残敵
考えてみれば俺のほうからロビンの屋敷を訪ねるのは初めてだった。
「珍しいね、クリスが来てくれるなんて」
「ローグが襲撃されたの」
「怪我とかしなかった?被害は?」
「洗脳してこき使ってた凶信者が何人かと飼っていた魔獣が何匹か死んだだけよ。たいしたことなかった。万全の警備だって言ってたでしょ。これ教主様におみやげ」
投げつけた司祭の首を銀光が貫いて俺に伸びてくる。
パキン
涼しげな音を立ててロビンの剣が折れた。
ロビンは抜き打ちの姿のまま首に俺の矛を当てられて固まる。
「魔王の体とあなたの剣技、それでも私にとどかないわ。残念だけど」
「いつから分かってた?」
「残念ながらあなたのことは全く疑わなかった。ローグのことも罠じゃなかった」
「デルビオス侯爵には行くなと止めたんだけどな。クリスには手を出すなって」
俺が倒した司祭はデルビオス侯爵だった。
そして教会の地下に捕虜がいることはロビンしか知らない。
「ロビン、お前いつ混沌の神の信者になった?」
「ノルン王家は2柱ともに祀っているけど先祖代々ロンバルト家は混沌神の信者じゃない、ローバーが調和神の信者なのといっしょね」
「お前クリスか?」
「入れ替わっておいて気づかなかったの? あなた馬鹿じゃない?」
「それじゃあ、巫女っていうのは」
「母さんよ、ひげ生やしてロンバルト男爵なんて言ってるけど」
俺の手を振りかぶると矛が小さく細くなる。
針となった矛がロビンの額に突き刺ささり、記憶を吸出していく。
「ジェシカと約束したんだ。すべてを忘れたら、新しい人生をあげる。顔も変えてあげる…」
先ず肌が首から下と同じ白くきめ細やかなものになる。
太い眉のけが一部抜け落ち細い弧を描く。
がっちりしたあごは細く優しく。
くちびるは艶やかに光り顔は全体的に小さく。
髪の毛も目も色が薄くなりブラウンに。
名前は…パルでいいや。
ぼやけていたパルの視線がはっきりと定まり、自分の姿を見下ろしてあわてだした。
「ご主人様、ご主人様、私なんでこんな鎧を着てるんでしょうか?」
「ダイエットって言ってたじゃない。おなか周りと腕のぷよぷよを何とかするんだって」
「そうでした、そうでした。ロビン様に借りに来たのでした。でもお留守に勝手に上り込んで持って行っていいのでしょうか」
「大丈夫よ」
「ご主人様、ご主人様」
「次は何?」
「私が脱いだはずの服がありません」
「細かいことは気にしないの」
「気になりますです」
ちょっと性格設定間違えたかな。
パルを連れて自分の屋敷に戻るとノルンからの急報が届いていた。
『ロンバルト男爵一家の馬車が魔獣に襲われる。ラシュエル・バル・ロンバルト死亡。ロンバルト男爵およびルーク行方不明。追記、大量の血痕あり。魔獣に喰われた可能性大』
ラシュエルが死んでルークが連れ去られた。
ふたりの消息は全くとだえ、帝国は平和な日々がまた続くようになった。
次章は少し年月がたった設定で始める予定ですがその前に文章の見直しを行いたいと思います。
一週間ほど、ちょっとまってね。
最強に立ち向かう最悪、お楽しみに




