとこうかしら。それとも刺青を掘ろうかしら。」

そこまでしても自分の姓を覚えそうにないうちのお嫁さん。


竜骨剣を使って自分の腕にアキツと掘ろうとするサユリをユカリやピヨちゃんが、寄ってたかって止める中。 

「ご飯が炊けましたよ。」

ああ、俺の方もマグロを綺麗に下ろせた。

ホロジロザメを転がしといたから、山葵を頼む。

「了解です。」

「あのう。奥様が竜骨剣を振り回しているんですが?」

龍神と多岐都姫が止めてんだろ。龍神は蛇神の上位互換だから、サユリは勝てないよ。

「神様の互換性を簡単に語りますな。」

まぁまぁ。赤身と中落ち、どっちを食うかい?

「…トロじゃないんですな。」

トロが良ければ食べなよ。俺は赤身が大好物だから、逆に食われないと助かる。」

「庶民派なんですかい?それともお歳だからで?」

後者だな。ネギトロ巻きより鉄火巻きの方が好きなんだ。歯応えというか、歯触りというか。

「お味噌汁も入りました。出汁は昆布で取りましたよ。」

うむ、鰹出汁だと、マグロと被るよね。さすがはジェニーだ。

「どういたしまして。」

「………。あの、蛇神と龍神と多岐都姫の争いって、それはもうラグナロクでは?」


飯だぞー!

「「「はーい」」」

ラグナロクがどうかした?

「…………。」



今回終わり。

えぇとだ。

本来なら、今回、太平洋の事件が起こる筈だった。そしたらまた例によって無駄話している間に文字数だけが積み上がって、話はちっとも進まねえ。

次回は一応、太平洋の伝説と言ったらこれだって連中が出てくる予定だ。

まさか、主人公が言い訳をする為に、居残り食らうとは思わなんだ。


ついで言うと、俺が釣ったクロマグロは全部家族に食われて、俺はシクシク泣きながらホロジロザメを擦り身にして蒲鉾を食ったさ。

シクシク。

「36」

誰だよ小学生は。

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