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第39話 深沙大将登場(ただし干物で)

西にあるんだドリームの国。

つうわけで、ジェニーの提案に従ってゴーゴーウエスタンなわけだけど、今は砂漠の真っ只中。元の地球の地理に照らし合わせると、ゴビ砂漠に相当すると思うんだ。この辺。

でももっと北のモンゴルよりだった筈だけどなぁ。

因みに、なるたけ車で楽したいので、人家鄙な荒野を進んできたんだけど、車中泊だと「エッチな事が出来ないじゃないか」と、うちの女子2人が写真部のロボット化してます。やあ。

「ロボットじゃないよ、アンドロイ…

言わせねえよ。ジェニーさん。


「それにしても、一面砂砂砂砂。砂の海ですねぇ。」

砂お、いや素直な感想を乾燥の国で漏らすお嫁さん。さっきから窓へばり付いてます。

ユカリさんは屋根で日光浴。何故かマイクロビキニを着てサングラスかけて、寝転んでます。時々転げ落ちてフロントガラスにおっぱいビキニを押し付けてるけど、あのね、平面だし、この砂漠の方が高低差あるし。

なので、ジェニーが後部座席から身を乗り出して、俺の話し相手になってんのさ。

助手席に移って来てもいいのに。

「旦那様の隣はユカリさんか奥様で無いとなりません。」

変に頑なな人だなぁ。(なの送り仮名がややこしい)

「下でしたら喜んで。」

それはアクセル操作の邪魔だなぁ。

「騎乗位は…

言わせねえよ。そんなこったろうと思ったけどさ。


「ところで慎吾様?」

なんですかサユリさん。2時の方向にお婆さんなんか見えませんよ。

「やっぱりいるんだ。幻かと思ったけど。」

「わたくしには何も見えませんが、旦那様達には見えるんだ。」

「私にも見えるよ〜。」

ああこらユカリさん。窓を開けないの。折角クーラーで冷え冷えなのに、冷気が逃げちゃうでしょ。とりあえずお帰り。

「ただいま。」

「なんでこんな砂漠にお婆さんがいるのでしょうか。」

うんうん。不思議だねー。不思議だと思ったら調べてみたらいい。

「どうやって?」

目をね、蛇神モードに切り替えて見てみなさい。蛇神は今多分、外は暑くて、中は冷や冷やで自律神経失調症になってるかもしんないけど。

「へびがみもおど?」

目をね。よく凝らすんだ。そのかわり焦点を少しぼやかしてね。

「はい。ええと、なんだろう。お婆さんの周りが灰色です。煙みたいなのが立ってます。」

そのまんま、ジェニーを見てみなさいよ。

「ジェニーの周りには、白いものが纏っています。」

よしジェニー。エッチな事を考えるんだ。

「エッチな事はいけないと思います。」

「わあ、白が桃色に変わりました。」

ジェニーは今日、アンドロイドモードらしい。懐かしいなぁ。

「どういう事ですか?」

要は、そいつの「気」を測ったんだ。

普段は敬虔なクリスチャンである(筈)のジェニーが纏う気配は白だし、いやらしい事を考えれば欲情を表す桃色になる。

「………!」

ああ、俺を見ようとしても無駄だぞ。修行を積んで漏らさない様にしてるから。

「修行してどうすんですか?これ。」

要は「殺気」の視認化スキルでもある。修行を積んだ剣豪は殺気を読めるし、殺気を消せる。

「なるほど!」

もう一つ。女の子が欲情してるのも一目瞭然だから、色々と使い道があるのよ。

「…なるほど。」

ほらほら、お嫁さんから殺気がデロデロ出てる。消しなさい。消しなさい。


「それで、わたくしには見えない砂漠を歩く老婆って何者ですか?」

灰色って事は、黒に染まっていない、文字通りグレーゾーンな存在って事だ。

「グレイ。」

だからオメーのこっちゃねぇよ。

まぁエゲレス人には文化的に難しいか。

という訳で、サユリさん。砂漠、お婆さん。

連想する人間じゃない何かってなぁに?

「バジリスクとか?」

「あ、それうちの!」

モンスターの取り合いしてどうすんの、それに俺はサユリさんに、「郷」の「怪奇」を尋ねたの。

「冗談ですよ。“砂かけババア“ですね。」

そ。

「…って妖怪ですかあれ。やだ怖いです。」

蛇の妖怪を飼ってるのに、今更何言ってんの。

「なんかようか…

言わせねえよ。

「わたくしにオチを言わせない回ですか!」

つうか「我が家」回かもな。


「で、あれどうしましょう。例え妖怪とわかっていても、お婆さんが酷暑の砂漠を歩いているのは見るに見かねるんですが。」

おいおい。日本の妖怪が中国の砂漠を彷徨っているんだぜ。その意味を考えろや。

「日本というのは?」

俺とお嫁さんの国だ。ジパングと言えばわかるか?

「ああ、黄金の国の!」

まぁ金より銀が取れるんだけどね。

「なるほど。旦那様達はジパング出身でしたか。」

ああ。日本って国は信仰が独特でな。まぁ仏教系自体が割とそんな性格もあるんだが、日本には掛け言葉って文化もあって、洒落が存在に影響を与えるんだ。

因みにあの砂かけババアな、砂漠に合わせてああなってるだけで、正体は別物だぞ。

「は?お婆さんじゃないんですか?」

気配オーラが灰色って事は、「どっちにもなれる」って事だ。俺が見る限り「善」の気配が濃厚だ。

「どゆこと?」

恐らくアイツは砂漠に於いて善性を施す“神“であり“妖怪“つまり鬼神だ。

「そんなんいるんだ。」

いるんですよお嫁さん。西遊記に出てくる砂漠の仲間っているでしょう。

「あ!沙悟浄ですか!」

そ。

「沙悟浄ってなぁに?」

「刺又持ってる河童さんです。」

「ムトちゃん?」

時事ネタかいな。引退発表したし。

「カッパしゃん頑張ってえじゃなくて。んーと。シロー?」

「ああ、ウッチャンか。」

ウッチャン悟浄は今や知っている人少ないだろうね。

「あと仲本さん。」

前回の流れから、一番最初に出さないとダメでしょうが。

「それはウッチャンのするキンパっつぁんです。」

ジェニーはウンナンファンだった。

つうか、文字だけでよくわかったな。


「ねぇ慎吾様?沙悟浄って神様でしたっけ?」

どっちかってえと、仏様だな。転じて「深沙大将」になる。観音様の化身なんだ。

「便利ね観音様。何にでも化けるのね。」

学生服屋が怨霊になって天満宮になるのが宗教だぞ。

「学生服屋って言ってもわからないと思うの。漢字で書く人どれだけいるんだろう。」

田舎行けば葫蘆看板残ってるよ。

「というか、天神様が学生服屋な訳で。」

色々間違っているけど、そのくらい懐が深いのが我が国だ。

「言わせねえよ。」

惜しいなジェニー。我が家と我が国じゃ、大してかかってない。


「あのう、慎吾様?」

なんですか?

「河童が乾涸びてますよう。なんで砂漠の神が乾涸びるんですか?」

あいも変わらない無駄話をしてる間に、砂かけババアの存在をケロッと忘れていたのでしたよ。久方ぶりに思い出して、試しに近寄ってみたら、干物が転がってましたとさ。

「髪もすっかり…。」

やめたまへ。神の髪の話は辞めて差し上げるんだ。君には情けというものがないのか。

「わたくしはほら、この通り腰までのプラチナブロンドですから。」

そうだけど。確かにそうだけど。

「因みに断頭台に立つ時は、髪を括るか、ばっさり伐採するかの二択です。」

それ、笑えないなぁ。ギロチンが発明される前の時代に斧でゴリゴリ斬られる人だから、君。

「パパ大丈夫。あの有名な絵には続きがあってね、あのあとみんなでスイカ割り始めるから。」

ユカリさん、それは続きではなくパロディといいます。


「いや、何を話しているのか知らないけど、この干物どうしましょう。」

君の未来の話だけど、勿論言えやしない。

「ジェニーがウンナンの話ばかりしてるから。」

「いいえ。奥様が学生服屋の話ばかりしてるからです。…学生服ってなんですか?」

ああ、それはね。

「そろそろ助けろやー!」

いきなり起き上がった河童に叱られました。生きてたよ。


「生きてますよ。妖力も神力もすり減ってたんだから。遊びで砂かけババアになってた訳じゃないし、河童になる妖力しかなくなってこの様ですわ。」

なるほどねぇ。 

「で、妖力でも神力でも良いから少しわけやがれ。よろしくお願いします。」

土下座してますけど、口調はべらんめえ。

「分かりますよ。あなた方が只者ではないのが。」

すごいですねー。 

「所さんはいいから。」

ゴビ砂漠で行き倒れてた河童に通じる日本の懐かし流行語。


とはいえなぁ。俺の力を注ぐと多分破裂すんぞ。そのくらい、俺の力は澄み通っている上、密度が濃い。お嫁さんが使役する蛇神は、草薙の剣が尻尾から取れた様に、実は八岐大蛇の亜種。ピヨちゃんはモノホンの神様だし、八咫烏にしても、みんな日本神話に関係する異形達だ。ジェニーはクリスチャンだし。

仏教系はうちには居ないぞ。

と思ってけど、居たなあそう言えば。


ユカリさんだ。エンシェントドラゴンとか古龍とか言っているが、基本は龍神だった。

うちのドラゴンちゃんの艶福ぶりにすっかり忘れてたけど、仏教で言う「ナーガ」からの枝分かれ分家進化だ。

当然、うちのユカリさんもナーガの子孫な訳で。十六善神と八部衆だから同格くらいでいいかなぁ。

そっか、蛇神が嫌いなのもそれだよ。四神・五獣で言うところのライバルだ。

なのか?まぁいいや。

んじゃ、ユカリさん。

「わかってるよ。カッパしゃんを助ければいいんだね。」 

「助かる龍神殿。」


「ユカリさんって神様だったのですね。」

「あの都を破壊し尽くしたデカい竜も慎吾様のお妾さんなんですよ。ユカリさんもそれなりに美しい女性だそうですけど、慎吾様に手を出さない様に幼女の容姿なんです。」

「奥様。主語と接続詞がおかしいです。手を出さないではなく、出されないではありませんか?」

「ユカリさんが、慎吾様に、手を、出さないように、幼女の姿なんです。でないと、竜のお妾さんに折檻されるから。」

「どこまでモテモテですかうちの旦那様。これじゃいつ番が回っているかわかりません!」

姦しいなぁ。文字通り女が3人いると。

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