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カオスな関係

 私、ウォリス・ティアバル・ザイドラーズはティラノス帝国の貴族局で、頭の固い役人土もにやっと自分が自分であることを認めさせるのに難儀していた。


「お前ら今人造人間に宝玉から魂を移す映像記録をこの玉で見てただろう。え? 宝玉から移ったのは認めるが、宝玉が私だと認められないって? ここに友人に書いてもらった保証書が有る。そんなのが信用できるかだって? 署名見てみろ、署名…そぅ、ノルンの英雄クリス帝国伯爵様だ。そそ、わかればよろしい」


ちょっとした失敗で体を失った私は緊急避難用に持っていた宝玉に魂を移してとりあえず生き延びたのだ。

それで、とりあえず使うかりそめの体をクリス伯にもらったのだが、それが最高級の人造人間だった。

動きさえすればよいと言ったのだが魔動人形ではなくほぼ人間に近いこの体を提供してくれた。

唯一の欠点は女性体で有ることだがそんなことは問題にならないくらいスペックが高い。

全く荒事に縁が無かった私でも剣が使え、もとより使える魔法を合わせればきわめて高い戦闘力が手に入った。。

男子たるものやはり武力にはあこがれるではないか、今は男子ではなくなったが。


「なに? 人工の生命体の婚姻は認められないだと? 今私をウォリスだと認めただろう。そう相手はクリス伯の侍女だ。身元引受人に伯爵の署名が有るだろう。そうそうわかればよろしい。これで彼女はルファ・ティアバル・ザイドラーズを名乗れるのだな。うむ、ありがとう」





 私、ルファ・ロンバルティスは目の前のプラチナブロンドの髪の美女になったウォリス様の金色の瞳で見つめられて、身動きも出来ずにいます。

クリス様のご友人、ウォリス様のお世話をしていたのだけど、どこが気に入られたのか彼に結婚を申し込まれました。

私はもともとルーワンの王宮に仕える女官だったのですが、犯罪組織に誘拐され人間爆弾に改造されていたところをクリス様に助けていただきました。

爆弾を取り除いたところを男性の体で埋めたので、嫁にいける体ではなくなったのです。

ウォリス様はそれでも良いとおっしゃっていただきましたし、逆にブロンド美人の男は気持ち悪いだろうが我慢して欲しいと。

私にはお断りする理由を見つけることができません。

クリス様、本当にハイとお返事していいのでしょうか。




 アタイの名前はニュー、ちょっとした大失敗で半分猫魔獣がまじっちゃってマス。

頭の上にぴくぴく動くお耳とゆらゆらシッポ、かわいいんだゾ!

ルファねぇさんがお嫁に行っちゃうんでお掃除洗濯ご飯の支度、ぜ~んぶひとりでやんなくっチャ、なんて思ってたらときどきジェシカさんが来て手伝ってくださるのでおおだすかりデス。

ジェシカさんやさシイ。





「ジェシカ、今日も夜会で泊りになる」

「またですか、じゃぁまたクリスちゃんのところに行ってきますね」

「今はひめさまがいらっしゃるんだあろ? そうたびたび新婚さんの邪魔しちゃ悪いんじゃないのか」

「家事が出来るのがニューちゃん一人だから向こうは大変なんですよ。ここで一人いると寂しいし…」

「ごめんね」、チュッ。


 私、ジェシカ・バル・ローバーは夫がティライアに外務卿として着任したのでこの町に引越ししてきました。

 優しい夫と独り立ちした息子との幸せな生活はある日突然終わってしまいました。

同時に思い出したのです、自分がジェシカに寄生しているだけの山賊であることを。

しかしそれでも私がロビンを産み育てた母親なのです。

本物のジェシカさんはそれを認めてくれました。

ロビンの心をもったクリスも認めてくれて今の私があります。これはうちの人には秘密ですけどね、もうすぐ孫ができるんですよ。

出来ればローグにすぐにでも行きたいのですけど主人の仕事には夫婦同伴の舞踏会などもありますから、なかなか行くことができませんの。

今とても幸せですけど、ただ一つだけ悩み事が、その、私に隠されているもう一つの体が求めるのです。

私自身にしか、相談できないですよね。




「こんにちわ、ベルさんいます?」


 またジェシカが私を訪ねてやってきた。

結婚式の直前に、私はジェシカに全てを奪われて精霊に封印されていたの。

ジェシカについてはうらやましいとは思うけど、にくいとは思えないのよね。

ずっと魂が空間を越えて繋がっていたし、私が精霊から戻ったときに記憶も共有できたし。

私がジェシカに戻れば全てうまくいくはずだったんだけど、いまさら主婦になるのは嫌だったの。

ロマンス、そうロマンスがほしいのよ!

これ内緒だけど、クリスにはばれちゃってるけど、盗られた乙女心の代わりに元ジェシカから男要素たっぷり押し付けられてるのよね、むふふふふ。





 ベルに舞台の脚本を頼んでるんだけど、なかなか仕上げてくれません。

いまティライアの人気ナンバーワン女優がわたしシータ・ロンバルティス。

そう、スポットライトは私が独り占め…のはずなんだけど屋敷に帰るとぜんぜん目立たないのよね。

スターのオーラをぎらぎらに出しても、鼻息一つで吹っ飛ばされちゃうのよね。

野蛮な武人なんて大嫌い、かっこ クリス様を除く かっことじる まる なんてね。

またルタにクリス様の代役やってもらおうかな。





 シータもベルも次の公演どうするつもりなんだろうな。

オレの担当の小道具は前回のを流用してごまかすとして、ラムに頼む大道具はどうするつもりかね?

ローグからここまで輸送艦で運んでも結構時間掛かるんだぞ。

あ、オレはルタ・ロンバルティス。

ある時気がつけば檻の中に入れられてて、気を抜くとドロドロっと溶け出す自分の体を必死に意志の力で人型に保っていた。

次に気がついたら、クリス様の奴隷になっていて、しかしオレってこんなボンッキュッボンのネーちゃんだったかな?

おっさんだったような気がするんだが

ま、いいや、どんな人間にでも自由に変身できるんだから。

その能力をシータが目をつけて大部屋俳優がする役全部と、ついでに小道具係を押し付けてきた。

あの、なんとも言えん芳しい酒、あれを出されちゃ断れない、くそっどこで売ってるんだあれ。





「姫様、皆様にご挨拶を」

「ティアフィーリアよ、ところでなぜ私が一番最後?ロナ」

「最重要人物は一番最後ってきまっています」

「そうなのか? ならいい。ところでロナは自己紹介したのか?」

「ティア様の侍女ロナ・ロンバルティスです」

「あー!一番最後ロナがとった」



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