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カオティックハーレム(2巡目は女の子)  作者: よもぎだんごろう
第1章 ティライア中央学園
19/79

帰ってきたら怪獣大戦争

場所

 ティライア中央学園

 レムルシアス副学園長はいつものように決済を求める書類にサインをしていた。

実は中身をあまり読んでいない。

レムルシアスの前に必ず事務局長のサインがあり、彼のサインの次には学園長のサインが必ず入るのだ。

事務局はそれこそ事務的に彼のサインが欲しい場所に魔法でサインをすれば消える印をつけて書類を送ってくる。

その日は中央政府からの人事異動の通達の日であり、レムルシアスは気もそぞろで分厚い書類の束にサインをして、あれ?今の書類に学園長のサインの空白があったかな?と疑問が浮かんだのだが見直すことは無かった。

珍しく参考資料の無い、どうせ見ないのだが、ただ一枚だけの書類にはやたらとサイン欄があったが、それも読まずに自分の場所にサインをした。

その二つは受け持つただ一人の生徒つまり俺についてのローグ砦からの成績報告書と事務局が出した治療師と魔術師への推薦状だった。

その日レムルシアスに異動の辞令が届くことは無く、後日とどいた辞令にはティライア教育局への異動が書かれていた。

学園長が、優秀な生徒を育て上げたレムルシアスを評価して推薦したのだった。


 そして俺は半年近い実習を終えて、俺はティライア中央学園に帰ってきた。

旅装のまままっすぐ事務局まで来るようにと言われたのだが、門に入ってすぐの掲示板を見てため息をつく。

今期の成績優秀者が張り出されているのだが、やはりというか俺の名前はない。

マリシアが総合で3番、ラシュエルが4番、主席は俺の全く知らないローグ帝国伯爵、次席はマリウス帝国伯爵。

マリシアを治癒の理論と実技で抑えるなんて帝国伯ってすごいなが正直な感想だった。

自分が受けていながらあまり興味の無い魔術系をざっと見ただけで飛ばして武術部門を見る。

へぇ。


「よぉ、クリスおかえり」

「久しぶり、ロビン」

「恥かしいの見られてるなぁ。素手でやる体術以外は全敗しちまった」

「すごい人がいるんだね」

「あぁ、世の中広いな。俺はどうしても中級魔法を至近距離から撃ってくる魔法剣士ってにがてだよ。シェリーはそんな物斬り飛ばしてしまえばいいって言うんだけどな」

「シェリーならそういうだろうね。後で魔法剣士役で相手してあげるよ」

「それが出来るならマジでしゃれにならねぇぞ、どう考えてもクリスのほうが本命じゃないか」

「その本命さんにぜひ一手お相手していただきたいものですね、マリウス帝国伯と申します」


 話に割り込んできたのは女ならだれでもときめいてしまいそうな貴公子だった。

いかにも高級なライトアーマーを自然な感じで着こなしている。

俺は武人としてときめいてしまった。

こいつ強い!やりたい!

思わず、りたい!がでそうだった。

ぞくぞくする。


「ぜひっ。クリス・バル・ロンバルトです」


 武芸修練場は授業が行われていなければ自由に使って良く、治癒士たちも常時詰めている。

練習試合を行っている人や一人で剣を振っている人もいたがマリウスとロビンを見て場外の見物席に移った。

武術部門の上位二人、治癒士の服を着たのが一人。

どう見ても真剣を使った試合が始まるのだが。

審判はいらないよ、とあらかじめマリウスが言ったのでロビンはすぐに場外に移った。

予想外の流れに観客は一瞬戸惑うが、白銀に輝く剣を構えるマリウスとどこからか取り出した漆黒の槍をかまえる少女から出る闘気に押されて動けなくなる。


カーン


ロビンが叩く鉦の合図と同時に修練上の床が煮えたぎったマグマになる。

いきなりの上級魔法はマリウスのものか。

蒼く輝く球体に包まれて槍を構えて浮かび微笑む少女を観客達は美しいと感じた。

修練場はすぐに極寒の世界に変わり、炎や氷の刃が飛び交う中何かが高速で動いていた。

観客達が我に帰ったとき、修練場の場内には誰もいなかった。

いったいいつどのように終わったのか、外はいつの間にか夜だった。



 俺たち三人は食堂で少し遅めのお昼を食べていた。

今日は午後から卒業式があるので、この時間も時々見かける先生方の姿も無い。


「クリス、なんか雰囲気変わったよな」


 ロビンに言われて俺は視線を下に下ろす。

スカートを履いた足をきちんと膝をそろえて…ふぅ。


「治癒士見習いの実習してたんだけど、課題が”聖女たれ”ってさ」

「”聖女ってだれ?”の世界だろ」


 滑るギャグを言い放つロビンのおでこに氷弾をぶつけながらため息をつく。

わけが分かっていないマリウスにシチューをかき混ぜながら説明した。


「女だけの男爵家の跡取りでね、社会的には嫡男で嫁さんまでいるし見た目はどうであれ、俺男だから」


 久しぶりに”俺”を使うと体が楽になって膝頭の間隔が、おっといけない。


「実戦で使える回復術を習おうとしただけなんだけど、初級治癒術で半年も僻地で実習させられるしえらいこっちゃ状態がずっと続いてた」

「それは大変だね、ところで嫁さんってどんな人?」

「この学校にいるよ、マリシアで分かるかな。ちなみにラシュエルは妹だよ」

「つまり君を攻略すればもれなくマリシアさんも付いてくるでいいのかな?」


 せきこむロビンの背中を叩いてやる。


「俺たち二人とも男性化の術が使えるから、種付け役はいらないんだよ」


 うっかり生々しいことを初対面のマリウスに言ってしまった。

更に咳き込むロビンの背中を叩いてやってごまかす。

紳士なマリウスはすぐに話題を変えてくれた。


「ラシュエルさんと君はぜんぜん似ていないじゃないか」

「ん~初めてそう言われたね」

「顔立ちとかそんなのじゃなくて、なんていうのかな、ぜんぜん似てないよ」

「へ~」


 夕方近くまで話し込んだ後、二人とはわかれて事務局に行った。

窓口で実習終了届けを出したら新学期の受講案内を渡されたのでそれを受け取って家に帰った。

家に帰らず今日必ず来いってなんだったんだろうなこれだけなら明日でもいいと思うんだが。

 

 その夜、事務局長直々の訪問を受けた。

そんなことを今頃言われても俺はなんも知らんがな。









俺 クリス 見習い治癒士


レムルシアス先生 初級治癒術他の俺の担任


ロビン 俺のいとこ


マリウス 若き帝国伯爵


マリシア 俺の嫁


ラシュエル 俺の双子の妹

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