やきもちやきがグダグダと
帰ってきたマリシアたちに任務を与えて忙しくさせている間に俺は事情を知っているだろうウォリス男爵に会いに行った。
ウォリスは俺の顔を一目見て何を言いに来たのか悟ったようだが、すぐににこやかな笑みを浮かべて…とぼけることにしたようだ。
「やぁ、クリス、久しぶりだね、君の活躍はいつも聞いてるよ」
「久しぶりだねウォリス、気に入らない相手はつい叩き斬ってしまうけど、そんなに噂になってるの?」
白々しくにこにこ笑い合っているのだが、ウォリスの額に汗が浮かんでいる。
ふむ、やっぱりウォリスはマリシアの変貌にかかわっているわけだな。
「さっきマリシアたちが帰ってきたの、それについてちょっと確認したいことがあるのよ」
「わ、私は何も知らんぞ」
「知らないはずはないと思うんだけどね」
できるだけ穏やかにやさしく声をかけてるつもりなんだがそうは受け取ってもらえないようだ。
俺が近寄るとウォリスは後ずさりするが、やがてテーブルにお尻が当たってそれ以上下がれなくなる。
のけぞるウォリスに逃げられないように密着してテーブルに手をつく。
俺の笑顔ってそんなに怖いのだろうか、ウォリスはまだひきつった笑いを浮かべはするが抵抗しないでじっとしている。
下手に抵抗すると持ち帰りされるとか思ってんじゃないだろうな。
俺は実のところマジで怒っている。
髪の毛がもう少し短かったら全て逆立つくらいにな。
「マリシアと融合したのはだれ?」
これが俺の怒りの理由。
戻ってきたマリシアは誰かと融合していた。
マリシアが完全に主導権を握っていて支配されていたり隷属していたりしていなったので本人には何も言わなかったのだが…
ならば身内の誰かがマリシアに術を掛けたとしか思えない。
融合の術を仕えるうち、俺の目が届かないのはウォリス一人だけだった。
「誰かを聞く前に、何故かと聞かないといけないんじゃないのですか?」
「ルファ久しぶり、それどういうことかな?」
「マリシアさんは必要があって、自ら望んで融合したのです。ウォリスを責めるのはおやめください」
「自ら望んで…ね」
「絶対にクリス様の考えてるような理由ではありません。融合相手はフェリスで促成培養された次期皇后のボディ候補ですわ」
「ふむ」
「理由についてはマリシアさんが自発的に明かされるのをお待ちください」
益々訳が分からない。
ルファは奴隷紋の制約で俺に不利なことは何一つできないはずだ。
「どうしても気になるならベル様にお尋ねください」
なぜここでベルの名前が出てくるんだ。
なおも不思議そうな顔をする俺にベルは続けた。
「マリシアさんが融合を望んだ理由とは違いますが、ウォリスがマリシアさんを融合したのは、悪意を持った誰かに融合を仕掛けられることがないようにです」
それならフェリスから人格のない体を持ってきて融合してみるのもわかるが、それならそうとなぜ最初からはっきりと言わないんだ。
とにかく訳の分からない男にマリシアが融合していないことが分かったので俺は引き下がることにした。
俺が帰った後のこと。
「あいつ、怖いって言われてたけどほんとに怖かったな。よくあんなのを敵に回すやつが次から次へと出てくるもんだ」
「ほんとに怖かったです。しかし言えないですもんね。修行しすぎてムキムキ筋肉になってひげまで生えてきたって」
「剣の修行で体を鍛えたら無意識に男性化しててそのまま元に戻らなくなったってどんだけ一直線なんだマリシアは。手遅れになる前にシェリーもレナもなんでひげ生えてるぞって教えてやらなかったんだ。トイレでもほんとに気が付かなかったんだろうか、全く」
「マリシアさんですからね」
「そうだな、でも相談されて誰か女の子と融合してしまえってベルさんもたいがいだよな」
「ですわね」




