第41話 ドイツへ(つきそうもない)
さてとジェニーさんや。
毘沙門天も弥勒菩薩んとこ行っちったし、次は何処へ行こうかねぇ。
「あれ?天竺に行くのでは無いのですか?お爺さんや。」
うーん。弥勒菩薩が出てきちったからなぁ。
天竺行っても多分空っぽだよ。婆さんや。
人も仏も妖怪も魔神も。何もかも。
「クリスチャンのわたくしにはよくわからないのですが、弥勒菩薩様って言うのは偉い方なのですか?」
「なんか足を組んでるし、煙管持ってたみたいな手をしてるから偉いんじゃ無いかなぁ。」
サユリさん、あれは半跏思惟と言って仏様が考え事をしている姿なんだよ。
あんま失礼な事言ってると、仏罰当たるよ。
てゆうか当てるよ。ユカリさんが。
「私でも知ってる毘沙門天様を伊吹吾郎にして遊んでた慎吾様に言われたくありませんよう。」
伊吹吾郎にしてたのは、龍神の筈のユカリさんだと思うけど。
ま、わかりやすく説明すれば、仏教に於けるある意味でラスボスなのだよ。
「ボスなの?」
太陽にほえろ!的なね。
ジェニーにわかりやすくイギリスに例えてみようかしらん。
突如、フランスかドイツかスペインが、、或いはまとめてドーバー海峡を越えて攻めて来たとしよう。
イギリス海軍は既に破れ、僅かな陸軍の生き残りが倫敦塔を守っているが、援軍の見込みはない。ウェールズもスコットランドも沈黙して久しい。
イギリス王家が最後の時と、覚悟を決めたその時、ブリテン島の王が復活する。
ジャジャーン!
伝説のイングランド王アーサーだ。
イングランド王国の終末の時、プリテンの守り神アーサーは外敵を滅ぼし、残されたケルト人は永遠の王国にその身を移す。ってな感じ。
滅茶苦茶な例えなのは承知。
ラグナロクの方が例えとしては適切だと思うけど、敬虔なプロテスタントのジェニーに何処まで通じるかわからんしな。
一応、北欧神話は英国神話の源流なのだけど。ついでに民族的にも繋がりが有るけど。
ま、終末神話なんか大体どの神話も同じか。
「ケルト神話って、イエス様の信仰の中に混じったりして、いつしか消えて行きましたから。でも、旦那様が苦労してアーサー王に例えて頂いたのはわかります。」
うむ。わかればよろしい。
「アーサー王と言うと…。ああ、あの料理が絶望的に苦手な女の子ですね。」
お前、言っちまいやがったな。
ただでさえストーリーが迷走を始めて、世界まるごと魔神退治漫遊記になっちゃって、おまけになまじ神話をモチーフにしてるから、他の似たような話とはネタ被りが無いように苦労に苦労を重ねていると言うのに。
この上、英雄探しまでさせる気か?
「慎吾様慎吾様。神話を扱う以上仕方ないと開き直りましょう。日本神話でしたら私の好きなマンガ夜桜四じ…。」
うるさいよ。後になって資料として読んで頭抱えたんだ。作者が。
それで天照大神の扱いがああ雑になったんだ。
「本当にバチが当たるのは誰なんですかねえ。」
知らんがな。
「そう致しましたら、次何処にしますか?大体ほら、最強のドラゴンを味方にしている段階で、キリスト教世界のモンスターって小粒なんですけど。ドラゴンは悪魔の象徴でもあるし。あとはゾロアスターとかギリシャとかの神話を引っ張ってみましょうかしらね。」
んー。つうか、魔神退治は単なるお嫁さんの修行用経験値稼ぎなんだよ。おかげで懸案だった蛇神能力の暴走も無くなったし、銀閣大王も一撃で退治したし。当分要らんのよね。
「えっへん!」
「魔王を経験値にしか見ない夫婦ってなんなのかしら。」
今更だ。今更。
でだ。次に俺達が取るべき行動ってなんじゃらほい?
「どうでもいいわ。」
お妾さんに、今後の俺達の指針が7文字で片付けられちゃった。
「とりあえずは、しばらく魔神巡りって方向でよろしいでしょうか?」
うん、まぁそだね。
そもそも、お嫁ちゃんだのピヨちゃんだのジェニーちゃんだのが俺の後をポロポロ付いてくるから訳わかんなくなっちゃったけど、明確な目的が有った訳じゃ無いんだよね。
お嫁さんの武者修行も、国が滅んだ(滅ぼした)お知らせに行ったら12歳に「抱いて」と言われたりした事も、俺がやってる事はやる事なす事全部出たとこ任せだ。
これは別にこの世界だから、どうやら此処が地球らしいからって訳じゃない。
ワタリの俺は、いつもそうして物事を解決に導いてきた。
それだけの力が俺には有るから。
ちょいと違ったのは、地球には宗教と神話が沢山あって、その分だけ神様・仏様が居たって事だ。
この世の中、神様だらけだ。
この題名でラノベ一冊書き殴れるだろ。
「転生したら世の中そこらじゅう神様だらけでした。」
すんません、まんま…この話の事でした。
今まではみんな何処も一神教だったからなぁ。
神様は1人だけだったし、神様に会えれば神様の願いもわかった。
けど、今のところ、天照大神と弥勒菩薩には会ったけど、何も話は進んで無い。
願いもよくわかんない。
天照は封印を解いたったのに、文字通り天の岩戸に御隠れ状態だし、弥勒は西の空から見下ろしていただけ。毘沙門天を回収したら、さっさとどっか行っちゃったし。
「西に行きましょう。さっき話が出たドイツに。」
ドイツは確かにインドの西だけど。
日本っぽいとこの西にイギリスっぽい国があり、その北にロシアっぽい国があって、更にその北にアラスカっぽい土地があった。
でロシアっぽいとこまで南下して西に向かったらゴビ砂漠で、インドの先にドイツがあるの?ああもう、何が何だか。
「あそこにはブロッケンという魔神がいます。アレを斃すというのはどうでしょう?」
ブロッケン山の怪物の事?それ霧に映ったただの影だよ。ジェニーの時代はどう判断してたのか知らんけど、物理現象なのよね。
「カー」
なんですか八咫ちゃん。行ってみろって?
「ピヨ」
ピヨちゃんも賛成ですか。天照大神の娘と、天照大神の使い魔がそういうなら、何か有るのかな?
「カー」
俺は使い魔じゃないって?
青鬼に操られてた分際でねぇ。でもま、一応太陽神でもあんだよね。君。
わあったわあった。
差し当たり(いつもの通り)何も導が無いんだから、八咫烏の導きを信じてみようか。神の遣いだしな。
ついでに折角のジェニーの提案だしな。
「わたくしはついで、ですか。」
神様と並べたんだから、しょぼんとしないの。
では、いざドイツへでっぱつ。
ドイツへはいいんだけど、遥か先にヒマラヤらしい山脈が見えてるんだな。
あの高さはヒマラヤかアルプスだろうけどさ。見覚えのある山があんだよね。
さて、どうやって越えようかね。
北のロシアっぽい帝国に向かった時に越えた山脈はうちのお嫁さんですら徒歩でよっこらせと越えた(なんか死ぬとか喚いていた気もするけど)低さだけど、流石に
“8千メートル級のをぉ、山々をぉ、徒歩でぇ、越えるわけにもぉ、いかないのでぇ“
「慎吾様慎吾様。どうでしょう喋りは、実際にそばでやられると凄えウゼェです。」
サユリさんは、こないだから時々言葉遣いが乱暴になっちゃったな。これは性的に矯正が必要かな。
「妻としての甘えです。」
開き直られちゃった。
あれあれ、そういえば北から天竺に行く時に、あの山脈(巨人付き)を越えた覚えが無いぞ。
つまり、ゴビ砂漠(推定)はロシア(推定)の真西にあり、その更に真西にヒマラヤ山脈(推定)が聳え立っているわけかいな。
時間と土地だけで無く、気候もまじゃりんこしてんだ。この世界。
「という事で、わたくし達はあの魔の山を越えねばなりません。」
ザマス眼鏡をかけたジェニーちゃんが、指し棒で雪を頂いた山脈を指します。
「あのウラル山脈ですが…」
ちょい待ち、ジェニーさん?
「なんですか旦那様?」
アレさ、ウラル山脈にしては高くない?高過ぎない?と注意を促す俺なのです。
「造山運動です。」
違います。普通、いきなり造山運動で標高は4倍にはなりません。
「えー?わたくしの頭良い子ちゃんキャラを6行で否定しないで欲しいなぁ。」
多分ね、ウラル山脈は今ネパールとか、あっちの方に出掛けてるなぁ。
「あの、山とかはそうそう歩かないと思います。大体、何故あの山脈がウラルでは無いと断言できるのですか?へくちん!」
おや、風邪引いたかな?
「ずずぅ。ただのくしゃみですから。苦沙弥先生ですから。」
「あれれ、ジェニーちゃん“猫“読んだ事あるの?あれ、面白いよね。」
「奥様からもわたくしはちゃん付けですか。」
ちゃん漬け…。
「胡瓜のお漬物ではありません。」
まだボケ切って無いのに、何故わかった?
「旦那様のボケに関しては、突っ込めるスキルが何故かさっきから身に付きまして。」
それは助かる。沙悟浄までボケ始めた時は、どうしようかと思ったよ。
「ああでも、隙あらばボケる所存です。今、隙アラバマって洒落が浮かびましたけど、なかった事にしていいですか?」
そうして下さい。というか、せっかく君が話を進めようとしてくれたのに、君が率先して脱線始めたら、いつまで経っても先に進みません。
ではでは。話を戻すぞ。
簡単に言えば、ウラル山脈にある山とは、山影を違う。あれ、エベレストだ。
「エベレストって最近言わないと思います。」
「慎吾様。最近は名前や地名は現地語で言う事にしているので、今ではチョモランマが一般的です。慎吾様って昭和ですか?」
確かに俺は昭和生まれだけど、そしたらお前ら何生まれよ。
「天文です。」
「ユリウス暦1537年です。」
あれ?お前ら実は同年代なんだ。
「そりゃ、私とジェニーは3つしか違いませんからねぇ。」
「お姉様とわたくしは天文館シスターズなんですよ。」
なんで此処で天文館駄洒落が出てくるの?
「雪山を見てカキ氷の白熊を思い出したので。ほら、ミスターが噴いた奴。」
「慎吾様。実は今回、どうでしょう回なんです。」
知らんがな。
「「知れよ!」」
わぁ、嫁と妾に意味不明な反論された。
「パパ、私が飛ぶ?」
それも良いけど、素でユカリさんの背に乗っただけじゃ、多分ジェニーが死ぬな。
寒さと酸欠で。
「まだ覚えたてだから、出来れば死にたくないなぁ。」
何を覚えたてなのかは聞かないけど、なるべくなのね。
「てゆうか、お姉様は大丈夫なの?」
お嫁さんはね。鍛え方が違うから。(蛇神を使役してるから、冬眠モードも可能なんだよね。多分)
「知らないうちに私はジェニーのお姉ちゃんになってたのね。」
「だってわたくしの事を妹と仰いましたもん。」
「……慎吾様、この12歳、なんだかとっても可愛いので、今晩頂いて良いですか?」
そっちの方は、お嫁さんには教えてなかったと思うけど。
「何事も経験です。」
「あの、わたくしはお姉様の経験値にされる覚悟はまだ無いので。旦那様にボロ雑巾に扱われる予定ですから、その後でしたらお好きなように。ですから少しお待ち下さい。多分ちょっとです。」
失礼な、女の子は常に大切に扱う紳士が俺ですよ。
「変態紳士と。」
お嫁さんさあ、全裸紳士だの変態紳士だの、最近雑な亭主評価ばかりですよ。
「変態プレイにも興味がないと言えば嘘になるのですよ。」
「あれ?お姉様と旦那様って、割とノーマル派?」
「ソフトからハードまで、身体と精神が裏返しになるくらい凄いけど、中身は割と。」
「ふむ、だとするとわたくしも認識を改める必要がありそうです。」
だから、いつになったらドイツに向かうのよ。
「パパ、私はどうしようか?」
次の更新まで待ちなさい。