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カオティックハーレム(2巡目は女の子)  作者: よもぎだんごろう
第1章 ティライア中央学園
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天真爛漫



場所ティラノス王国ローグ砦

「クリス君、あれを何とかしたまえ」

「申し訳ありません」


 このところ毎日繰り返される挨拶のようになってしまった。

司令官の指差す先には、腰布を一枚身につけただけの美少女の姿があった。

兵士たちはなんともいえない顔でちらちらとそれを見ている。

女性兵士が走っていって服を着せ、どこかへ連れて行くのだが…。

小鬼たちの滅んだ日から続くこの砦の日常風景である。


 俺が使役する小鬼は人の姿に変身する術を覚えた。

変身術のできる兵士が、面白半分に小鬼に変身して見せたのである。

それを見て真似して術を使うと10才くらいの少女になった。

どことなくマーニャさんにも似ているがロアーヌ家の濃い碧の瞳を持つ少女になった。

マーニャさんたちの変身シーンを見ていた砦の人たちは、ロアーヌ家の少女がこの鬼になったのだと思った。

ただロアーヌ家の人々は赤子に至るまで追捕の対象になっているが、この少女はどうせ使い魔でしかないのでそれを口には出さなかった。


 少女は見た目より中身がはるかに幼かった。

いつの間にやらルーという名前を付けられていてみんなにかわいがられている。

鬼の姿の時も中身が少女の時と全く変わらないのがすぐ知れ渡り、すぐに仲良くなった。

好奇心旺盛で、何にでも興味を持って自分でしたがり、教えれば何でもすぐ覚える。

砦の兵士たちは魔術や武術はもちろん木彫りの人形の彫り方まで何でも争うようにルーに教え込んだ。

女性兵士たちは何かを教えるのはもちろん、ルーを着飾らせたがった。

自分達は兵士なので着飾ることができないのである。

いつの間にやら、夜寝るとき以外は俺のそばにいなくなった。


 そして俺がこの砦に来て4ヶ月目、やっと転移門が復旧し連絡も通常に取れるようになった。

真っ先に転移してきたのが精霊術のミッチェル先生だったので俺は驚いたが、先生もおれの恩師だということで下にもおかない歓迎を受けて驚いていた。

先生は満月と新月の日以外は授業がないのでわざわざ、来てくださったのだ。


「クリス君、今あの槍は出せるかね」

「はい、先生」

「はいせんせい」


 もう一人はいと答えたのはミッチェル先生が珍しくて俺の横に来たルーである。

もちろん、付き添いの非番の兵士が何人か後ろにいる。

今日が当番でで籤運がよかったね、とかいったい何のことなのだろうか。

とにかく槍を出してみた。

最期の鬼を倒して以来槍は更に大きく立派になっている。

とはいっても小柄な俺が振り回しやすい長さだが。

刃の部分がまず大きくなってしっかりと槍であることを主張している。

魔術師の杖に見せていた宝玉は逆に小さくなり、5本の長い爪がその1/3ほどの位置でしっかりとくわえ込みしっかりと宝玉を保護していて、こちらで以前のように突いても宝玉が壊れないようになっている。


「う~む」

「う~ん」


 うなっているのは先生でまねをしているのがルーである。

なぜか後ろの兵士たちが身もだえしているのだが…。

先生が土の精霊を召喚すると、まねをしてルーが、ぉお!

同じく花の精霊を召喚していた。

後ろで見ていた兵士たちの前にも精霊たちが現われて、とにかくその場は臨時の精霊との契約会となった。

騒ぎを聞きつけてきた他の兵士も精霊を召喚したのである。

予想外のことだったがミッチェル先生は楽しそうだった。


 もともと精霊術は使い手が少ない。

精霊を呼び出しておけば自分の意思にかかわらず魔術で援護してくれるのだが、自分で術を使うより精霊を呼び出している分魔力の消費コストが高い。

また精霊が使える術も限られていて必ずしも自分の使いたいものでない場合が多い。

なのでこの砦にも精霊術を使うものは一人もいなかったのだが、今では司令官でさえほとんど何の役にも立たないルーと同じ花の精霊を肩の上に載せてご満悦である。

ちなみにめったに召喚されることの無い花の精霊が存在するだけで召喚者を病や毒、さらには呪いからも守っていることが分かったのはこの砦においてのミッチェル先生の研究成果である。

独身で気楽な先生は、生活の場を完全にローグ砦に移して、時々学校に帰るだけになったからそんな研究ができるようになった。

ま、したかったらしい俺の槍についての研究は何の発表も無くサッパリ進まなかったらしいが。


「武の精霊と術の精霊が…」

「なんですか?先生」

「いやなんでもない」


 そして俺が研修を終える前日。


「クリス君、あれを何とかしたまえ」


 いつものように指令官に指差された先にルーがいるのだが、様子が違う。

兵士たちに取り囲まれているのだ。

女性兵士だけではなく、いい年して号泣する暑苦しいおっさんの姿も多い。

俺は一種怖れられているというか、この砦で若干浮いているのだが…。

しかたないな。


「ルーちょっとこい」

「なに?」

「明日帰るけど、ルーはここに残っていなさい」

「夜一人じゃいや!」

「夜だけ召喚するから」

「うん」

「というわけで昼間はここにいますからルーをよろしくお願いします」

「え?そんなのでいいのかい?」

「使い魔ですが、召喚獣ですので普段は野生です。ルーの場合世話が必要ですので連れて行かねばならないのですが…」

「任せておきたまえ」


 その夜は大宴会になった。

俺の送別会というよりもルーの歓迎会のような気がしたが。

司令官は参加できなかった。

俺の評価を書くのをすっかり忘れていたためだ。

そして俺は約半年ぶりに学園に帰った。








俺 クリス 見習い治癒士


ルー 3本角の小鬼 俺の使い魔


指令官 ローグ砦の指令官


ミッチェル先生 ティライア中央学園の精霊術の先生

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