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第45話 音楽家たち(名前しか出てこない)

「それで、貴方様はどう為されるおつもりですか?私が見たところ、モーツァルトは既にこの世の者では無い様ですが。…にょ。」

あ、それ。回を跨いだし、もうね。スルーの方向で行くからね。

「あれれれれ?」

「でしょう。最近、慎吾様冷たいの。」

「それは、貴女方が面白くないからでは?」

「うぅ。神様も冷たいよう。」

「奥様、やはり脊髄反射ではなく、此処はきちんとネタを練るべきでは有りませんか?ほら、8時だョ!全員集合は、ネタ作りとリハーサルに週の半分を費やしたから、毎週の生放送・生舞台に耐えられるポテンシャルを維持出来た、と聞きます。荒井注さんが、体力の限界ってドリフを抜けたやつ。」

「でも、あの後ドラマに出て揉めたのよねー。浪越刑事役で。」

あのね、俺達は別にコント劇団じゃないんだよ。

「「「「違ったんだぁ」」」」

…君らね。


とりあえず。

次の目標はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。決めた。今決めた。そう決めた。

…確か、ブロッケン山の怪物を、ピヨちゃんと八咫ちゃんが推していたけど、後回しかなぁ。見つけちまったからには、しゃあないし。

俺達の旅の目的は魔王は片っ端から潰す事。

他にやる事ないしな。

「浜ちゃんの奥様が出てた懐かしの青春ドラマですね。」

それは「俺たちの旅」ですな。

一瞬ね。脱線しようとは思ったけど、俺の知識が足りないから流したのに。なんで多岐都さんが拾うのよ。拾えるのよ。

「日本のドラマですから。日本神ですから。日本の事はなんでも知っていますよ。」

そのこころは?

「中村雅俊の大ファンなのです。ぽっ。」

知らんがな。

「菜摘ちゃんの情報は、笑ってはいけないスパイで仕入れました。」

力を込めて言おう。何回でも言おう。知らんがな。


「慎吾様。他にやる事無いと仰いますけど、お嫁さんを可愛がるという使命がありますよう。」

「お妾さんを仕込む作業もありますよ。」

使命はともかく、“作業“でいいんだ。

「作業でもなんでも、わたくしが気持ち良ければ、わたくしの勝ちです。」

夜の生活は勝ち負けなんだ。

「まだまだおぼこいジェニーじゃ、慎吾様に勝てないでしょ?弄ばれるでしょ?」

「わたくしが気持ち良ければ、わたくしの勝ちですから。」

「壊れたレコードみたいに、リピートしてるわねぇ。」

多岐都姫さんが呆れてっぞ。

「そこら辺はほら。経産婦の余裕ですよ。」

お母さんの天照大神と同じ事を言う娘の多岐都姫命なのであった。親子だなぁ。

そういえば、多岐都さんの息子は事代主命、又の名を恵比寿さんだな。えべっさん。

「ああ、ビールの。麦芽100%プレミアムなのは、うちの息子とモルツさんくらいでしたね。」

自分の息子をビールにすんなや。

「そこらのコンビニで買えるのは。」

自分の息子をそこらのコンビニで売るなよ。

「因みにお父さんの大黒様は、横浜の方でビールになってました。」

親子でビールになんなよ。

いや、ビールにしたの、日本人だけどさ。


「それで、アマデウスを倒すと言うけど、どうするのかしら。神の目で見たところ、あの人この世界には居ないわよ。」

まぁね。手は有るから大丈夫。

「どういう事ですか?多岐都姫様。」

「…この子可愛いわね。私をちゃんと神様として見てくれる人、このパーティに居ないし。」

ワタリの俺、百姓娘、英国女王、エンシェントドラゴン、多岐都姫、八咫烏。

確かに多岐都姫を神様として崇め祭る人はサユリさんくらいしかいなかった。

半分以上神様とそれに準ずる(もしくは超える)メンツなんだけど、うち。

つうか八咫烏。オメエは神の使いだろさ。

「カー」

天照大神の使いとか、神話設定は今更どうでもいいけどさ。お前さんも一応神族だろうに。 

「カー」

そうですか。

「まぁ、例え、目の前の方が神様であっても、わたくしの神様はキリスト様だけですし。頭では多神教を理解していても、受け入れる事とは別ですね。」

君はカトリックに改宗しなかったから、殺されたという面があった女王様だしね。

「という訳で、この子私に下さい。」

多岐都さんがお嫁さんに抱きついて、耳たぶをカプカプ甘噛みし始めた。

ハイハイ、ユカリさん。障壁を解除して。

「はーい。」

「…ピヨ」

綺麗な娘さんの多岐都姫さんは、再び小鳥になりました。めでたしめでたし。って人を突くんじゃありません。くすぐったい。


「さっきの娘さん、ピヨちゃんに戻っちゃいましたねぇ。」

あのままほっとくと、お前さんの貞操をピヨちゃんに奪われんぞ。

「なんでジェニーといい、ピヨちゃんといい、私の身体を欲しがんのかなあ。」

「あの、わたくしは現在進行形で、ingで奥様に貞操を奪われかけているんですけど?」

なにかと乱れてるなぁ。我が家。


「ピヨ」

「カー」

「がおー」


「空飛ぶ三姉妹がなんか会話してて、可愛いですよう。」

八咫烏って雌なんだ。

というか、八咫烏って多岐都姫からすると甥っ子に当たると古事記には書いてあると思うけど。

「可愛い雛は全部女の子なんです。」

そうですか。お嫁さんの鼻息が荒いよう。

あとドラゴンの鳴き声って、がおーなんだ。

「まぁ、ユカリさんは何しても可愛いのですょ。」 

こらこら、ジェニーまでユカリさんを抱きしめ無いの。エンシェントドラゴンが、ただの女の子に背後から抱きしめられてもがいている姿なんか、なかなか見れないけどさ。

「普通ドラゴンさんなんか見れませんけどね。ああ可愛い可愛い。」

「が、がお」

いや、ユカリさん人間体なんだから普通に言葉を発しなさいよ。

「ゆうしゃおーがおがおがー」

…それが言いたかっただけかい。


「それで飛行物体三姉妹は何言ってんですか?」

んー?モーツァルトの倒し方の打ち合わせ。

モーツァルトの倒し方、知ってますよ。

「懐かしいですね。元ネタは任天堂でしたっけ?」

ネット上のガセネタだったらしいけどな。

「任天堂の内部留保額を考えると、100年くらい何もしなくても倒産しないと思いますけどねぇ。」

現金だけで兆に近い預金を持っているそうだからねぇ。

「奥様。任天堂ってなんですか?」

「花札とトランプ会社です。」

任天堂の内部留保額を知ってるのに、業務内容が40年前のまんまなんだね。

「ソニーはトランジスタの会社で、セガはジュークボックスの会社です。」

もっと情報が古くなった。そろそろ俺もついていけないぞ。

「なお、箱とFXは…。」

ハイハイそこまで。だんだんネタがヤバくなって来た。

「トミーやSN…。」

終わんねぇな、ジェニーとユカリさん。うちのお嫁さんを大人しくさせてくれ。

「わかったー。」

「きゃあユカリさん、そこ触ったら駄目ですう。そこはらめなの〜!弱いのお。」

らめ〜って表現し出したの誰だろう。だ行だけ言えないとか、無理ないかなぁ。

「今考えないでよう。うなななな。」

うななななって言う喘ぎ声は、お嫁さんと身体を重ねてそれなりに経つけど初めて聞いたな。

「パパからおかーさんの弱点、教わってるしー。」

「慎吾様ぁ〜。娘に何を教えてんですかぁ〜!」

「…」

ジェニーはどした?何黙ってんの?

「ジュークボックスって何ですか?」

「「「今、そこ?」」」


フォノグラフと言う機械がある。

金属筒に錫を巻いただけの代物だけど、これを針で削ると音楽や音声を録音再生出来る。

オーディオ機器の元祖だな。

ジェニーは歌を歌うから、わかるだろう。音はものを震わせる能力がある。

「教会で讃美歌を皆で歌っていると、窓などがビリビリ鳴り出すやつですね。」

そ。あの震えを記録する道具だ。

「そんなの、何の役に立つんですか?」

歌手の歌や演奏、政治家の演説、家族の記録などね。要は情報の伝達手段の一つだよ。

「ふーん。」

丁度いいや。モーツァルト退治に使ってみようか。

「音楽を、ですか?」

「私、お祭りで太鼓を叩いた事はありますけど。」

「わたくしは歌う方専門で、楽器には縁がございません。バンドメンバー募集。当方ボーカル、みたいな。」

君らじゃないよ。あー、ジェニーには手伝ってもらうかな。阿部真里亞さんで。

「誰ですか?旦那様の隠しお妾さんですか?」

「?。私の慎吾様・女レーダーには引っかかってませんよ。」

怖えよ。どんどん新しいスキルを開拓してく、うちのお嫁さんが怖えよ。


阿部真里亞さんこと、「アヴェマリア」はシューベルト作の歌曲。因みに、聖母マリア様助けてーってだけの歌詞だから。讃美歌として性格は合ってる。

「へー。知らなかった。シューベルトってシンガーソングライターなのですね。」

おいおい。

「だから、わたくしの知識はただの詰め込みで、肝心の部分はすっからかんなんです!」

わかったから悲しい事言って、胸を張らないように。おいおい実践で教えてくから。

「おいおいの二段活用。」

お嫁さん、うるさいぞ。

「せっかくだから胸を揉め!」

お妾さん、うるさいぞ。てか、人前で出すな。


シューベルトはベートーヴェンの弟子で、ベートーヴェンはサリエリの弟子で、サリエリはモーツァルトの友達だ。

今回は、この“縁“を利用する事にする。

「遠いなぁ、うちのお母さんの妹の隣に住んでた女の子の美代ちゃんくらいに遠いなぁ。」

人物相関図を書くと、美代ちゃんより近いぞ。ほとんど一直線だ。

モーツァルトは先におっ死んだけど、他3人は全員被って活動してるから。



つうわけで、やって来ましたオペラ座だよ。

ベートーヴェンとの繋がりなら、アン・デア・ウィーンの方が強いんだけど(住んでたからね)ウィーンのホールときたら、そりゃもうオペラ座でしょ。

「怪人のですね。」

それの舞台はパリだなぁ。

「海神…。」

それの舞台は船橋だなぁ。

「か…

面ライダーV3のカメバズーカとか広げるなよ。

「奥様、だから脊髄反射はあれ程駄目だと。」

「思い付いたら言いたくなっちゃうじゃん。」

気持ちはわかる。わかるけど、いつまでもウィーンに居てもしゃあないんだよ。


重々しい音と共に、シンプルかつ重厚な彫刻が施された扉の一枚を開く。

本来なら、色々面倒くさい手続きやら、料金やらかかるんだろうけど、誰も俺達には構おうとしない。街の人々は相変わらず生気のない顔を俯かせて誰かに構う様子を見せない。

大体、さっきまでいた街にはオスマン帝国が攻めて来てたから16世紀、この建物が完成したのは19世紀、モーツァルト達が生きていたのは18~19世紀。

全部バラバラだ。物語の整合性とか何処行った?後でちゃんと収拾がつくんだろうな。


中はしんと静まっている。

誰もいない。いる訳がない。

オペラ座に近づくと共に、俺がさりげなく人払いの魔法を掛けたからだ。

これはドラゴンちゃんやユカリさんが使う障壁の派生版。障壁の範囲を広げただけ。要は障壁で人を押し出すと言う力技で、よくある精神に働きかける繊細な魔法とは訳が違う。魔王?もちのろん、中には入れん入れん。

んで、ここで俺が取り出だすものは、さっき話題に登ったコレ。

てててん。じゅーくぼっくすー。

「慎吾様はのぶ代さん世代ですか。」

「わさびさんの方がもう長いのにねー。」

「ろーがいよ、ろーがい。」

うちのお嫁さん達が酷い件について。

てか、今更ながらお前らも16世紀の人間だよな。

「「へーせー生まれでーす。」」

お嫁さん達のサバ読みが酷い件について。


ジュークボックスの中には一枚のレコード。(レコードもさっき一瞬出て来たな。よし、伏線回収にしちゃえ。)

(パパ、交通事故みたいな物拾っちゃダメじゃないかな)

(ユカリさんは俺のブレイン内に自由気ままに入ってくるね)

(パパの娘なので)

(血の繋がりはない筈だけどなぁ。)

「レコードて。今時レコードて。」

うるさいぞお嫁さん。

「しかもLPレコードて。4枚組て。」

ドーナツ盤じゃ足んないからだよ。

「ドーナツ盤て。てんとう虫のプレイヤーて。」

だってこのレコード。ジャケットにこう書いてあるんだぜ。

「交響曲第7番イ長調作品92」

“運命“や“田園“の様なタイトルが無い分、リズミカルで転調の楽しい、タイトルイメージに引き摺られる事なく自分のイメージを膨らませる事が出来るのも楽しい、ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン交響曲の最高傑作だ。


…てんとう虫のプレイヤー知ってるうちのお嫁さんは、本当に15歳だろうか?

「へーせー生まれでーす。」

うるさいよ。

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