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人付き合いが嫌いで苦手な高校生の剣術師範  作者:


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作りものの笑顔

 放課後、アレクシアさんと中島さん、それに数名の女子が校内を歩いているのを見かけた。


 中島 彩さんはこの汐音市の有名企業、中島工業の家の娘さんだ。家柄も資産も、シーメンス社の令嬢をもてなすには問題ないだろう。


 古びた道場で一人寂しく稽古しながら一汁一菜卵付きの朝食を謳歌する、そんな人間のところにくるべき人じゃない。


 切れ長の瞳に眼鏡、肩までの黒髪という中島さんが対照的に金髪碧眼のアレクシアさんと並んで歩いているのは絵になる。


「今日はみんなで遊びに行こう?」

「すみませン、今日はこれからすぐに用事がありましテ。サムライの文化を学ぶために、ヤーパンで最も有名な古流の道場、北辰一刀流の本部道場に向かいまス。そこで聖演武祭についてもうかがってきまス」


 転校初日から古流の道場に行くのか。並々ならぬ熱意、って感じだな。北辰一刀流の本部道場は確か汐音町から電車で一時間半くらいの所だったはずだし、夜の稽古には十分に間に合う時間だ。


 その選択肢に僕の流派が入っていないのが悲しいけど。仕方ない。


 格差は古流の中にもあるのだ。


「そっか、聖演武祭に出資してるって言ってたもんねー!」


 そこでアレクシアさんの表情に陰りが差したのが、遠目にもわかった。


 あまりそうやって持ち上げられたり、特別扱いされるのを好まないのだろうか。


 それを敏感に感じ取ったクラスメイトの一人が、話題を変えた。


「肌綺麗だね、アレクシアさん。メイクとかどうしてるの?」

「それはですネ……」

「うそ? マジで? それでその肌?」


 アレクシアさんを中心に女子がきゃぴきゃぴと騒いでいる。表現が古いか。


 賑やかで、華やかな光景。


 ふと、アレクシアさんと目が合う。


 金髪碧眼で背が高く、スタイルもいい。ハリウッド女優といっても通用しそうな見た目。


 そんな彼女が、僕に笑顔で手を振った。


 男子ならば、きっとそれだけで恋に落ちるか、気があると誤解するんだろう。


 彼女もそう反応するのが当然だと思っているのだろう。


 実際、すでにアレクシアさんに惚れたと思しき男子がアタックをかけようとしていたが、彼女の周囲にいる女子ががっちりとガードして近寄らせていなかった。


 でも僕は、そんな様子に冷え冷えとしたものを感じていた。


 いわゆる「青春」を過ごすっていうのが他者に押し付けられたみたいで嫌いなせいもあるけど。


 アレクシアさんの顔が不自然な作り物の笑顔にしか見えないからだ。


 古流をやって、虚実とか呼吸とかに敏感になったせいか。


 彼女の表情からは、「狙ってやってる」という印象しか受けない。


 それにつられる男子がバカにしか見えない。


 でもアレクシアさんが男を弄んでいるのではなく。あくまで社交の一環としてやっているのだろう。


 彼女の立場ならできるだけ人から嫌われるのを避けようとするはずだ。


 容姿に秀でた男子に笑顔を振りまくなんて、普通なら同じ女子から嫌われるのだろう。


 けど彼女は違っていた。


 計算された振る舞いと、羨望の対象になるほどの美貌。


 高みにありすぎる彼女には嫉妬ではなく崇拝が集まるようだ。


 僕は表情をほとんど動かさず、アレクシアさんに手を振り返す。


 無愛想な奴だとか、ワタシの美貌に動じないなんて失礼な男ね、とか思われたかもしれないけどしょうがない。


 バカな男子の真似なんて御免だ。


 でもアレクシアさんは僕の表情を見ても気分を害した様子もなく、ほんの少し驚いたような表情を見せただけだった。


 でもすぐに調子を取り戻し、他の女子とのおしゃべりに戻った。

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