旅の仲間
場所
ノルン王国からティラノス帝国へ向かう街道
帝都への道中姫の護衛に1個小隊がつき、侍従1名上級女官1名下級女官1名、前回は俺とマカネンだけだったが、今回は俺、ロビン、ラシュエル、マリシアそれからレオナとダルカンと人数が多い。
道中は前回同様何事も起こらず、順調に7泊の予定の日程をこなしていったが、この僅かの期間で俺たちの関係はかなり、その…濃くなった。
姫の馬車の直前で、旅用の実用性の高い生地を使ったものではあるがドレス姿の横乗りで馬を進めているのは俺の妻、マリシア・バル・ロンバルト。
見習いシスターの582735番と呼ばれていたが、俺が最初に経験した未来では聖女として人々の尊敬を集めていた。
柔らかなウェーブの掛かった金色の髪、命の喜びに輝くエメラルドの瞳、幾多の美女を抑えて第一番に輝く女神がどんな運命のいたずらか、俺の嫁になってしまった。
前回では小鬼どもに汚されて三本角の魔王に堕ちてしまったが、今度はそんなことは俺が許さない。
生命全般にかかわる魔法、浄化の魔法、結界や防御の魔法が得意である。
マリシアを表す文字を聖、生、清、または晴と当てはめることができるが、じつは性とも当てはめることができるのを実際に付き合うまで俺は知らなかった。
生命をつかさどる神に仕える彼女は、男に変身する術をも持っており、その…、我慢できなくなるらしい。
その右横で馬簡略化されたプレートメイルで身を固め馬を進めるのは、ロビン・バル・ローバー。
見者ラルーの血を引くノルン王国の分家、夜 の一族ローバー家の嫡男。
陰のあるいい男になるはずなんだが、負傷など負の経験をしておらず、のんきな田舎貴族のままである。
もともとの自分のことながら、こいつは馬鹿なんじゃないかなと思うことがある。
こいつ、宿場の娼館に俺を誘いやがった。
俺の立場でそんなところに入れるわけが無いだろうが、バカタレメ。
一人で行く勇気もないらしいのでダルカンをつけてやった。
それから自信をつけたのか、折に触れてレオナを口説いているが俺は許可を出してやっていない。
俺たち一族共通の黒い目黒い髪の長剣使いである。
夜の術を無意識に使うが、基本的に肉体強化と生活魔法くらいしか使えない。
マリシアを挟んで反対側で女性用の狩着に身を包み、短弓を背負って足を開いて乗馬しているのはラシュエル・バル・ロンバルトである。
もともとノルンの第2王女、リリエル姫なのだが、城中の人間を洗脳して影と身分を入れ替えて俺の双子の妹に無理やりおさまってしまった。
俺より長い漆黒の髪を無造作に一つに束ね、同じく化粧気も全く無いのだが若い女の清廉な色気を当たりに振りまいている。
顔のパーツは目じりの上がり下がりくらいしか差は無いのだが…。
リリエル姫は生まれてすぐ死にそうになったが、デルビオス侯爵の息子ラシュエルと禁呪によって合体して生き延びた。
二つの心を持ち、未熟な男女両性を備えていたがマリシアに性変化の術を教える許可を与えたところ、完全な女性になって、豊かになった胸を誇らしげに突き出して騎乗している。
男の人格で弓と短剣を、女の人格で闇魔法を使う。
その三騎の前で魔術で生み出した石の馬にまたがり、巨大な盾と槌矛を装備した振るプレートメイルがダルカン・ロンバルティス。
堂々たる風格で威風を放って旅の安全を確保している。
明るい褐色の肌に濃い褐色の髪、と同じ色の瞳の精悍な筋肉質のごつい男である。
禁呪の暗黒魔法によりデルビオス侯爵の婚約者、レイリアと同化して成り代わってラシュエルを産んだ。
レイリアになっているときは闇の家系でやや赤味がかった黒い髪黒い瞳をもつ。
大地から無限の力を補給することができるが、マリシアの結界魔法により大地から隔離され俺の使い魔になった。
禁呪を使った時点で魔族になったため魔を従える魔法が有効になったのだ。
何分の一かはラシュエルの母でもあるため、彼女から白い目で見られているが、気にしないで嬉々としてロビンと宿場ごとの娼館に通っている。
もともと単純な性格で巫女に言われるままの神のお告げを信じて行動していたが、神からはなれてすっかり俺の忠実な部下になってしまった。
神自体が洗脳によって作られていたらしい。
闇魔法もそこそこ使えるので非常に役に立ちそうだ。
その一行のやや後ろで、下働きの黒い女官服、つまりメイド服に身を包み、マリシアと同じ横乗りの鞍を置いて騎乗するのがレオナ・ロンバルティスである。
栗色の髪、とび色の瞳の健康的な少女でもとはどこぞの宿屋の看板娘だったらしいのだが、今はロンバルト家の奴隷に落ちてダルカンと同じくロンバルト家の所有物であるという意味のロンバルティスを名乗っている。
見た目はかわいい美少女なのだが中身は精神寄生体であるヤツという最悪の暗殺者に体を奪われてしまっている。
前回は俺をだまして奴隷の暗殺者に仕立て上げてくれたのだが今回はだまし返して俺が奴隷に叩き落してやった。
普段はダルカンと一緒に寝起きし、彼の世話もさせている。
中身が腐った性悪男なので汚れ仕事をさせるのにちょうどいい。
罵詈雑言をあびせてくるだろうとおもって、本性をさらけ出す許可を与えた上で抱いてやったのだが、意外にもしくしく泣きながらもいそいそと俺の相手を務めた。
彼の中で何か変化があったのだろう。
そして俺ことクリス・バル・ロンバルトは姫の侍従セバスと女官マイヤー夫人と向かい合って馬車の中にいる。
セバスは今回初めてリリエルに付けられたノルン最長老の侍従で白髪白髭の枯れ木のような老人だがかなりの武術の使い手で老いを全く感じさせることが無い。
先代の王にも仕える忠臣だということだ。
マイヤー婦人はリリエルの乳母でなんの特技もないといっては失礼だが、誠実な未亡人である。
最後に隣で俺に腕を絡めているのがもともと陛下の隠し子でリリエルの影を勤めていた少女なのだが、今は名実共にリリエルとして王女になっている。
前回はこのリリエルの暗殺に俺が加わることになってしまったのだが…今回それは起こらないだろう。
敵地とも言えないことも無い帝国への留学にあったって、不安があるのだろう、姫は俺を離してくれない。
リリエル姫に夜の生活を教えろとマイヤー婦人に命令されて仕方なくお相手してから、心ならずもこうなってしまった。
婦人の刺す様な目も怖いが、マリシアの鬱屈が溜まってそうで俺は怖い。
俺はロビン・バル・ローバーとして生まれたが、帝国への留学前に負傷し、帝都についてからはだまされて暗殺者となり、そのまま魔族との戦に巻き込まれたが、大魔王と身を落す直前に時間を逆戻しすることによって過去へと戻った。
その過去で俺に直らない怪我を負わせ、いとこのクリスを殺した山賊どもを事前に退治してしまったことにより未来を変えてしまい、自分自身を殺した瞬間に、なぜか死亡するはずだったいとこのクリスになってしまって今に至る、なかなか男前な美少女だ。
俺 クリス
マリシア 俺の嫁
ラシュエル 俺の双子の妹
ロビン 俺のいとこ
レオナ 俺の侍女で暗殺者のヤツ
ダルカン 女性形レイリアにもなれる俺の使い魔
リリエル姫 ノルン第二王女
セバス リリエル姫の侍従
マイヤー婦人 リリエル姫の女官