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9話 崩壊の日

 その日、一つの国が崩壊の危機に瀕した。

 

 第一波は、軽く。

 カタカタと縦に揺れるような、微細な振動。

 王都に住まう人々は若干動揺を示すも「また地震か……」と、慣れた動きで速やかに身の安全を確保し始める。


 ここまではいつもと同じ正しい流れ。

 地震が多い国に住まう人々の、正しい地震(それ)の対処法。

 だが今回は、今回だけは間違いだ。

 いつもと同じ動きではダメだ。

 何故なら……


 第二波――主要動。

 第一波の揺れが継続する中、遅れて数秒後。


「――っ!?」


 横波――激しい横方向への大震動。

 右へ左へ、凄まじい勢いで大地が揺れる。

 子供がテーブルを揺らすことで上に並べられた玩具が散乱するかの如く、人の手ではびくともしない家々が歪み、崩壊していく。

 至る所で響く叫び声。収まらない揺れ。倒壊していく建物たち。


 しばらくしてその激しい振動に耐えきれなかった地面に亀裂が入り、その亀裂はすさまじい勢いで大地を駆けていく。

 勢いは落ちながらも王都の真下で発生した地震波はやがて国全体に届き、果ては隣国にまでその振動が伝わってしまうほど広がった。


 平民区は勿論、より頑強に建築されたはずの建物が並ぶ貴族区をも地震は破壊した。

 ――否、むしろ位が高い者たちが住まう場所ほど被害が大きいとさえ思える。

 そしてついに――王宮が、堕ちた。

 王宮(それ)を支えていた大地が傾いたことでそのまま王宮も崩れ落ちたのだ。

 

 それを契機にか、ようやく揺れが収まった。

 暴虐の限りを尽くした大地震は、ひとときの安息を彼らに与えた。


 だが――目の前に広がるのは、地獄の光景。

 あれだけ活気に溢れていた町は気づけば白煙と悲鳴が上がる退廃の地へと変貌し、目の前で起きた現実を飲み込めない生き延びた僅かな人々が混乱を示している。

 もはや無事な建物の方が少ないくらいだ。


 そしてようやく状況を理解した人々は、己が救うべき人間を探して走り出す。

 怪我を負って動けないものは懸命に助けを呼び、生き埋めにされた者たちは空を求めて足掻きだす。

 そんな人々の有様を空から眺めて、()は嗤う。


「――随分と遅い、約束の時間がやってきた。忌まわしき人間どもめ」



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