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日本神話再考

しかしね。今、お嫁さん達を起こす訳にはいかないしな。

「神様と言っても信じないでしょうしね。むしろ変な空間に閉じ込められて、得体の知れない私の姿を見て混乱するだけでしょう。貴方の奥さんは邪神を使役している訳ですが、その邪神がどう暴走するかわかりませんし。」

「大丈夫ですよ。」

お嫁さんの顔から蛇神が顔だけ出して答える。面白い絵面だけど、一応俺には大切なひとなので、顔だけ蛇とかは辞めて欲しいなぁ。

「これはご主人、失礼。何しろ始祖神相手ではただ長寿して神聖を帯びただけの私では、天照大神様の神威に対抗する事は不可能で御座いまして、唯一我が主の窓口となる顔面をお借りするしか無いのですよ。」

妖怪へび女。

へび女には幾つかの展開があるけど、大体顔(目)が蛇的に変わったり、髪の毛が蛇になったり(ゴーゴン・メデューサ系)、よくわからないけどへび女って言い張るデザイン(仮面ライダーストロンガーより抜粋でございます)だったりするけど、お嫁さんの顔から蛇の鎌首がびょ〜んと伸びているデザインも中々珍しい。


「あくまでも私は野生の蛇の変体(変態)でしかありませんし、始祖神の管理の上に存在する事が許される神です。少なくともご主人、我が主、天照様に逆らう意志も能力もありません。」

ですか。

「んじゃ、そうゆう事で。」

うにょん、と蛇神は鎌首を引っ込めて15歳の少女の寝顔が現れた。可愛い。

「ハイハイ、ご馳走様ご馳走様。」

何、顔赤くして剥れてんの?天照大神様?

「私も女の端くれですから。生理は上がって2000年くらい経ちますけど。」

知らんがな。


「そうですね、この極北の魔王程度ならば貴方のお嫁さんにちょうどいいかもですね。」

ふむ。その極北の魔王とやらに、あんたは封印されている訳では無い訳だな。

「極北と通り名が付いている訳ですから、魔王の中では最弱です。ど田舎に左遷されてる魔王です。」

おいおい、四天王とか出てくるんじゃ無かろうな。だが、四天王では最弱よ!とか言って、シルエットがあと3人出てくるとか。

「仏陀さんとこの四天王はあっちゅう間に負けましたけどね。」

あそこはお不動さんとか、迦楼羅さんとかの方が強いみたいだし。

「因みに不動明王は別空間に封印されてます。」

あれまぁ。

そういや、あんたの子供や子孫に荒神様が何人かおったろ。

「私がこの有り様ですよ。大体、夫の素戔嗚だって瓊瓊杵だって多少は暴れても大した事してないし。」

酷えな。古事記を書き換え無いといけないじゃないか。

「それにですよ。ワタリは神より上位の存在な訳ですから、極北の魔王なんかペペペのペです。」

やばい、この天照大神様も面白い。


「けどね、一番の問題は、原因がわからないと言う事なんです。全てを司る超大魔王がいるのか、他に原因があるのか。」

魔界村みたいに軽々しい大魔王ですね。

「なので貴方の使命は、この時間と空間が入り乱れた原因を解明し、元に戻す事となります。フェルプス君。」

その名前出すと、あなたが自動的に消滅する流れになりますから、辞めといた方がいいよ。

んで、簡単に言うと、あなたの封印を解く事は出来るけど、どうする?

「ここに居ると安全なのよね。」

おい、日本の始祖神!

「正確に言うと、日本の始祖神は伊弉諾だから。」

そういや、あんたに父ちゃんいたな。

母ちゃんもいたはずだけど。

「日本書紀でしか確認出来ないのよね、私のお母さん。」

呑気な一家だなぁ。

「まぁまぁ。私はここに封印されっぱなしでも、私の娘が貴方と一緒ですから。」

それがピヨちゃんだね。

「ピヨ?」

「なんでわかったの?」

マヨネーズを作る野生の小鳥がいるかい。俺的には、ピヨちゃんが神様なんかなぁと思ってだんだけどね。

「はず〜れ〜!への5番!」

富籤かよ。

「多岐都、わかりましたね。」

「ピ!」

ピヨちゃんが敬礼しとる。多岐都姫って。つうか、旦那って大國主じゃなかったっけ。

「大黒天って目立つからねぇ。真っ先に捕まってどっかに幽閉されてます。」

おいおい。

「走り大黒天って知ってますか。韋駄天みたいなの。身体能力は神族の中でもかなり高い方だったのですが、そこの鳶が使役する鴉に捕まった様です。」

ほう。

俺が目を光らせると、車のボンネットで「どうにでもしやがれ」と不貞寝を決めていた鳶が飛び上がって(交通事故みたいな駄洒落)正座を始めた。鳶の正座というのも珍しい。

「鳥類が正座するなんで、身体の構造はどうなっているのかしらねー。」

あんたの娘のピヨちゃんは、菜箸咥えて料理してるけどね。

「嫁入り支度はしっかりと仕込んでいます。」

日本神話の登場神はやたらと所帯染みているのでした。

…怒られないかな、俺?

「何を今更。」

だよね。とりあえずお前を、と。

鳶を指差すと、ビクっと身体を震わせて、深々と土下座を始めた。ふかぶか。

ぱち!!と指パッチン。

それだけで鳶の身体から黒い煙がもくもくと立ち上る。鬱陶しいから排煙設備をテキトーにこさえて全部空間外に流してみた。

「本当になんでもありなんですねぇ。」

別に好きでやってんじゃ無いよ。

後に残った鳶は、…鳶は…、鳶じゃないし。

3本脚だし。

「あれまぁ、あなた八咫ちゃんだったの。」

やたちゃん?あー、確か八咫烏は天照大神の遣いだったな。つうか、やけにヒトっぽいと思いきや、八咫烏だったのかよ。

「八咫ちゃんじゃ、貴方のお嫁さんに退治されるのは困り物ねぇ。」

呑気な母さんだねー。天照大神様って。


「という訳で、八咫ちゃんを連れて行って貰えませんか?私との連絡役に最適だと思うのですが。」

八咫ちゃんは何やら敵の遣いになってましたが。迂闊過ぎやしませかね?

「貴方ならどうとでも出来るでしょう。」

ハイハイ。どうとでも出来ますけどね。

も一回指パッチン。

これで一時的に俺の使い魔になるんだな、これが。変なシールド張るよりも、俺が死ななければ八咫烏の身は安全になる。ついでに俺は死ねないので、俺から契約を切らない限り安全なわけだ。あと、烏ってデカくて女性陣が嫌がりそうなので雛状態にしとく。

うん、可愛い可愛い。

「まぁなんて事でしょう。ついでに娘も使い魔にしては頂けませんかねぇ。」

「ピ?」

だからね、娘とか神様とかを気安く俺の使い魔に堕とすんじゃありません。お母さんが。


一応、再度誘ってみたけれども、天照大神は引き続き封印されるというので、とりあえず封印だけ解いとく事にする。

あとは天岩戸状態で。

「でも、私が隠れても太陽は昇るのね。」

そこら辺は何かの鍵になるかも知れない。

なんだか訳の分からないお母さん(天照大神)に見送られ、俺達は元の空間に戻る事にした。

お嫁さん、ユカリさん、ジェニーは最初から最後まで寝っぱなしだった。

なんだこの2回。

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