或る鳥
きょう、雨が降った。小雨でもなく、大降りでもなく、普通に降っていた。空は相変わらずどんよりとしていて、憂鬱になりそうな天気である。
私は学校に行く途中であった。服の袖はびしょ濡れ、靴も湿っていて、なんだか少し気分が悪い。そんなもやもやを抱えながら、これから授業が始まろうとしている建物へ向かう最中だった。
そのとき、一羽の鳥を見た。そこまで大きくもない鳥である。この鳥はどこから来たのだろうか。渡り鳥ではないだろうから、すぐ近くに巣でもあるのだろうか。そんなことを考えながら、ぼうっとその鳥を眺めていた。鳥の羽はとても丈夫である。どんなに大量の雨に打たれていても、弱味を見せないのだ。その鳥は、あたかも何も考えていないような、雨など気にしていないような素振りだった。自分の食べたい物を食べ、行きたいところへ行き、本当に本能のまま生きていた。鳥だって生き物であり、感情だってある。鳥同士喧嘩もするし、生き抜くための戦いだってある。しかし私が見たその鳥は、何事にも動じない、周りを気にしない、なんとも自由な鳥に見えた。私はいつの間にか、その場に立ち尽くしていた。私は普段あまり立ち尽くすというようなことはしないが、このときは何故か、ただその鳥を眺めていた。
私はその一羽の鳥に魅了されていたのだ。その鳥の、ただただ生きるその姿に圧倒されてしまっていたのだ。
しばらくして、その鳥は雨に打たれながらどこかへ飛び去っていった。その羽ばたく姿も誇らしく見えた。人間も困難にぶつかったとき、あの鳥のように美しくいれるだろうか。他人や、他の事柄に左右されてしまわないか。傘など挿して暢気に、或いは鬱々と過ごしている暇などないのではないか。鳥が見えなくなる頃には私も歩き出していた。しかし、その鳥を見る前と見た後では、気持ちが変わっていた。私たちが見習うべきものは、鳥なのではないか。
その一羽の鳥に感動したその日私は、一日中力がみなぎっているように感じた。