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花嫁は

「確かにこれは夜の宝珠です」


 キンッ!


 俺の剣がミルカの剣に弾き飛ばされた。

 俺の魂が叫ぶ。

 自由だ!

 俺の全てが吼える。

 殺せ!


「何をするのですっ!」

「決まってるじゃねえか、お前をぶち殺す」


 ガキン!


 魔力を探知されることを怖れて、幾本かのたいまつに照らされた洞窟の中。


「なぜっ!」

「分からないのか? 馬鹿だろう、お前」


 キン、ガキン!


 帝都にある離宮の真下。

 ラルー最期の地にミルカは潜んでいた。


 カン!


 くっそう、どうなってやがる。

 俺のほうが腕は上のはず。

 だが、俺の剣の軌跡はすべてミルカの剣に防がれている。


「うりゃぁ!」

「やめなさいっ!」


 ドスッ!

 グホッ。


 凄まじい圧力で洞窟の岩壁に貼り付けられた。

 動けねぇ!


 ミルカの剣先が俺ののど元にっ。


 ガッ!


 拳8個分はあるミルカの剣が半ばまで俺の首筋ぎりぎりのところに突き刺さる。


「ルークは私の……」

「黙れっ!」


 途中でミルカの気配が変わり、別の何ものかが取って代わった。


「ミルカよ、よく働いてくれた。褒美にこの小僧を寄り代にして抱いてやるのもいいだろう」


 俺を壁に貼り付けたままミルカは、ミルカの姿をした何者かは洞窟の隅の岩場に向かった。

 その中央にしつらえた小さな台に夜の宝珠を置く。


「絶対に解けない封印ねぇ、封印される以前に時を戻せば開放出来る……か」


 ミルカが呪を唱えると夜の宝珠が消え、その辺に転がった小石や岩がひとりでに寄せ集まって一つの神像を作り上げた。

 絶妙の曲線で作り上げられた神々しく美しい神のものとしか表現できない威圧を発する神像。

 衣服を身につけていないそれは男神であり、女神でもあった。

 ノルンの神殿に隠されていた調和神と対を成す混沌神である。

 そしてその顔は……。


「なんと!」


 ピシッ!

 パンッ!!

 ドサリ。


 神像はひびが入り、乾いた音と共に崩れ去り同時にミルカも崩れ落ちた。

 他に誰もいなかったはずの洞窟に立つ影が一つ。

 ミルカの胸元をまさぐってかけていたペンダントを引きちぎり、握り締める。


「闇の宝珠に入り込んだ500年前の魔王の魂ですか」


 開いた手の中には何も無かった。

 夢に出てくる母さんそっくりなその人は、少し目じりが違うか、まだ動けない俺の目を覗き込んで微笑んだ。


「ルーク、おかえりなさい。レイシアも待ってるわ……」





 帝国の辺境に有る愛の女神を祭る小さな神殿。

 普段ほとんど人影の無いそこは大家族の喧騒で包まれていた。


 小さな控え室で一人待つ花嫁の前のドアが開き、正装したマリスが入ってくる。


「そろそろ時間だよ。行こうか」


 花嫁はエスコートする父の腕に手を添えて歩き出し、殊勝な顔で皆の祝福を受けていたが心の中で絶叫していた。


 何で俺が花嫁なんだ!

 針なんか打ちやがって!!


 しかし美しい花婿と愛を誓うのにいやは無かった。


 ここは、男尊女卑の世界なのだ……一応。
















あえて重要部分を省略してあります。


ここまでお付き合いくださりありがとうございました。

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