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好きな子の靴って隠したくなるよね

かなり不定期の連載になると思います、また人によっては不快になる

作品なのでご了承ください。

また、作中に出てくる正留水面視点の作品「好きな人が屑で変態でもやっぱり好きなのよ」があるため、本編での彼女の行動が理解しづらいところがあります。

 俺の名前は葵愛生。どこにでもいる高校1年生の男だ。

 入学した高校で俺は、とある一人の少女に恋をした。


 奏加奈子。彼女を最初に見た時の感想は小動物だった。

 小柄な体、クリクリとした瞳、気弱で人が近づくと逃げちゃう警戒心。

 完全に俺のストライクゾーンど真ん中160kmのストレート。

 一目惚れだった。



 とりあえず彼女についてもっと知りたいと数日彼女を観察していた。

 気弱な性格で自己主張ができないからか、友達は作れていないようで

 休み時間は本を読みながら、時折周りを羨ましそうに見る。可愛い。

 言っちゃ悪いが友達が作れていないのなら好都合、俺がその穴を埋める事ができる。

 しかし彼女は警戒心が強い、男がいきなり「友達になろう」なんて言ったところで怪しまれるだろう。

 どうにかしてきっかけを作れないものかと思案していると今日もまた授業が終わった。

 仕方がない、今日はもう帰ろう。



 下駄箱で自分の靴に履きかえる。ふと、奏さんの下駄箱を見る。そこには奏さんの靴があった。

 辺りを見回す、誰もいない。匂いを嗅ぐ。いい匂いはしないな、俺はそこまで変態ではなかったようだ。

 ここでふと思いつく。この靴を隠して、靴が無くて困っている彼女を俺が助けるというのはどうだろう。

 もう一度辺りを見渡す、誰もいない。奏さんの靴をすのこの下に隠し、ちょっと離れた所に待機。

 やがて奏さんがやってきた。彼女は自分の靴に履きかえようとするが靴がない。

 うろたえる奏さん。可愛い。やがて靴を隠されたのだと理解した彼女は靴を探し始めるが、下駄箱の上とか、傘立ての中とか見当違いの場所を探している。可愛い。


 さて、そろそろ頃合いだろう。俺は奏さんの元に歩み寄る。

「どうしたんだ?何か探し物か?」

 いきなり声をかけられてびっくりする彼女。可愛い。

「え…あ…えーと…あなたは…」

「クラスメイトの葵だよ、奏さん」

「ご、ごめんなさい…まだ顔と名前が一致しなくて」

 これから覚えてもらえばいい。

「それで、どうかしたの?」

「えと、靴がなくて…」

「隠されたの?酷い事するね、クラスの女子の仕業かな?奏さん可愛いもんね、きっと嫉妬されたんだ」

「か、可愛いって…」

 照れる奏さん。可愛い。

「それじゃあ靴探すの手伝うよ」

「え、でも…」

「いいから」

「あ、ありがとうございます…」

 ペコリと頭を下げる奏さん。可愛い。

 そして俺達は靴を探し始める。勿論俺は靴の隠し場所がわかっているが、あまりにも早く探し当ててしまうと不自然なので、上手い具合に見当違いの場所を探すように奏さんを誘導しながら10分が経った。

 そろそろ頃合いだろう。俺はすのこを持ち上げる。

「あ、奏さんの靴ってこれ?」

「そ、それです!良かった…」

 俺は靴についた汚れをはらってやる。彼女は無事に靴に履きかえることができた。

「あ、あの、本当にありがとうございます!」

 靴を隠した相手とも知らず感謝する奏さん。可愛い。

「いやいや、靴が見つかって何よりだよ」

 そして俺達は一緒に帰る。奏さんの俺に対する警戒心はすっかり信頼に変わったようだ。

「無口な子だと思ってたけど、意外と饒舌なんだね」

「え、あ、そ、それは…」

 学校で全然喋らないからわからなかったが、上機嫌になると結構お喋りになる。

 今は照れてしまってまた口数が少なくなってしまったが、いずれにせよ可愛い。



「それじゃあ、私はこっちの道なんで。今日は本当にありがとうございました」

「いえいえ、気を付けてね。またあした」

 別れ道で彼女と別れる。いやあこんなにうまくいくとは思っていなかった。

 上機嫌で帰路を進む俺。


「…見てたわよ」

 そんな俺の目の前に、一人の少女が現れる。正留水面。俺の隣の家に住む、幼馴染の女の子だ。

 クール系美少女、という言葉が似合う彼女は男子からの評判は良いがどうにも俺の好みではない。

 まあ幼馴染という事もあって女の子では一番交友はあるのだけど。

「見てたって、何を?」

「あんたの自作自演を」

 なんてこった、誰にも見られてないと思ったらこいつに見られていたとは。

「…黙っててくれよ」

「別に、バラそうとかそんなつもりはないわ。ただちょっと幻滅しちゃって」

「しょうがないじゃないか、恋する乙男は手段を選べないんだよ」

「何が恋する乙男よ気持ち悪い。ま、勝手にやれば?それじゃ」

 気が付いたら家の前まで来ていたようだ。彼女はそう言うと自分の家に戻る。

 俺も我が家に帰る。幻滅、か。

 もしも奏さんが靴を隠したのが自分だと知ったら一体どんな顔をするだろうか。

 その顔を見てみたいと思った俺はひょっとしたらどこにでもいる男子高校生ではないのかもしれない。

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