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精霊の光、魔王の闇

本日2話目


まだ底に着かずに落下中、取り残されたなど言わないで一緒に飛び降りてくださいませ。

 ローバー男爵は目の前で発した強烈な光を受けて我にかえった。

光った場所には心配そうな顔をした花の精霊が浮かんでいる。

今何か悪いことが起きかけたようだ。

それをこの花の精霊が助けてくれたらしい。

その水色の花の精霊に礼を言おうと手のひらに載せ、目の高さに持ち上げて気付いた。

この精霊水色の花はそのままなんだが、髪と目は黒かったかな。

どうも青かったような気がするんだが。

そんなことより急がねばならない。

王家が大変なことになる。

初めて精霊を肩に乗せたまま部屋を出て叫ぶ。


「全員戦闘準備! 用意出来次第出発する。ロンバルト男爵とデルビオス侯爵に伝令の用意!」


 それだけ駆けつけた家臣に命令を出すと一人部屋に戻り、おぞましい姿になった妻の死体を穀物を保存する袋につめる。

埋葬したいが、証拠になる物がいる。

ローバー男爵の奥歯はまた音を立てたが黒い霧が吹き出ることはなかった。



 ノルン王宮の地下、国王がX字の柱に括り付けられていた。

前に立つのはルルエル第1王女。


「陛下、この城に有るという夜の宝物というのはどこに有るのでしょうか」

「そんなものは無い!」

「強情ですわね、この子もお兄様みたいになってしまいますわよ」


 もはや肉塊としか言えなくなった皇太子の横にまだ幼い一番下の姫が連れ出された。


「妹ですから痛みは感じないようにしてあげますわね」


 ルルエルは術を使って王女の意識をうばうと、その小さな手に短剣をつきたてた。


「やめろー。本当に知らないのだ」

「強情ですわね、ではそこで見ていてくださいね。妹はまだ2人もいるのですから」


 楽しそうに王女の服を脱がせ、浅い傷を夢中になってつけていたルルエルは巨大なうろこの生えた漆黒の腕でいきなり頭をわしづかみにされた。

ごつい爪のついた黒い手がさして力を加えられたようにも見えずに握り締められる。

首を失ったルルエルの体が崩れ落ちた。

 ぴちゃぴちゃと何かを舐めるような音がする。

バリッ、ガリッっと何かを噛み砕くような音がする。

黒き竜は一段と体を大きくして今度は部屋の隅であまりの恐怖で気を失うことも出来ない第3王女に近寄っていった。


「ゃ、止めてくださいお父様」


 強力な瘴気が竜から立ち上り姫に吸い込まれていった。

そして洗脳されていた城の住人達が次々と地下へ降りていき、ますます瘴気が膨らんでいく。


ノルトの人々にとって幸いだったのはまだ城下に大司教がとどまっていたこと。

魔に敏感な彼が真っ先に大声を張り上げ逃げた。

何も持たずに全員全力で城から離れよ。

彼は神の啓示だとまで叫び、使命感によって城に留まろうとした衛士達をも動かし結果として彼らを救った。


 瘴気に飲み込まれる人々が少ないため、吹き出る瘴気の量もそれほど多くならず人が魔人と化す範囲がそれほど広くならずに済んだことは幸いである。前回は国中が一瞬にして瘴気に飲まれたのだから。


 ローバーからの知らせは全ての魔力を速さにつぎ込んだ使者によって1時間以内にデルビオス侯爵に届いた。

普通なら馬鹿馬鹿しいと笑い飛ばす内容ではあるが侯爵は信じた。

すぐに領土を臨戦態勢に置き各地に使者と斥候部隊を出す。


 さほど時間をおかずロンバルト騎兵100が、同じくローバー騎兵100がデルビオス領に駆け込んでくる。ロンバルト隊は挨拶もそこそこに王都に向かって駆け、運よくこちらの方角に向かっていた大司教に遭遇する。

そして王都から逃れた人々をデルビオス領に誘導した。


瘴気は王都を覆い、遠目にも魔獣や魔人の姿が見える。

ただ瘴気の膨張は止まったようだ。

何箇所かに監視の兵を置きロンバルト騎兵は途中で再び追いついた大司教を護衛してデルビオスに戻った。


 デルビオスの館の奥まった部屋、まだ昼前だというのにもうロンバルトとローバー以外に二つの伯爵家、4つの男爵家の主が集まっていた。

各地の情報も続々と集まってくる

デルビオス以外の三つの侯爵家のうち二つは革命軍を名乗るものたちに占拠されていた。

もう一つのラステビアス侯爵家はいままさに内乱中である。

デルビオス侯爵はラステビアス家に対してこちらと合流するように依頼を出した。


 会議が始まり、まず最初に使者を出したローバー男爵が沈痛な表情で口火を切った。


「革命軍を名乗るものは家族の誰かに禁呪によって融合し、すり替わっております」

「ローバー殿、それは真か」

「我妻に化けて16年、毒を盛られるまで気がつきませんでした」


 まじめ一方のローバー男爵の発言に一同声も無い。

ロンバルト男爵とデルビオス侯爵のみはレイリアのことが有ったのだがそれでも彼に掛ける声が無い。


「我妻に化けていた男はルルエル王女が同じ仲間だと言っておりましたが、今の王都はそやつらが行った術でも失敗したためでしょうか」

「男が奥様に化けて16年とは面妖な」

「これがそやつの死体です」


 ローバー男爵が部屋の隅にあった穀物袋を広げると、右半身が若い男で左半身が若い女の死体が胸に短剣を突き刺したまま出てきた。

驚く一同をよそに真っ先に大司教がロンバルト男爵に耳打ちした。

死者に対して祈るように大司教が前に出て短剣を持ち引き抜く。

同時にロンバルト男爵が死体に飛び掛って拘束する。


「なにごとですか!」

「こやつ死んだフリをして居るだけですぞ」


 男爵に押さえ込まれた死体が完全な男になりにやりと笑う。


「隙を見て逃げようと思ったんだが失敗だな。だがどうせ王都の革命軍が来ればお前らは終わりだよ」

「違うな、王宮には魔王が出現した。あの気配は確かに伝説に伝わる魔王じゃよ。網あそこに生きている人間など居らんじゃろう」

「大司教様失礼します」


ロンバルト男爵が押さえつける男の額にデルビオス侯爵が針を立てた。


「こやつたいしたことは何も知ってはおりませんでした」


侯爵は針を使って男の記憶を見たのだが役に立ちそうなことは何も知ってはいなかった。


「では、妻の敵のこの男、改めて処刑させていただきます」


改めて宣言するローバー男爵を大司教が止めた。


「ローバー殿おまちください。もしかして、もしかしたら今、聖女の再来と話題のクリス・ティアカウント・ロンバルトなら何とかできるかもしれません」

「なんと」

「クリスなら我が娘ですが…」

「ふん、むりだね…」

ローバー男爵 ロビンの父、クリスの伯父


男爵夫人 ロビンの母 、ロンバルト婦人の妹


ルルエル王女 ノルン第1王女 リリエルの姉 何か別の者になっている


捕まえられた男 ローバー男爵夫人に16年間化けていた


デルビオス侯爵 リリエルの伯父 


レイリア デルビオス公爵夫人


ロンバルト男爵 クリスの父


大司教 旅の途中の偉い人


クリス・ティアカウント・ロンバルト 主人公 ティアカウントは帝国伯爵位



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