もう一人
「その方はどなたどすか?」
えーと。俺の背後では轟音と共に、巨大な龍がお城を壊してる最中でね。
うわははははははははははははははは
って笑い声が俺の頭の中で響いてる。
王都の住人が悲鳴を上げて、着の身着のままで逃げ出している中、俺はシート一枚羽織らせた元お姫様をおぶって帰ってきた。
宿屋に。
お嫁さんが、腕組んで睨んでる宿屋の玄関に。
ユカリさんは、サユリさんの頭に腕乗せて大欠伸してるし。
今回の目標だったお姫様。
そおっと上目遣いでお嫁さんに説明する。
あと、おはよう。
「なるほど、うちが寝てる間に出てって、なんぞややりはんのは、旦那はんのいつもどすが、女を拾ってくるのは初めてやえ。」
ちょっとユカリはん。なしてサユリはんがニセモンの京都弁喋り出したんね?
「朝起きて2回戦始めようとしたのに、おとはんが居らへんよって、おかはんオカンムリやねん」
事情はわかったけど、せめて方言は統一しなはれ。
「わかった↓」
して無いなぁ。
「んで、どなた?」
隣の国の元お姫様。
色々やさぐれて、終いにゃ俺を服脱ぎ出して俺を口説き出したので、スタッフ抜きで俺だけで美味しく頂きました。
「貴方も言う通り、その通りだけど、色々間違って居る気がするのは何故かしら。」
「つまり、貴女は慎吾様に抱かれたと。自分から?」
「あの、この女は誰?何か見かけない服を着てるけど。」
ああ、俺のお嫁さん。
「え?貴方妻帯者だったの?」
聞かれなかったし。
「だとしてもねぇ。女の子が勇気を持って初めてを捧げたというのに、まさか不倫になるとは。もう少しろまんちっくな出会いだと思っていたのに。ぶつぶつ。」
「えぇ!何?貴女から慎吾様に身を投げ出したの?」
「えぇ、そうよ。」
「それで腰が抜けて、おぶって来て貰ったと?」
「だって、私自身あんなんなるとは思わなかったんだもん。」
「バカねぇ。私だってしばらくは内股でよちよち歩きになるのに。今朝だって、お風呂まで行くのがどれほど大変だったか。いつも、慎吾様が風呂付きの離れをとってくれる事に、どれだけ感謝しているか。」
「私まだお風呂入って無いの。お股は血とヌルヌルでべちょべちょしてるの。」
「全くもう。ほら、慎吾様も一緒に来なさい。お風呂はまだ湯を落としてないから。3人で楽しみましょう。」
「あの、さすがにさっきまでの今なので、あちこちジンジンしてるから、とりあえずお風呂入れれば良いです。他人様の行為は、今後の自分の参考になりますから、見せて貰えればいいの。」
あはははあはははあはははあははは
あのね、君達。
俺の背後で展開している、大怪獣対お城って定番の惨劇が見えませんか?
バルゴン対大阪城
熱海城は日米両巨頭が壊してたな
「どうせユカリちゃんのお姉さんでしょ。暴れてるのはオモチャ探し?」
「だね。姉様、お気に入りの女の人。片っ端から集めちゃしまってるよー。なんだろう、騎士様とかメイドさんとか、出来る風の事務員さんとか。ご飯ゲットだぜー!って嬉しそうに叫んでる。」
くっころとか、ご主人様ぁとか、眼鏡タイトスカートとか。
うちのドラゴンちゃんなら、やらせるんだろうなぁ。やらせた後、やるんだろうなぁ。
「あの、城が崩れたから慌てて逃げ出して来たわけですが、龍が暴れている様に見えますが?」
だよ。
「退治するべきでは?」
なんで?俺なりやさぐれ姫からしたら、こんな国滅びても構わんだろ。それに、あの人の正体、ゆんべ会ってるだろ?
「へ?」
おいお嫁さん。コイツをとりあえず湯船に放り込んで来てくれ。
あとは、朝飯を食ってからだ。
「ちょ、ちょっと待って。」
「待ちません。うちの慎吾様に色目使って処女を奪われた挙句、腰砕けにされた被害者は私が救います。」
「うひゃあ!女の子が私を片手でぶら下げて運ぶとかー!待って。脱げる脱げるぅぅ。」
…サユリさんはヤキモチを妬いてたんじゃないの?
「色々察したみたい。最後は同情してた。」
わははははわははははわはははは
まぁ、アレ(瓦礫の山の上で謎の怪光線を空中に放射し続ける龍)見りゃ幾ら色ボケたお嫁さんでも、推測はつくか。
あの鳴き声(大笑い声)はお嫁さんにも響いているだろうし。
厨房を覗いても、フロントを覗いても人気無し。こんな事、前にもあったな。
食糧は、と。
パンと、卵。
キャベツ、人参、とうもろこし。
それと、肉か。
おうおう。調味料が揃ってるじゃん。
おし、あれいこアレ。
「ピヨ?」
だよ。
卵、ビネガー、水、塩、胡椒。
これをボールに入れて、お匙でかき混ぜるかき混ぜる。うりゃあー。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ方カタカタ
「ピヨ」
何?したいの?わかった。
お匙を手から離すと、代わりにピヨちゃんが咥えた。
そして。
「ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ」
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ方カタカタ
おう。ピヨちゃんが高速回転を始めたぞ。
「パパ、私は肉焼くね。」
フライパンに油を流してながら温め出すユカリさん。
料理なんか出来たっけ?
「毎日、パパの料理を見てたんだよ。おかーさんの包丁さばきは危なっかしいし、大体、龍に不可能は無いのです。」
うちのお嫁さんには、いやらしい事以外、何が出来るんだろう?
「忘れたの。おかーさんはまだ15歳だよ。家事修行なんかしてる訳ないじゃん。」
ですよねー。
「ピヨ」
ありゃ。終わったの。
大丈夫ピヨちゃん。目、回ってない?
「ピヨ」
わかったよ。ありがとう。俺の胸ポケットで休んでなさい。
「ピー♪」
んじゃ、俺は野菜を切ってサラダを作ろう。
「パパ、骨出てきた骨。」
それはスープの出汁にします。
「私の目が確かなら、小鳥がグリグリ回って、幼女が肉を焼きながら、何か煮物をコトコト煮込んで、私の腰を抜かした女好きがもの凄い包丁さばきてお野菜切ってるように見えたんですけど?」
おや、やさぐれさん。お風呂から上がったの?
なんで全裸なの?
「着る服が無いからです。シーツにはちょっと血が付いてて恥ずかしいし。」
だから全裸?
「今更恥ずかしがる必要もないでしょう。私は貴方の性奴隷なんだから。」
殺される→殺される前にしてみたい→私は貴方の性奴隷
なんだこの、あまりにも直滑降な「風が吹いたら桶屋が儲かる」
で、うちのお嫁さんはそこで固まってるし。




