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第47話 ブロッケン

今、俺達は山登りをしてる真っ最中。それもいつもの車で。

今までは、自らの足できちんと登ったり(お嫁さん修行のため)、のんびりと空を飛んでたりしてる山越えだけど、どうしたもんかなぁと考えしぃしぃ実際現地に来て見てびっくり。わりかし緩やかな傾斜で、夏タイヤの粘着走行が可能だったから。

今更ながら調べて見たら、この山は、21世紀には汽車やらMTBやらで登山出来る様になるらしい。

それでいて標高1000メートルちょい。

あれだ。日本で言うなら箱根みたいなもんか。確か明治大正期には、谷川岳に馬車鉄道が走ってたらしいし、日光もいろは坂の入り口まで東武線が走ってたし、大体そんなとこ。

季節は初夏っぽい。

そんな少しだけ眩しめな日差しで、少しだけ汗ばむ、そんな気温。

この地球に四季があんのか知らんけど。

川一つ越えたら季節が夏から冬になるとか、当たり前の世界だし。


因みに今回の旅程には、一人のオッさんが同乗している。

名前をオットー・フォン・ビスマルク。

後にアドルフ・ヒトラーが自らのナチス政権を「ドイツ第三帝国」と評した時に、その「第二帝国」に当て嵌めた政権を担った「鉄血宰相」だ。(第一帝国は神聖ローマ帝国な)。

なんでこんな七面倒くさい、世界史の教科書に載っているオッさんと一緒にいるというとだね。



モーツァルトの浄化を終わらせて、オペラ座の客席でお嫁さんたちに揉みくちゃにされていた時のお話。

歴史上の偉人たる著名な音楽家に囲まれて、満員の観客の前で歌を披露させられた(俺に)ジェニーは、緊張感が解き放たれると同時に俺の胸の中でホッとして泣き崩れ。

初めて俺抜きで人外に相対したお嫁さんは、自らの生還と戦友(ユカリ、ピヨちゃん、八咫烏)の無傷凱旋にテンションが上がりまくり。

何が何だか、ちゅーされたり(これはユカリさん)、おっぱいを押しつけられたり(嫁ーズ)、ズボンの中に手を突っ込まれたりされながら(最後のは多分、興奮し切ったお嫁さんの仕業だろう)も、俺はロイヤルボックスに髭のオッさんがこちらを見つめている事に気がついていたのさ。

…みんな光の粒になって、消えていったのになぁ。前回の描写と矛盾するじゃないか。


隣にいたのは、禿げ散らかした頭とカイゼル髭から、あープロイセンの国王かなてなおじさん。

なんだかなぁ、ヨーロッパ編?に入ってから、無闇矢鱈と歴史上の有名人大集合かしらねぇ。しかし、ウィーンまで来てビスマルクねぇ。ヴィルヘルム二世とか出てこられても困るけどさぁ。第一次大戦をクリスマスまでに戦争を終わらせてくれ、とか頼まれても、俺知らんもんね。できるけど。


「お初にお目に掛かる。吾輩はプロイセン宰相、ビスマルクである。」

知らん知らん。さぁ次の街に行こう。

つか、ビスマルクの一人称は吾輩なのか。余計な知識だから、即効忘れよう。

嫁ーズを両腕に抱いて、オペラ座の客席から出て行こうとしたら、いきなり首元にサーベルを突き立てられた。ふむ。軍人上がりの政治家だけあって、ちゃんと基礎は出来てる。

若い頃は、所謂「決闘」を散々ぱらやったのに死ななかったヤンチャ坊主だったし。

「待てや。俺様の話を聞けや。」

オッさんになっても、ビスマルクは輩だったと。ていうか、一言で一人称を変えんなや。

まあ、サーベルを“縦に“親指で圧縮して丸いコインにするって芸当を見せてあげよう。

ぐりぐり。

ちょびっとインチキして、重量魔神の手は借りたけど、ほら出来上がり。

タイガー・ジェット・シンも、新宿伊勢丹前で倍賞美津子と一緒にビックリだ。(猪木は?)

「わぁ、普仏戦争で共にした我が愛剣がぁ。どーしよーどーしよー。」

クラリネット?壊しちゃった?

「パパからは貰って無いがな。」

で、それをプロイセン宰相が歌っていいんかね? 

「我が天敵のフランス童謡であるが、芸術に国境は無いのである。」

意外と剽軽な鉄血宰相でした。

あと、童謡ってゲージツなんだ。

「吾輩が鉄血と言われているからって、ゲージツ家のゲージツを出さぬ様に。」

「慎吾様?ゲージツってなぁに?」

クマさんの得意技、いつか教えたげる。


「大体、ベルリンで執務中だった私が何故ウィーンに来ているのか。それが知りたい。」

で、あんたの後ろに居んのは?

「プロイセン国王ヴィルヘルム閣下である。」

禿頭からそうじゃないかと思ってたけどさぁ。なんなん、ベートーヴェンからヴィルヘルムの繋ぎって。

でだ。この禿がヴィルヘルム一世って事はは、普仏戦争以降19世紀末の、ほんの10年間くらいが今か。

ベートーヴェンの時代から、また半世紀進んだな。ほんの数分で。


で、俺は呼んで無いから、アンタらが勝手に来たとしか思えないんだけどな。

「?。慎吾様、さっきの音楽家や観客達は慎吾様が呼び寄せた訳ではないんですか?」

アレはどちらかと言えば、音楽の力だ。

この時代に彷徨っていた音楽家の魂。救われたいと願う民衆の魂。

それが交響曲第7番を軸として、このオペラ座に現れたのだろうよ。

「困るのだよ。吾輩にはすべき事がある。」

ドイツ統一とか?ナポレオン対策とか?スペイン・ハプスグルグル家の継承戦争口出しとか?

「何でわかったの?」

ああ、そこら辺も、時代も何もかも全部ぐちゃぐちゃになってんだ。


とりあえずヴィルヘルム一世閣下はベルリンにお帰り頂いた。さっきから一言も喋んないし、居たら居たで描写しないわけにもいかないので、面倒じゃん。

てててて。どこ◯も◯アー。

「慎吾様、それ出したら旅する意味と意義がなくなっちゃう。」

いんだよ。どうせ目的も当てもない旅だし。

じぬんをぐろぐろ歩いてれば、沙悟浄だのオスマン帝国だのビスマルクだのが、この通りいくらでも転がってるし。

「オスマン帝国だのは、普通転がってないものですけどねぇ。」

「パパさぁ、せんこらはなびとか、初期のVOWネタなんか、もう誰も覚えてないと思うんだ。」

バカの◯山さんは、なんか物理的距離も精神的にも、随分遠いところに行っちゃったしなぁ。最近見ないけど、タスクさんは元気かなぁ。


立派なお髭さんをドアの向こうに蹴飛ばして、次はビス君をば。

「待て待て待たれい!これなんじゃこれ。向こうにブランデンブルク門が見えるぞ。ここウィーンよね?」

ん?名付ければ、次元超越移動扉だから。

「じげ…なんじゃとて?」

プロイセンの工業化を進めたオッさん大臣なだけはある。未見のテクノロジーの塊と瞬時に理解すると、しげしげとドアを観察し始めた。

一言も喋らず何しに出てきたのかわからないプロイセン国王よりはマシと見える。

あ、鉄血のオッさん。ちゅーもーく?

ほら、ブランデンブルク門の上に馬車の彫刻がない。つまり、あそこはナポレオン統治下でもある訳だよ。


「王様を蹴飛ばしますかねぇ。」

こうやって英国皇女のおっぱいを気儘に揉ンデール俺だぞ。オッさん国王のおっぱいなんぞ触りたくも無いわ。

「いやんもっと。」

「そういう問題では。」

ああもう、ドイツもコイツも好き勝手に喋るから、誰の台詞なのか整理すんのが面倒くさい。ドイツだけに。(堀越のり風に)

「そんな投げやりな小説が今まであったでしょうか?」

芥川あたりなら、とっくにやってそうだけどね。メタしかない小説。

「今、こっそりアメリカの政治家を洒落ました?」

拾い食いしようとして、途中で心が折れたパターンだから、あまり触れないでください。

「たまに旦那様が弱みを見せて頂けると、なんか安心するのよねー。」

「結構自爆しちゃう人よ。この人。」

「まぁ!なんて可愛い、愛しい人でしょう!」

「あの、吾輩を…」

ああごめん。ジェニーのおっぱいをさわさわしてたら、楽しくてもうすっかり忘れてた。

だって、ビスマルクの相手より、ジェニーのおっぱいを可愛がっている方が、100000000倍楽しいんだもん。

「えきぞちっくにっぽん!」

ハイハイ。

「やっぱり慎吾様が冷たいの。」

億しかし共通点ないじゃんさぁ。俺に突っ込まれて欲しいなら、もっと磨きなさいよ。

「つっ…。」

エッチなのはいけないと思います。

「何故わかった?」

「あの、吾輩…。」

あ、また忘れてた。


「ブロッケン山の怪物とな?」

ああ。

「それを退治に行くとな?」

怪物じゃなくて自分の影と、とっくに種は割れているんだけどな。うちの家族(神様と、その眷属)が見てみたい言うから。

コイツらの勧めに、なんらかの意味はあるんだろうし。ピヨちゃんの封印を解いちゃえば、種明かしをしてくれんだろうけど、ビスマルクの目の前でやる訳にも行かず、大体、それじゃ俺がつまらない。

「面白い!」

だから、俺はつまんないの。

「ブロッケン山の怪物退治。一口乗った!乗らいでか!吾輩の腕がなるわい。わはははは。」

あんたのサーベルだったら、くちゃくちゃに潰しちゃったけど?

「吾輩の本領は飛び道具にあり!ヨーロッパのワイアット・アープとは、吾輩の事也!」

確かにあんたは、拳銃による決闘をやらかしまくった事でも有名だけどさ。

国王はほったらかしてええんか?

「うちのドク・ホリディは馬鹿でも無能でも無いわ!吾輩居ずともナポレオンの一人や二人、なんとかするわい!」

史実では負けたけどねぇ。プロイセン公国。

だからブランデンブルク門の彫刻を取られちゃったんだし。


てなわけで。

変なオッさんが一同に加わった思い出語り完了。さすがに自動車の存在には驚いていたけど、燃料の爆発の勢いで回転力を得るレシプロエンジンの簡単な原理を説明したら、それだけで理解したみたい。

「世界きっての工業国たる我が国で作れんかのう。」

鋳金技術がここまでありゃね。ピストルや大砲が暴発して居る段階じゃ無理だ。

イギリスの方が実用化は早いし。

「わたくしの国ですね。さすがはわたくし!」

誇る箇所が違います。

「無理かなぁ。」

なんだろう。Eテレのアシスタント人形みたいなこのオッさん。はたらくおじさんのタンちゃんみたいなの。

「なぜだろう。なぜかしら。」

お嫁さん、それは小学生向け学習絵本です。

「科学物知り百科。」

皇女さん、それは学研ひみつシリーズです。

「ピヨピヨピヨピヨピー」

ピヨちゃん。コロ助科学質問箱まで引っ張り出したら、また脱線が止まりません。

「カーカー」

だから、八咫くんさぁ。チョーさんはたんけんはっけんぼくの街です。

「またワンワンさんが出てくるのかなぁ。」

それがわかってたら、ユカリさんはその名前を出さない様にしなさい。

「…君らは何を言っているのかね?」

「「「いつもの戯れあいです(だよ)」」」

「ピヨ」「カー」

「はぁ。」

おいおい、今回も4000字まで来たのに、パーティにオッさんが一人加わっただけで、全く話が進んでないんだぞ。

「そもそも進める気、あります?」

「今回の更新も、もの凄い無駄話の連続ですしね。読むだけ時間の無駄ですわ。」

だったら、お前ら少しは亭主に協力しろや。

まさか、一番不真面目でテキトーに生きてる俺が、一番真面目に一生懸命に話を進めようと努力する登場人物になるとは思わなんだ。



…まぁさ。

神様の化身であるピヨちゃんと、神様の眷属である八咫烏が、わざわざ種の知れたブロッケン山の怪物を目指す様に指示した段階で、ただの霧に映った影じゃない事くらい予測してたよ。

影じゃなく、実体化して魔神やら魔王やらになってんだろうなぁとさ。

実際来てみたら、これだよ。

大キレット(そんなもんが何故ブロッケン山にあると、ブロッケン山の土地神を小一時間正座させて説教したいとこだ)に、自分の生首を落として途方に暮れてる軍服姿の巨人が四つん這いになって、崖の下に手を伸ばしてるとは思わなんだよ。


…せめてさ、超人の方だと良かったのに。お父さんは悲惨な最後を(アニメ版だとラーメンにされてたからなあ)遂げたとはいえ、息子の方はウルフマンと映画版だと殺されがちな脇役正義超人タッグを組んでたくらいはメジャーだし。

まさか、モデルがスーパーロボットの方とはねぇ。アニキが「ズェッッット!」と雄叫びしに来ちゃうぞ。(元はコサキンネタ)

あ、俺が余計な事言うとほんとに来ちゃうか。

あそこの岩に和製プレスリー(宇宙戦艦ヤマト)と、Mr.ぶー(モンティ・パイソンのエリック)が隠れてるし。後者は故人だし。

こんな滅茶苦茶な状況で次回に続く。

…こんなのとビスマルクをどう絡ませりゃいいんだろう?


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